理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

【再整理】素人向けに分かりやすく解説してほしい遠藤高帆氏のSTAP論文解析論文-日経サイエンスを読んで

※若干の追加をしました。【追加】として書いてあります(2014.11.3以降、逐次追加) 

 昨日の記事は、思いつくままに書きましたので、整理がされていませんでしたし、思い違いもしていました(表の3つのデータは、解析手法ではなくて、遺伝子登録の種類なのですね。失礼しました)。

 改めて、一般の素人として、マスコミや科学界、サイエンスライター等の皆さんに、基礎的な解説をしてほしい項目を整理してみました。皆さんも知りたい点ではないでしょうか。
 以下、順番に書いていきます(JISAIさんのコメントも参考にさせていただきました)

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1 遠藤論文を理解するための基礎中の基礎
(1)  バイオインフォマティクスとは何か。
(2)  科学実験における遺伝子登録制度とは何か
制度の根拠、目的、仕組み、対象となる実験等
・実験局面のどこで、どういう細胞遺伝子を対象に、どういうデータを登録するのか
・実験時点で、その細胞のRNA-seqデータ(TruSeq試薬とSMARTer試薬によるものの双方)とChip-seqデータをすべて登録するのか
RNA-seqデータとChip-seqデータの二つしかないのか。それ以外にもあるのか。それぞれのデータ間で登録目的、内容はどう違うのか。
・実験後の登録期限はあるのか。
(3)RNA-seqデータを対象にした試薬の差異
TruSeq試薬とSMARTer試薬とで、差異は何か(後者は細胞数が少ない場合? それでも両方の試薬での結果を登録するのか)。
・他の試薬もあるのか。それらの目的、効果は何か。
(4)登録された遺伝子データをもとに、それぞれのデータの種類ごと
   にバイオインフ  ォマティクス解析で何がわかるのか。同じ細胞であれば、す
   べての遺伝子データ  の解析結果が一致するはずだ、ということか。
(5)【追加】遺伝子登録には、専門技能は必要なのか。実験した者がそのまま登録
  できる程度のものか。それとも分業が必要なのか。
 
2 遺伝子解析の方法の基礎知識
(1) 遺伝子解析の基本的仕組み
(2) 従来の遺伝子解析方法の種類とそれによる解析内容
 
3 STAP論文を分析する上での遠藤氏の新解析手法の意義
(1)今回の遠藤氏が開発したRNA-seqデータを基にした遺伝子解析方法の意義
・従来からも、RNA-seqデータを対象にした解析方法はあったのか。
・従来の解析方法と比較してどの点に新規性があるのか
コンタミの有無が判定できるということか。
(2)従来の遺伝子解析手法では、STAP論文の解析は難しかったのか。
(3)今回の遠藤氏の新手法による解析結果は、従来の手法、他の解析手法で、同様に確認することはできないのか。できないとすればなぜか。
(3-2)【追加】東大等2つの大学でも「遠藤氏と同様の結果」が出たとの報道があり、改革委の塩見氏からも会見で言及があった。ということは、遠藤氏の解析手法によらない従来手法でも出来たということになるが、手法、結果にどういう差異あるのか。 
 
(4)遠藤氏の今回の新手法でしか、今回判明したとされる結果がわからないとすれば、その新手法の有効性は、別途の実験等で確認されているのか(追試等)。
(5) バイオインフォマティクスその他の研究者による評価等は如何。
 
4 日経サイエンスの表の見方、記事の読み方
(1)下段部分は、4つの種類の細胞について、登録されている3種類の遺伝子データを解析した結果の一覧という理解でいいのか。
(2)  記事に、意味するところとして、「同じ名前で論文に出てきても,その中身は実験によってまちまちだ。ある実験に使われた「STAP細胞」は多能性を持つ培養細胞だが,別の実験に用いられた「STAP細胞」には多能性がほとんどない。」とあり、「「STAP細胞」として遺伝子解析された細胞は、実際にはそれぞれ異なる3種類の細胞だったと思われる」と書かれているが、それは、3つの遺伝子データの解析結果に差異があるからということによるものか。
(3)「実験によってまちまちだ」ということであれば、ある実験局面で使  われた「STAP細胞A」と、別の局面で使われた「STAP細胞B」を、それぞ  
 同 じ解析手法で解析したらバラバラの結果だったという解析結果であるよ
うなイメージだが、そういう整理ではないのか。
(4)実験時点で、その同じ細胞を対象にして、RNA-seqデータ(TruSe  q試薬とSMARTer試薬によるものの双方)とChip-seqデータを、同   時に遺伝子登録していないということか。同じ実験局面、同じ細胞  を同時に3つの遺伝子データを登録したら、結果は一致するのでは  ないのか。
(5)実験時点と登録遺伝子データ登録時点とでタイムラグ(=時間の  経過)があることによる影響はないのか。
 
5 トリソミーの件
(1)細胞の種類、遺伝子データの種類によって、トリソミーが「ある」「なし」が分かれるが、これらはどう解釈すればいいのか。
(2)決定的要素として報じられている「8番トリソミーがある」という結果は、「STAP細胞」のRNA-seqデータ(SMARTer試薬)の解析結果と、「FI幹細胞」のChip-seqデータの解析結果の部分に記載されているが、この解析結果部分を以て、STAP細胞がないという推論が導かれるのはどうしてか。RNA-seqデータ(TruSeq試薬)の解析結果では、「トリソミーはない。ES細胞の遺伝子発現が非常に少ない」と記載されているが、これと結果が正反対のイメージを受けるが、その点はどういう読み方をすればいいのか(STAP細胞がないという推論まではしていないようにも思えるがそういうことか。「論文内容と解析結果が異なる」というだけのメッセージなのか)。
(3) 日経サイエンス記事にあるように、それぞれの遺伝子データごとに解析結果が異なることを以て、同じSTAP細胞という名前であっても中身はバラバラということであれば、ある局面のSTAP細胞ではトリソミーはないということではないのか。
(4)日経サイエンス記事では、「FI幹細胞はSTAP細胞と違って増殖するので、培養中にトリソミーが生じた可能性はある」とあるが、時間の経過によってトリソミーが生じた可能性があるのであれば、STAP細胞は増殖はしないにしても、事後にトリソミーができた可能性は絶無なのか。
(5) ES細胞のトリソミー発現率は30%で、STAP細胞のトリソミー発現率は100%と報道にあったが、STAP細胞がES細胞であれば100%にはならないのではないか。発現率の差異については、どう考えればいいのか。
(6)  各種ブログを見ると、8番トリソミーが生じて生まれないのは人間の場合であって、マウスでは生まれ得る、チェルノブイリ事故で遺伝子異常のマウスが大量に生まれている、人間でも弱いトリソミーであれば生まれてくる等の指摘もあるが、それらは科学的根拠のないことか。
 
6 ES細胞とTS細胞の混合の件
(1) 遠藤氏の会見で配布された要点資料で、「FI幹細胞」について、「細胞で発現している遺伝子を調べたところES細胞に特徴的な遺伝子とTS細胞に特徴的な遺伝子の両方を多く発現しており、中間の性質を示していたが、これは上記の2種類の細胞の混合であったためだと考えられる。」とあるが、STAP論文でも、「ES細胞とTS細胞の性質合わせ持つ細胞。胎仔と胎盤の両方になる」と書いてある。性質の特徴の記載としては、STAP論文の記載に誤りはないように思えるが、遠藤氏が、更に踏み込んで、「ES様細胞90%TS様細胞10%の混合である」と断定した理由、根拠は何か。
(2) 笹井氏や丹羽氏が述べている「ES細胞とTS細胞を混ぜて塊になることはない」ということは、分子生物学会の大隅典子理事長をはじめとしたSTAP否定論者とも共有されており、また丹羽氏が記者会見で自ら混合実験をしてみたら分離してできなかったという結果とも併せて、ESTSの両細胞の混合はできないというのが共通うコンセンサスになっていると思われるが、その点との関係で、「混合したものだ」という推論はどういう説明になるのか。
(3)  ES様細胞」「TS様細胞」の「様」がわかりにくい。「ESC-like」「very similar」等に表現されているが、ES細胞、TS細胞の詳細な遺伝子データとの対照比較はなされているのか。なされているとして、どう違うのか。
(4) これまでの報道では、「ES細胞である」「ES細胞とTS細胞と混合である」と断定的に報じられてきた。だからこそ、笹井氏は「ES細胞では大きすぎて注入できない」と主張し、若山氏が2月当時に「ES細胞とは明らかに異なっていた」旨述べていたこととの関係等が議論の的になっていた。ところが、「ES様」「TS様」ということでその点の差異が曖昧になってしまうと、その議論が宙に浮いてしまう。STAP細胞自体が、同じ再生細胞として、ES細胞とよく似ていると言われていたわけだから、「ES様」「TS様」の範疇に入ってしまう。この点はどう考えればいいか。
(5)日経サイエンス記事では、「「STAP細胞」や「STAP幹細胞」が何だ  ったのかはいまだに不明だが、実験の実態は徐々に明らかになっ  てきた」(p34)とあり、サブタイトルで「名が体を表さないSTAP実験  の杜撰さ」と打たれているが、今までの報  道では、「STAP細胞、  STAP幹細胞の実態は、ES細胞だ、TS細胞との混合だ」として、遠  藤氏の解析は「捏造」の根拠とされてきたような印象だが、それが  ここにきて、「ES様」「TS様」と曖昧になり、更に「実態は不明」とさ   れてしまうと、論点が  ずれてきていないか。「捏造」云々ではな   く、「実験の杜撰さ」に焦点が移っているようだが、そうではないの   か。遠藤氏は配布資料の中で、FI幹細胞のES様、TS様細胞の混   合可能性について、「この混合が意図的なものであったかどうかは  解析からは断定できない。」とあるので、なおのこと、「捏造」云々の  次元の話から離れていっているようにも思えるが、如何。
 
7 実験のマウスの系統、若山氏の主張と関係の件
(1) 日経サイエンス記事では、「Acr-GFP遺伝子を持つマウスは、STAP実験の際には若山研で飼育はしていたが、使う予定はなかった」「使う理由がない」と書かれていて、遠藤氏の解析で、「FI幹細胞」のChip-seqデータ、「STAP幹細胞」のRNA-seqデータ(TruSeq試薬)で入っている旨述べられている(P36)。また。同遺伝子は、他にも、若山氏が自ら保存のSTAP幹細胞でみつけ、小保方研冷凍庫内のSTAP幹細胞にもあった旨書かれている。これは、記者は意図的な混入を示唆しているのか。
(1-2)【追加】若山研に保存されているES細胞にもAcr-GFP遺伝子があり、現在分析中とあるが、その保存ES細胞が使われたのではないかということであれば、もっと早い時点で、同一の遺伝子構造ではないかの解析をするのが普通ではないかと感じるが、そうではないのか。
(1-3)【追加】NHKで報じられた、小保方研にある「ESと書かれた容器」内の細胞は、結局何だったのか。日経サイエンス記事で、Acr-GFP遺伝子が小保方研冷凍庫内のSTAP幹細胞にもあった旨書かれているが、それであれば冷凍庫内の細胞を解析しているということだから、その「ESと書かれた容器」内の細胞が何かの解析もされているのではないのか。

(2) 他方で、Acr-GFP遺伝子が確認されない細胞もあり、また、記事では、「同じFI幹細胞でも、Chip-seqを取った方は、マウスの系統は論文の通り、若山氏が作った雑種マウスの細胞だった。ただしこれにも8番トリソミーが生じていた。STAP細胞と違って増殖するので、培養中にトリソミーが生じた可能性がある」(P35-36)と書いてある。マウスの系統が。若山氏が渡したはずのもの通りであったということについての評価には触れていないが、それは重要なファクトだと思われるが、この点はどうなのか。少なくとも、その限りにおいては、若山氏の「若山研のマウスからは絶対にできない」という当初の会見での主張は改めて否定されたことになるのではないのか。
(3) 「若山氏が渡したはずの種類のマウスから作られたと推定される細胞でもトリソミーが発生している」という事実は、どう評価されるべきなのか。これまでは、トリソミーがあることを以てES細胞による「捏造」の根拠のように捉えられてきた印象があるが、そういうわけでもないように思えるが、この点はどうなのか。
(4) 以前判明したところでは、若山氏、理研のそれぞれに保管されていた細胞を解析したところ、若山氏が渡した通りのマウスと一致するものと、若山氏は渡したつもりはないけれど若山研では飼育されていたマウスと一致するものの双方があったとの発表(理研発表+若山氏訂正発表)だった。
※ 若山氏の当初発表では、若山氏が作って渡した「129/Sv系統ではなくB6又はF1 (129B6F1)系統のものであった」とのことだったが、理研CDBでの保存試料の検証では、若山氏による検証結果とは異なり、F1系統のみが検出された旨が報告されている。
 
これらの事実と、今回の遠藤氏の上記解析結果とを合わせて考えると、小保方氏に対しては、若山氏が作ったものが手交した以外に、若山研で飼育されていたマウスも誤って手交されていた可能性を強く示唆するものではないのか。

(5)「129/Sv系統とF1系統はマウスの毛の色が同じであることから見分けがつきにくいため、渡されたマウスがそもそも間違っていた(129系統と誤認してF1系統が渡されていた)可能性も考えられる」との指摘もあるが、解析結果を踏まえると、この指摘の当否については、どう考えられるか。
  【補足】若山氏の会見では、若山研では、マウスの遺伝子状態を含めてまで記録管理出来ているわけではなく、マウスの状態の確認は「目視」だけである旨を述べていたが、そうすると、高配ミス、手交ミスが発生しうる環境にあったように感じられるが、この点はどうなのか。

(6)マウスの手交ミスがあった場合、これまで報じられている構図が大きく変わってくると思われるが、その点についてはどう考えるか。
 
8 その他
 日経サイエンス記事では、「現在、若山氏と理研CDBは、それぞれ独立に、Acr-GFPが見つかった細胞のNSGデータを取り、解析を進めている」とあるが、それは事実か。
 第2論文も含めて、研究不正調査が進められている中では、若山氏も被調査側にある以上、同氏が解析にタッチしているのはおかしいのではないか。若山氏の保存試料は、理研側で確保し、第三者なり不正調査委において解析するのが筋であるはずである。それとも、不正調査の一環で、説明を求められているという構図の中での話か。
 
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 素人としてよくわからない点は以上です。繰り返しになりますが、遠藤論文は、STAP論文の「捏造」との印象を世間に強く印象付け(若山氏の発表とともに、「決定的根拠」的印象)、公式の理研改革委提言でも言及され、それを根拠に、「前代未聞の不正」「世界三大不正」とまで言わしめたのですから、その解析内容、意味するところは、一般でもわかるように詳しく解説がなされるのが期待されます。
 マスコミや科学界、サイエンスライターの皆さんが、是非順序立てて、「サルにもわかる」シリーズで書くようなつもりで、イロハから説明してもらいたいところです。
 
 この遠藤氏の論文による解析結果は、STAP問題についての全容解明に資すると思います。それは世間一般で捉えられているような「捏造」の根拠という意味ではなく、STAP実験のどこに混乱があったのか、を解明する手掛りとしてです。
 更には、もしSTAP細胞の再現実験、検証実験が成功した場合には、STAP細胞の性質を解明する重要な材料になるのではないでしょうか。
 
 
あくまで個人的印象ですが、日経サイエンスの記事を読んでいると、事態は少しずつ「捏造」の構図からは離れていっていて、「混乱」の構図にシフトしているような気がします。日経サイエンスの言葉で言えば、「杜撰」ということですが・・・(ただ、その「杜撰」さが存在するとして、その原因はどこにあるのか、はまた別ですが・・・)。
同誌は、あくまで若山氏の立場に立ち、(STAP実験用でなくて)若山研で飼育されていたマウスの手交ミスはなかったという前提で一貫しているように感じられますが、マウスの系統の話は、遠藤氏の解析結果により、若山氏の主張の一角が崩れたという面もあるわけですから、むしろ手交ミス(ないしは、若山研でのマウスの管理ミス)が示唆される状況になってきているように感じるのですが、思い過ごしでしょうか・・・。