理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

素人向けに分かりやすく解説してほしい遠藤高帆氏のSTAP論文解析論文-日経サイエンスを読んで


 遠藤高帆氏が10月1日に記者会見し、発表論文について質疑に応じています。
 これまで、kahoの日記等のブログベースでの考察については、詳細がわからないために批判もあったようですが、論文という形で発表がなされたことで、その具体的内容の詳細もわかり、第三者との科学的議論のベースができたということで、喜ばしいことだと思います。これをもとにして科学者同士を含めての議論が起きることを期待したいところです。
 関係のサイトは、次のようなところでしょうか。
 
【遠藤高帆氏の論文発表】


○遠藤氏記者会見配布の要点資料全文(弁護士ドットコムより)
 
○遠藤高帆氏記者会見録画(10月1日)
 
○遠藤氏Genes to Cells誌掲載論文
 
日経サイエンス関係記事】


日経サイエンス12月号「STAP細胞 見えてきた実態」 
 (注)古田彩記者による正誤(ツイッターより)
  「表の右下,FI幹細胞のChIP-seqデータの欄に誤記がありました。訂正します。
誤:精子で光るAcr-CAG遺伝子
正:精子で光るAcr-GFP遺伝子 」
 
日経サイエンス号外STAP細胞(6月11日付)「元細胞の由来 論文と矛盾」
 
日経サイエンス8月号「STAP細胞の正体」
 
○(参考)古田彩記者のツイッター
 
 
 今まで、マスコミ報道では、 
 ①8番トリソミーのあるマウスはそもそも生まれない。
 ②ES細胞とTS細胞の混合だ。
という「結論」だけしか報じられていなかったのですが、その後、記者会見を踏まえて、日経サイエンス12月号で、古田、詫間両記者による解説記事が掲載されていました。
 
 興味深そうなので、日経サイエンス12月号本体も、1400円はたいて買ってきました。日経サイエンスはいろいろな面白い記事があって読んでいて楽しいです。
それで、遠藤氏の論文内自体は、基本的素養がない私のような素人にはまったく理解できませんが、こうやって、科学誌が何らかの解説記事を書いてもらえると助かります(日経サイエンスのこれまでの記事やスタンスにも批判はあるようですが、それでも事実関係を理解する上では有益かと思います)。
ただ、それでも難解ではあります。もう二三段レベルを下げて、バイオインフォマティクスのイロハも含めて、今回の遠藤論文の意義を一般向けサイエンスライターの方が書いていただけることを期待したいものです。
 
 この解説記事にまとめられている表は、論文記載内容と遺伝子配列の解析結果との対比がまとめらえていて、比較的わかりやすい気はするのですが・・・それでもやはりわかりにくいです(苦笑)。ただ、これまで、「結論」だけ報じられてきた2点が、どの細胞を対象としたどの部分のどのような方式の解析の話なのか、ということがこの表でなんとなくわかるような気がします。
 
 ・・・が、素人がこの表をじっとみていると、頭がこんがらがってきて、同じ解析対象の細胞?の遺伝子配列について、3つの解析手法のうち、同じRNA-seqデータでも、試薬の種類によって、ある試薬ではトリソミーが「ある」との結果となっている一方で、他の試薬では「ない」となっているとか、ES細胞の遺伝子の発現が「少ない」という結果もあれば、「活発」となっているものもあります(「STAP細胞)の部分)。
遠藤氏が論文発表して新たに開発したのは、RNA-seqデータをもとに解析する新手法ということのようですが、それと、Chip-seqデータの分析とはどういう関係になるのだろう・・・?? とか、基礎がないのでちんぷんかんぷんです。
 
また、「FI幹細胞」について、STAP論文では、「ES細胞とTS細胞の性質合わせ持つ細胞。胎仔と胎盤の両方になる」と書いてあるとある一方で、遠藤氏のRNA-seqデータ(TruSeq試薬)による解析結果のところで、「トリソミーはない。ES様細胞90%TS様細胞10%の混合である」とありますが、ここでの解析でトリソミーが「ない」ということと、他の解析での「ある」ということとの関係はどういうことなのだろう?とか、「~様細胞」というのはどういう意味だろう?とか、どうして「混合したもの」と断定できるのだろう?とか、専門家からみればバカみたいな疑問なのかもしれませんが、よくわかりません。
既存手法と新規開発手法で、試薬も変えて試してみたが、いずれの結果も、8番トリソミーがあるという結果になった」というのならわかるのですが、どうもそういうことでもないようです。
もちろん一番よくわからないのが、何度も書いていますが、笹井氏や丹羽氏が述べている「ES細胞とTS細胞を混ぜて塊になることはない」というSTAP否定論者とも共有されているはずの知見や丹羽氏自らの実験結果との関係でどういう説明になるのかな?という点です。この点は、どのブログ類を見ても論じられていないので、なぜだろう?と思ってしまいます。
 
あるいは、日経サイエンス記事本文で、「同じFI幹細胞でも、Chip-seqを取った方は、マウスの系統は論文の通り、若山氏が作った雑種マウスの細胞だった。ただしこれにも8番トリソミーが生じていた。STAP細胞と違って増殖するので、培養中にトリソミーが生じた可能性がある」(P35-36)と書いてあります。トリソミーが事後に生じることがあり得るということのようですが、STAP細胞でのトリソミーは時間の経過、培養過程で生じたということはないのかな??とか、「増殖」過程でしかトリソミーは生じ得ないのか? 8番トリソミーが遺伝子登録時点であることを以て生まれてこないはずと断言できるのかな? とかいったことも、素人としては素朴に思ってしまいます。
いくつかのブログを見ると、8番トリソミーが生じて生まれないのは人間の場合であって、マウスでは生まれ得るとか、チェルノブイリ事故後に、遺伝子異常のマウスが大量に生まれているとか、人間でも弱いトリソミーであれば生まれてくるとか言ったことが書かれているものがありますが、それらはトンデモ説なのでしょうか・・・??
そもそも、8番トリソミーと他の部位のトリソミーの差はなんでしたでしょうか?8番トリソミーは致命的なのでしょうか?(←基礎的過ぎる質問???笑

ついでに言うと、この表では、トリソミーの発現率の割合が書いてありませんが、以前からの報道では、ES細胞ではトリソミーは30%の発現率である一方、STAP細胞では100%だったという解析結果も出ていました。なぜ、このような出現割合に差があるのでしょう?この点は、前からよくわからなかった点です。

それと、上記記事のフレーズで、「同じFI幹細胞でも、Chip-seqを取った方は、マウスの系統は論文の通り、若山氏が作った雑種マウスの細胞だった。」とさらっと書いてありますが、あれだけ、若山氏が主張した「若山研のマウスから生まれることはない!」という話と食い違ってきますが、どういう話の整理になるのでしょう??
また、若山氏らは、会見内容の訂正後も、「マウスの種類が異なるから、発表内容の根幹は変わらない」という趣旨のことを言っていたかと思いますが、その話とはどういう関係になるのでしょう?

 
●古田記者によれば、遠藤論文からわかることは、
 
STAP細胞,STAP幹細胞,FI幹細胞はどれも論文とは作り方や細胞の種類が合わず,同じ細胞についてのデータ同士もまるで一致しない。」(ツイッターより)
 
ということだそうです。そういうことであれば、この表の①から④の4つの細胞ごとに、たとえば、ある局面で「STAP細胞」と示されているものと、他の局面で同じ「STAP細胞」と示されているものとで、同じ解析手法で解析したところ、結果がまるで違っていた…ということならわかるのですが、そういうまとめ方にはなっていないようです・・・。
 
そもそも、登録するはずの「遺伝子配列データ」というのは、登録はどういう仕組み、ルール、目的なんだろう? すべての実験局面での細胞のそれを登録するのだろうか??とか、今回どの局面とどの局面のものが登録されているのだろうか?とか、小保方氏自身が登録したのだろうか? とか、前提となるイロハがわからないほどですので、その解析結果の意味するところもわからないのは当たり前かもしれません(苦笑)。
 
ただ、「論文で書かれていることと、遺伝子配列データの解析結果とは一致しない」ということは何となくわかるにしても、そのことと、「STAP細胞は存在しない」「STAP細胞なるものはES細胞だ」ということとは、直結しないように感じます(ES「様」細胞、TS「様」細胞などと書かれると、なおのこと混乱してきます)。
「論文の記載は矛盾があるから、その結論のSTAP細胞もできているはずがない」という論法でしょうか・・・。
 
このブログでは、理研調査委調査報告書や異議申立て却下決定、改革委提言の内容のひどさについては、STAP細胞絡みの専門知識がなくても、日本語の読解力さえあれば、十分に問題がわかりますし、早稲田大の調査報告書の構成や内容も、よく理解することができます。むしろ、文系のほうがよりその問題性は理解できるのかもしれません。
遠藤論文は、そういうわけにはいきません。
しかし、この遠藤氏の解析結果が、改革委提言をはじめとして、世間の捏造判断に決定的影響を与えていることからすれば、もっともっと丁寧に、一般向けにもわかるように、順序だった基礎的説明がほしいところです。
 
それとそれ以前の話かもしれませんが、遠藤氏の解析手法は、査読を経て論文になったのですから、優れた手法なのだろうと思いますが、既存の手法と比べてどういう差異があるのか? これまでの手法ではできなかった解析ができるようになったのか? といった解説もほしいところです。更にもっとそれ以前の話ですが、新たな解析手法でなければ、問題は把握できなかったのか? 既存手法ではなぜ解析できなかったのか? ということもよくわかりません。Chip-seqデータによる解析論文は、4月に却下されたそうですが・・。

また、東大や東工大・・・でしたでしょうか? 他の大学でも「同様の分析結果」が出ていると報じられ、改革委の塩見東大教授も会見で言及していましたが、どういう解析手法を使い、今回の日経サイエンスの表に準じて整理すると、どういう結果になっているのでしょうか?

また、論文なのですから、他のバイオインフォマティック学者なり分子生物学者らによる追試的な解析が行われていると思うのですが、その結果、評価はどういうものだったのか?ということも、その有効性、信頼性を高める上では有益な情報でしょう。そろそろ追試結果が出てもいいと思うのですが・・・などと素人が偉そうにいう話ではありませんが・・・。
 
STAP細胞問題の一件は、若山氏の発表(若山研にいたマウスからはできない)が間違いだったことが判明した後の経過がわからないこともあって、それとの関係で、どういうことになるのかもまた、今の段階ではよくわかりません。
もし、マウスの取り違え、勘違いということが絡んでくると、今回の遠藤論文の前提・・・というか、STAP論文記述の前提も変わってきます。それだけに、すべての事実解明のためにも、すべての実験過程での5WHを明らかにする調査がなされることが必須です。今、第2論文を含む不正調査は、どういう状況なのでしょう・・・。 
 


●やはり、今回の遠藤氏の論文や記者会見での発表のマスコミ報道ぶりを見て、改めて痛感しますが、STAP問題の経過のどの局面をみても、あまりにも、発表者の言う通りにしか報道していないではないか、と思います。あるいは、声が大きい側の言い分しか報道しないと言い換えてもいいかもしれません。
最初の理研発表然り、ネットでの問題指摘然り、理研調査報告書然り、改革委提言然りです。一般受けする言葉だけを取り出して見出しに大きく打つ・・・というのはマスコミの昔からの通弊です。そうかと思うと、早稲田大の調査報告書は、意に沿わないと見るやろくに読まずにイメージだけで批判します。
新聞、テレビなどは、速報性を求められますので、十分に咀嚼できないままに報じなければならないという制約はありますが、時間をおいて咀嚼したうえで、いろいろな見方から論じるということが必要だと思います。


もっと問題なのは、前にも書きましたが、やはり科学界です。マスコミは素人の延長ですが、科学者までが、そのマスコミが報じる内容、構図に沿った形でしか論評できないというのは、これは深刻な問題です。諸々の材料をしっかり読み込み、専門家、科学者ならではの視点、知見を提供することにより、世の中の議論を実りあるものにする、ということが期待されているはずです。
 
 いよいよ11月に入りましたので、あと1カ月後には、再現実験結果について、何らかの発表がなされる予定です。
 827日の中間報告の記者会見での、相沢顧問の小保方氏の実験参加状況に関する発言ぶりを聞くと、なにか思わせぶりなところが感じられますが、あまり妙な勘ぐりはやめて、淡々と、その発表を待ちたいと思います。
 再現実験の可否、どちらになったとしても、科学的論点についての解明はしっかりしてほしいものです。