理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

遠藤高帆氏のSTAP細胞否定論文発表について

 
 
 STAP細胞を否定する遠藤高帆氏が、遺伝子解析の結果を論文にして、分子生物学会誌に掲載したとのニュースが流れていました。
 
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STAP「ES細胞に酷似」理研研究員、遺伝子解析し論文発表
 産経ニュース 2014.9.24 05:10
 
 理化学研究所の小保方(おぼかた)晴子研究ユニットリーダー(30)らが発表したSTAP細胞は、別の万能細胞である胚性幹細胞(ES細胞)に酷似しているとの遺伝子解析結果を理研統合生命医科学研究センター(横浜市)の遠藤高帆(たかほ)上級研究員がまとめ、23日までに日本分子生物学会誌(電子版)に論文が掲載された。
 
 理研広報室は「STAP細胞の存在を否定する論文だが、細胞の存否は検証実験や残された試料の解析なども踏まえて総合的に判断する」としている。
 遠藤氏はSTAP論文(撤回済み)に併せてインターネット上に公開された遺伝子データを独自の手法で解析。一塩基多型(SNP)と呼ばれる遺伝子の塩基配列の違いを調べた。
 STAP細胞には8番染色体が通常の2本ではなく3本になる異常があった。この異常があるマウスは胎児の段階で死ぬはずだが、小保方氏らは生後約1週間のマウスからSTAP細胞を作ったと説明していた。
 この染色体異常はES細胞を培養するとよくみられる現象で、遠藤氏は「STAP細胞はES細胞に非常によく似ている」として、ES細胞が混入した可能性を指摘した。
 STAP細胞に増殖能力を持たせ、胎盤にも分化できるとした幹細胞は2種類のマウス系統の雑種から作ったとされたが、解析でその特徴はなかった。幹細胞はES細胞に加え、胎盤を形成する栄養膜幹細胞(TS細胞)という細胞も混じった可能性があるとした。
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 これを見る限りでは、これまでの指摘に特に追加されるような情報はないようです。あるいは、記者が咀嚼できないので、既存の情報だけで書いたのか、よくわかりません。
 
 日本分子生物学会誌というのは、サイトにある「Genes to Cellsという雑誌でしょうか?
 
 遠藤氏の論文はこれのようですが、素人にはよくわかりません。
 ※オープンビューになった由。
 
 これまで、塩基配列の解析手法、手順等についての説明がないとして批判もあったようですが、今回、論文化することによって、そのあたりの当否も専門家同士で議論できるようになったのはいいことかもしれません。
 ただ、8番染色体のトリソミーのES細胞酷似の話と、ES細胞・TS細胞混合可能性の二題話(+マウス系統の話)だけでは、新味がないように感じます。若山氏自身が2月の各種インタビューで述べた実験時の観察、笹井氏がSTAP現象が最有力仮説であるとしてそれを支えるものとして指摘している点、丹羽氏の実験観察の証言等、それらでは説明がつかない事象や観察についてはどう解釈されるべきなのか? ということについての説明がないと、説得性がありません。特に、ES細胞・TS細胞混合による細胞塊形成は困難ということは、学会理事長含めて誰もが認めている話なのですから、その点の整合的解釈をしてもらいたいところです。
 
マウスの系統の件も、手交の際に取り違えていれば、前提が変わってきます。若山研での別系統のマウスは、毛色が酷似していて間違えやすいという指摘もなされています。
この点も、若山氏が「第三者機関」に委託して解析を間違えてことと共通の危うさ―若山氏自身の認識と研究室の実態との齟齬から生ずる思い込み―があります。このマウスの系統の解析にしても、若山氏と理研とでは、解析結果が必ずしも一致していませんから、若山氏側の解析が本当に正しいのか、検証が必要でしょう(同じ「第三者機関」で行ったのでしょうか?)。
 
●この分子生物学会誌のサイトには、次のように書かれていて、投稿者側の立場にも十分配慮する姿勢を示しています。
 
「多くのジャーナルがレフェリーのサイドに立って編集されている印象を与えているのに対して、本ジャーナルGenes to Cellsはできるだけ著者の側に立った編集を心がけています。迅速な刊行もその努力の一環ですが、レフェリーが匿名であることを利用して過度な要求を著者に対して行うことは極力排するように努力しています。もしもそうでないと感じた経験がございましたら是非とも編集長にお知らせください。」
 
 しかし、投稿者である遠藤氏の主張について、査読において追加材料補強等の要求もせずに、そのまま右から左に載せるようであれば、信頼性にもかかわってきます。特に、分子生物学会自体が、文科省ガイドラインの規定の存在を認識しないままに、小保方氏や理研の再現実験、検証実験凍結を求めたり、理事長以下多くの会員の学者が、まとまった形での科学的検討も加えないままに、STAP細胞を捏造と決めつけていましたから、そういう意味では、STAP問題について利害関係を有する当事者の一人となっています。そういう学会が、その学会誌での掲載論文について、その利害関係に影響されているかのような査読しか行われていないのではないか?と思われるのは不本意だと思うのですが・・・。査読でどういう指摘がなされたのか公開しないのでしょうか?
 
 そういえば、改革委委員の一人である塩見東大教授は、東大や東工大でも、同趣旨の分析結果が出ているように言っていましたが、それらは、こういう形で査読を経た論文として発表されているのでしょうか? 
 
●言えることは、理研改革委は、遠藤氏と若山氏の主張を丸呑みして、それらが第三者による検証を加えられることもなく、論文として公表もされていない中で、わずかなヒアリングのみで、それらの主張に無批判的に依拠して、「前代未聞の不正」「世界三大不正」と断じ、それを根拠に、CDB解体を提言したということです。
しかし、提言の根拠のひとつとなった若山氏の主張は間違っていました。未だ、その後の追加検証結果は出てきません。というか、第二論文の不正調査が正式に開始されていますから、被調査側である若山氏が、保存試料等を自由に扱うことはできなくなっているのではないかと思います(山梨大保管試料も含めて、当然そういう保全措置をとっているいと思います。まさか、保全措置を取っていないなんてことはないでしょう)。その結果は、来年1月頃目途にまとまる報告書に記載されるのではないでしょうか。
 若山氏の主張と同様、遠藤氏の主張にも、ES細胞・TS細胞混合説ひとつとるだけでも、危うさがあります。それを、改革委の市川委員は、その考えに根拠なく同調し、それをもって「世界三大不正だ」「不正の教科書に載る」「JAPANと名が付くと恥ずかしい」と放言の限りを尽くしました。
 
●それはいずれ検証される時が来ると信じたいですが、それはそれとして、傍からみていて、STAP否定論者は、何か「常識の罠」に囚われているような気がしてなりません。
 「ES細胞と酷似している」といっても、STAP細胞自体の特色が詳しく調べられたわけではないのですから、同じ再生細胞であっても共通する部分、共通しない部分があるのかもしれません。「酷似している」と言っても、トリソミーの発現率には大きな差があるわけで、それを「酷似」とは言わないでしょう。「トリソミーなら生まれるはずがない」ということも、なぜ100%のトリソミーになっているのか、という点との関係で違ってくることはないのでしょうか? 
 若山氏の2月のインタビュー記事での発言は、ES細胞で実験したときとSTAP細胞で実験したときとの状況の大きな差を述べていますので、それを無視して、「酷似している」というにはかなりの違いがあるのに、あえて「酷似している」で思考停止してしまうのには違和感があり過ぎます。
 ともかく、科学界の反応は、遠藤氏、若山氏の主張から一歩も出ませんし、笹井氏の最有力仮説とした支持材料等についてそれに反駁するための合理的説明の努力もまったくありません。あるのは、小保方氏がすり替えたに違いない、捏造したに違いない、で思考がストップしてしまっている事実です。丹羽氏が失敗を続けながらも見せているような、科学的関心を示す気配も一切ありません。
 再現実験、検証実験の凍結要求までするのを見ると、まるで、小保方氏の研究が失敗、捏造であってくれることを祈っているかのようであり、科学者としての総合的、合理的思考や科学的興味が見えてこないのはまことに不思議です。
 以前の週刊新潮での科学者の座談会でふと誰かが漏らしていたように、科学者として以前に、人間として非合理的感情に囚われるのは否定できないところでしょう。科学者といえども人の子であり、嫉妬、反発等はある程度やむを得ないところではあります。
「ろくに実績もないポッと出の小娘が、世界的発見で注目浴びてもてはやされるなんて、許せない!」という感情は、多かれ少なかれ、あることでしょう。
 しかし、STAP全否定の空気に乗って、その増幅をし、バッシングを行った科学者たちは、もし、小保方氏や丹羽氏らによって、STAP細胞製作が成功する事態になったならば、猛烈な批判、非難、逆バッシングの嵐にさらされることになるでしょう。そういうリスクは今は頭にはないでしょうが、これまでのような科学者にも拘らず思考停止し、捏造断定を続けてきた事実を踏まえれば、仕方のないことでしょう。捏造説では説明が付かない、あるいは疑問が生じていること等に気が付く機会はいくらでもあったわけですから、小保方氏らにぶつけた批判がブーメランとなって戻ってきます。

 
●ところで、ネットで検索していたら、未だに検証されていない常温核融合に関わった学者の山口英一氏のインタビュー記事がありました。
 
 「もうこの世には戻れない」として、相手にされなくなってしまったと言っていますが、
次のように楽しげに述べています。
 
「――確かに一事を成した人を見ると、狂っている人が多いです(笑)。凡人なら「まあ、こんなところで十分か」で終わるところを、そこで終わらずに、とんでもなくこだわっていく。それは周りからすれば狂っているように見えるわけです。
 
山口 なるほど。私について言うと、常温核融合に関わるのは、ある意味で狂うことでした。だってパラジウムの温度が800℃以上に上がるなんて、普通の化学反応では説明が付かない。
 でも私はそれを目撃した。表面がいったん溶けてしまい金と合金化したパラジウムに触ってひどいやけどまでした。それでも、天に目撃させてもらった以上、最後まで解明しようと思った。そこで、否応なく外れることにしました。外れていいと思わなければ、できやしない。」
 
 常温核融合STAP細胞に置き換えれば、小保方氏の気持ちにもおそらく当てはまることでしょう。
 
山口 創発」をしない人は、本当の意味の科学者ではない。それだけではなく、例えば常温核融合について、自分で何も実験しないでマスコミや他人の意見を聞いてハナから否定する人を、私は「ほんまもん」の科学者だとは思いません。「ほんまもん」なら、自分でゼロから実験してみなくては。」
 
 ほとんど、STAP否定の学者たちのことを言っているような・・・(笑)
 このインタビュー記事は、もともと、「STAP」で検索するうちにヒットしたもので、検索結果では小保方氏への言及もあったのですが、サイトを開いてみるとその言及は見当たりません。STAP細胞は同列には扱えないと思ったのでしょうか??(苦笑)
 
 丹羽氏の検証チームの中間発表と、iPS細胞の移植成功ですっかりSTAP細胞への関心が薄れてしまった感がありますが、かえって静かな環境下で、じっくり取り組めていいのではないかと思います。
 成功、不成功どちらにしても、ともかく科学的に整合性のある説明をしてほしいものです。
 
【補足】日経新聞科学記者の古田氏が、ツイッターで関連して述べています。