理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

小保方氏の早稲田大・博士号の学位維持はほぼ確実に―早稲田大の冷静な事実認定による対応は高く評価されるべき


 小保方氏の早稲田大学の学位について、「1年の猶予付きで取り消し」という発表がありました。
   
 午後4時の発表直後あたりでは、スポーツ紙では、「小保方氏の学位取消決定!」と打たれ、一般紙では「~~取消も」とか「猶予付きで取消」と、表現の仕方がさまざまでした。スポーツ紙の見出しは、いかにもスポーツ紙らしい、売らんかなの見出しで、扇情的です(笑)。
 最も的を射た見出しをつけたのは読売新聞で、

   小保方氏の博士号、「取り消し」は保留…
 
 というものでした。これが一番実態に近いものでしょう。
 それで、結論からいえば、

   これで、小保方氏の学位維持は、ほぼ確実になった

 ということだと思います。
 しかも1年の猶予があるため、今行っている再現実験に精力を集中できますので(不正調査の進展状況がよくわかりませんので、そちらの調査で集中できないようなことになっていなけばいいのですが・・・)、それが終わって落ち着いてから、本来のものに差し替え修正すればいいので、小保方氏の負担も少なくて済みます。

●本件学位問題は、構図はもともと単純で、

 ①小保方氏は多忙のあまり、本来提出されるべき最終稿と間違えて、比較的初期の途中稿を製本・提出してしまった。
 ②小保方氏側も審査側も、てっきり最終稿が審査会に提出されているとばかり思ってろくに確認せずにパスさせたため、間違った途中稿で学位が授与された形になってしまった。
 ③最終稿であれば、学位授与は確実なものだった。

 ということです。早大の調査委員会の報告書が認定している内容の骨子は、そういうことです。これらの事実関係について、客観材料と関係者のヒアリングを積み重ねて認定しています。その調査ぶりは、理研調査委や改革委とは雲泥の差で、非常に丁寧にファクトと推論を積み上げています。
 早稲田の報告書で、縷々問題指摘しているのは、建前上、その途中稿が学位論文となってしまっているためであり、最終稿であれば、そういう問題はほとんどなかったということです。

 しばしば、マスコミで指摘されていた米国NIHサイトのコピペの件は、あまり褒められた話ではありませんが、しかし基礎的なイントロの誰が解説しても同じ内容のもので、枝葉末節のことにすぎません。論文の中核にはまったく関わりないことであり、それを「イントロでは、論文の問題提起をしたり、これまでの研究状況の認識を示す重要部分で、それがコピペということは大問題だ」とういうようなセリフで、あたかも論文の中核部分が、他人の研究成果の盗用であるかの如き印象付けをしようとした学者たちがいましたが、それはためにする議論でしょう。

 NIHサイトのQAは、米国著作権法では著作権自体が発生していない最初からパブリックドメインの、自由利用が可のコンテンツです。著作権属地主義なので、日本の著作権法が適用されるので、日本ではパブリックドメインではありませんが、しかし、国の機関の一般向け資料は、許諾なく「転載」(「引用」ではない)できる旨の規定がありますから、法令上の問題はありません(最終稿では、参考としてNIHサイトを明示しています)。

 それと、写真や図の無断引用の話も、クリップアート的な使い方をしている部分であり、他人の研究成果の剽窃という類いの話では全くありません。
 ですから、あれだけ騒がれて、「コピペの小保方」と烙印を押されてしまったものの、その実質はまったく論文内容の本質とは関係のない部分の話です。


 そのコピペの話を以て、小保方氏の研究自体を捏造と結び付けようとするのであれば、それは、明らかに間違いであり、そういうミスリードをあえてする人々の目的は別のところにあるか、あるいは自分では読んでいないのだろう、といわざるをえません。コピペ部分の意味合いなど、専門家なら・・・専門家でなくても、一読、一見すればすぐわかる話でしょう。

 以上の話は、以前このブログ記事で詳細に書きましたので、ご参照ください。

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早稲田大学位論文調査報告書について―実質的な小保方氏の潔白証明に
意外にも小保方氏の実質的潔白証明となった早大学位.論文調査報告書―理研調査委とは異なり実証の積み重ね
【補足2】小保方氏の米国NIHサイトのQA転載は.、本当に著作権侵害と言えるのか?(頭の体操)

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●もともとは、小保方氏と大学の審査側の双方に、内容が最終稿であるはずとの「錯誤」があったものですが(その旨認定)、本来の最終稿と差し替えることにより、「瑕疵の治癒」がなされ、問題がなくなる、ということではないかと感じていました。
 今回の早稲田大の決定は、それに近い措置だったように感じます。
 
 早稲田大が7月に発表した報告書では、
 
「小保方氏の場合でも、(注:最終稿が提出され)このような本来あるべき審査がきちんと行われていれば、上記Ⅱ.1.で検討した問題箇所はすべて解消され、その結果、博士論文は合格し、正しく博士の学位が与えられていた蓋然性が高い。」(p53のⅲ)
 
「(注:学位論文のベースとなった論文が掲載された)Tissue 誌は、いわゆる査読付欧文学術雑誌であり、その分野の高度の専門的知識をもち、かつ独立、公平性の高い査読者が論文内容のオリジナリティ、教育的価値及び有効性を考慮に入れた上で、内容を評価、検証し、その結果、内容の明確性、正確性、論理性等が掲載に値するとされた場合のみ、掲載を許される。そのため、Tissue 誌がその掲載を受理したことは、査読者が上記一連の実験の実在性に疑問をもたなかったことを示している。」
(p29~30)
 
 と書かれており、きちんと最終稿が出れば、問題なく学位は授与された、ということを強く示唆しています。
 なお、このTissue誌の論文についても画像等の疑義は指摘されていましたが、既に早期の段階で訂正がなされていますので、その論文に問題はなくなっているはずです。
 
 以上により、小保方氏が、最終稿だったはずの論文に、NIHサイト等コピペ部分の修正を加えれば、それでパスし、あとは倫理教育等を受ければ、ほぼ間違いなく、学位は維持されるということが、7月の調査委報告書と、今回の発表から読み取れる今後の見通しです。
 
 
●なお、細かい話ではありますが、今回の早稲田の発表と、7月の報告書内容との差異は、学位規則23条の「不正の方法」の解釈にあります。
 最終稿だと思い込んで初期の途中稿を製本・提出してしまったという行為は、7月に認定された通り「重大な過失」ではありますが、絶対に「故意」ではありません。文科省ガイドラインでは、故意の場合のみ「不正」と整理されていますが、早稲田の報告書の場合には、重大な過失も含めて「不正」と位置づけ、その上で、「不正の『方法』」とは、「不正を行う意思」が必要という、少々ややこしい整理をしています。
 間違って途中稿を製本・提出したことをもって、「不正行為」の一類型である「信義則違反行為」と位置付けつつ、それを行う意思はなかったから、「不正の方法」はなかったので、学位取り消しはできない、という論理立てでした。
 今回の学位取り消し決定では、この論理立てを覆し、「信義則違反=不正の方法」という整理をしています。
 
「小保方氏が公聴会による実質的な審査の対象となった論文とは大きく異なる博士学位論文を提出したことは、研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったものであり、これによって最終的な合否判定が行われたことは「不正の方法により学位の授与を受けた事実」に該当すると認定し、博士学位の取り消しを決定した。」
 
 7月の報告書の論理立ては、論理矛盾というか形容矛盾になっていて妙ですが(「不正の方法」とは、「基本的注意義務違反=重大な過失をする意思を持って」ということになりますから、それはおかしいです)、かといって、今回のような整理の仕方も、適切ではないように個人的には感じます。
 「不正の方法」というのは、やはり「偽計」を意味しているというのが素直な解釈のはずです。捏造、改竄、盗用等の研究不正があった場合ということと同趣旨のはずです。だからこそ、「取り消すことができる」ではなく、「取り消す」となっているのでしょう。「基本的注意義務違反」であれば、その態様は各種あるはずであり、それを無視して一律に「取り消す」という規定にはならないと思います。
 
 今回の小保方氏のようなケースは、錯誤(表示行為の錯誤=内容、表示の錯誤)があった場合に当たりますから、学位規程上は規定されていなかったはずです。そこを無理に、事後的に「不正」を基本的注意義務違反、重大な過失まで拡張することは適切ではありませんし、「不正の方法」に「偽計」的意味合いからはずれる要素を入れ込むのは適切ではないと感じます。
先般、文科省ガイドラインが、従来、不正を故意(悪意)の行為を対象にしていたところを、基本的注意義務違反=重大な過失も不正に含めるという方向に修正されましたので、その考え方を援用したということなのでしょうが、事後法の遡及適用的色彩がありますし、規定解釈としてもかなり無理筋です。
本件は、たとえば、次のような規定があらかじめあれば、それを適用して済む話でした。
 
「学位授与後に、論文に瑕疵が見つかった場合には、その程度に応じ、学位を取り消すか、又は一定期間内に論文に必要な補正を指示することができる。
 ただし、その瑕疵が、偽計目的によるものであると認められる場合には、原則として取り消すものとする。」
 
 7月の報告書は批判を浴びてしまったために、なんとか「学位取消」に持っていくために、報告書の論理立てを修正して、無理な論理立てをしたのでしょう。ただ、結論としては、内容が正しいものに差し替えがなされれば、学位自体も瑕疵が治癒するという整理のもとに、必要な補正を指示=「猶予付き取消」ということになりましたので、考え方としては妥当だと思います。 
 小保方氏は、弁護士と相談して、受け入れることとしたようですが、妥当なところかと思います。小保方氏にしても、あの中途半端な論文が学位論文として国会図書館に収蔵され続けるよりは、修正された本来のものを残したいでしょうから、今回の措置は歓迎だったと思います。
 

●改めて感じますが、早稲田大学7月の調査報告とそれ以降の姿勢は、決して世間の空気に流されることなく、多くの実証材料と多数の関係者からのヒアリングに基づく事実の慎重な認定と、合理的推論を基本とし、処分に際しても、それらの事実認定に基づき妥当な補正措置を講じたということで、その冷静さは高く評価されていいと感じます。
 「取り消す。ただし補正の猶予を与える」というプレゼンの仕方をすることにより、世間の無用の反発を回避するということにも成功しており、その観点からもよく練られた処分内容だったと思います。
 それとの比較において、理研調査委報告書と改革委提言の内容及び手続きの劣悪さがますます際立ってきます。
 
 これで、小保方氏には、学位取り消しの懸念は実質的に消えましたから、あとは、STAP細胞の再現実験に精力を集中させて、成功させてほしいところです。
 仮に、期限までに再現できなかったとしても、若山氏の事例(=環境が変わると自分自身で見出した方法でも容易に再現できなかった)もありますから、継続して取り組んでほしいものです。

 ※以下も併せてお読みください。