理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

【補足】提言の「再現実験」に関する提言趣旨と、委員の会見時の発言との大幅な乖離について

 補足
 
 改革委の提言と記者会見の支離滅裂さについての補足として、以下の記者会見録を記録に残しておいたほうがいいだろうと思う。いずれ消えてしまうかもしれないので。この記事の末尾に掲載しておく(弁護士ドットコムより)。
 
 この補足で言いたいのは、再現実験をやる、やらないという話に関しての提言と会見での、発信内容、方向の大きな乖離についてのことである。
 
 提言では、次のように書かれている。
 
再現実験の目的は、「STAP 現象は有り、小保方チームはこれを完成していた」のか、それとも研究成果の捏造であるのか、を明らかにすることにある。第3の7項で述べたように、理研が現在行っている検証実験」は、①2つの論文ないし 2014 3 5 日に理研により発表された範囲内のプロトコルによることが明らかではない②テラトーマ形成能を評価法としていないため、「検証実験」の結果を以て不正の有無および不正を犯した人物が明確にできない。すなわち、小保方氏が STAP 細胞の作製に成功したのかが明らかにできない等の問題があり、「STAP 現象は有り、小保方チームはこれを完成していた」のか否か、を明らかにする再現実験としては不備があると指摘されている。したがって再現実験は、次の方法で行われなければならない。
(1)小保方氏自身によりかつ2通の論文ないし 2014 3 5 日に理研により発表された範囲内での、STAP 現象誘導プロトコルによる、STAP 現象の再現実験を行うこと。(以下略)」(p22) 
 
STAP現象があるのか否か、不正だったのか否かを明らかにするために、小保方氏自身によって、プロトコル通りの「再現実験」を行え」と明確に書いてあり、これは全く正しい。文科省ガイドラインにも即したものであり、東大、筑波大等の研究不正の解明においても、被疑研究者側に再現実験が求められている。論文の精査や実験ノート、残存試料の解析等とともに不正調査の重要かつ不可欠の判断材料となる。
 岸委員長は、この会見でも、本人による再現実験がSTAP現象の有無を科学的に明確にするためにも必要としている。
 
「やっぱり、どこかではっきりと、「ないなら、ない」「いやいや、ある」」と言わないと、科学としては成り立たない。それはしっかりとやっていただきたい。本人に何らかのかたちで加わってもらい、ギブアップしないと、「ない」とは言えない。また、出てくるのかもしれない。」
 
 ところが、異なることを言う委員たちが続出する。分子生物学者の塩見氏と、いつも暴走気味の市川委員である。
 塩見氏は、次のように述べ、「論文撤回がされるならば、STAP細胞はなかったことになるので、再現実験はする必要がない」としている。
 
「塩見委員:ネイチャー論文2本について、著者の方たちが撤回しようという手続きをしている。ネイチャーもそれに同意して、撤回することになると思うが、そうすると、STAPというものはなくなってしまうと、考えていただければいいのではないか。そうなると、再現実験もしなくていい。ないものは再現できないのだから。」
 
 これは二重の意味で間違っている。記者からも指摘されていたが、論文撤回は、捏造だったから撤回されたわけではない。この提言時点ではまだ撤回されていないが、以前から論文著者らが述べてきており、また実際に撤回理由としてネイチャー誌に載ったのは、真実性が依然あるとの前提で、「過誤が信頼性を損ねる」「真実性を疑念の念なく述べることができない」ということである。
 
「こうした複数の過誤は、本研究の全体としての信頼性を損ねるものである。また、STAP幹細胞に関する現象の真実性を疑いの念無く述べることができない。これらの現象を新たに検証する研究は現在進行中である。しかし、これまでに見いだされた過誤が多岐にわたることから、筆者らは Article Letter の両者を撤回することが妥当であると考える。」
 
 それを、なぜ勝手に「なかったことになる」と決めつけるのか?提言自体において、有無を明らかにする必要があるから本人による再現実験が必要と述べているにも拘わらずである。
 
 更にまた、提言の中で自分たちが何を述べているのか、認識しているのか?
 
「研究不正防止規程に定める調査は、研究不正の疑義を調査し、研究不正行為の有無を認定するものであるから、対象となる論文が取り下げられた場合であっても「研究不正行為を行ったのは誰か」が明らかにされず、当該論文に研究不正行為があったと認定されていない以上、研究不正防止規程上の調査から除外されるべきではない。(p15)
 
 これは第二論文に関しての記述であるが、第一論文についても当然に当てはまる。
  研究不正調査の一環として、文科省ガイドラインは、被疑研究者側の権利としての再現実験の機会付与を規定しており、この改革委提言も、不正の有無、不正の当事者を明らかにするために再現実験が必須としているのである。これは、論文撤回されたかどうかは関係がない。
塩見氏は、分子生物学会の声明における、「(撤回されても)不正調査は行うべきだが、再現実験は不要」というスタンスと同じスタンスなのだろう。しかしそれは、文科省ガイドラインの趣旨も無視したものでもあるし、科学的観点から見ても間違っているのである。
これまで本ブログで繰り返し説明している通り、例えば、東大大学院工学系研究科多比良和誠教授らのRNA 関連論文に関する調査でも、その調査報告書及び判決文にもある通り、「嫌疑を晴らす機会としての再現実験を繰り返し求めた」にも拘らず、できなかったことを不正認定における主要な柱としているのである。以下のブログ記事を参照されたい。 
 
 東大の研究不正は、加藤教授の件も含めて、いずれも分子生物学の論文に関してである。加藤教授、平比良教授とも、その分野では名が通り、実績があった学者だったし、加藤教授は研究不正防止の啓発普及のリーダー的存在だった。分子生物学会は、何か自浄策を講じたか?平比良教授の研究不正調査に関して、再現実験は不要だと声明でも出したか? 出さずとも何らかのメッセージを発したか? 同じ分子生物学の世界の話である。ダブルスタンダードではないのか? ちなみに、ついこの間まとまった加藤教授の研究不正に関する調査報告書公表を受けて、何か声明を出したか? いやしくも、自分たちの学会の理事や研究不正防止のリーダーの一人だった学者が、不正を断じられてのであれば、痛恨の念なり、慙愧に堪えないなり、何かしら遺憾の意を表して然るべきではないのか?
 
 大隅理事長は、最近声明文を出しているが、触れているのはSTAP細胞の小保方氏批判のことだけだ。
 
よほど、小保方氏のことが腹に据えかねるらしく、
 
「人間が智を得る手段は科学だけではありませんが、科学の世界では自分が発見したことを知らせるための「手続き」がきちんと決まっています。自らが「悟った!」「発見しました」「信じています」と言うだけでは駄目なのです。」
 
と高説を垂れているが、発見を「知らせるための手続き」が決まっているのと同様に、「不正を調査するための手続き」も決まっているのである。
加藤教授の東大での不正調査報告書が公表されたのは、81日なので、この「初夏」の理事長声明には間に合わなかったのかもしれないが、しかし、加藤教授と分子生物学会の密接な関係を考えれば、何か遺憾の意のメッセージの発出があって然るべきではないのか? 
 
 
 加藤教授の不正の件はともかくとして、以上の通り、塩見氏及びその所属するであろう分子生物学会は、「研究不正の有無の科学的解明を阻止せよ」と言うに等しい非科学的メッセージを平気で発しているのであり、塩見氏は自らが委員となってまとめたはずの改革委提言と全くベクトルの異なる主張を、提言直後の会見で述べるという、文字通りの支離滅裂さを呈しているのである。
 「事実解明に関する積極性を欠く理研の姿勢」(p16)として、理研を批判しているが、その批判は、分子生物学会にも向けられるべき批判である。いずれの学者も、東北大、東大、九大と立派な人々で、科学研究を行う点では優れているのだろうが、研究不正の解明という点では子供同然ということだ。中山九大教授に至っては、文科省ガイドラインも自分の大学の研究不正規程の存在すらも、今回の小保方氏の件で初めて認識したことを平気で述べているほどだ(文藝春秋5月号)。今後は、理系学者といえども、憲法行政法、労働法のイロハ、とりわけ、デュープロセスの重要性ということを、必須科目として学ぶべきである(研究不正は懲戒処分に直結するから、それが争われる場合には行政法や労働法の知識が必須となる)。ちなみに、民法、刑法の名誉棄損の項目も学んだほうがいいだろう。東北大の教授の場合は、研究不正の有無を名誉棄損訴訟の形で争った。
 
 
もう一人、提言と異なることを会見で述べているのは、市川家國氏である。
 会見では、次のように述べているが、意味不明である。 
 
「市川委員:中断しろというわけではない。やりたければやってもいいけど、意味がないということだ。そこから出てきた結果は、不正があったかどうかを明確にするものではない。
 
――ということは、今回提言しているのは、今やっている再現実験と別のラインでやるべきだと?
市川委員:そういうことだ。」
 
 「やりたければやっていいが意味がない」とういうのであれば、提言で主張された再現実験の趣旨と違ってくる。提言では、次のように明確に書いている。
 
再現実験の目的は、「STAP 現象は有り、小保方チームはこれを完成していた」のか、それとも研究成果の捏造であるのか、を明らかにすることにある。」
 
 だから、再現実験はなされなければならないのであって、「やっても意味がない」という市川氏の発言は提言の趣旨を否定するものである。
 「そこから出てきた結果は、不正があったかどうかを明確にするものではない。」という発言も、「研究不正の有無、不正が誰によって行われたかを明らかにするために必要」という提言の趣旨と相容れない。再現実験が成功した場合、それと一連の指摘されている疑念との関係がどういうことなのか、明らかにする材料を得られるのである。
 
 
 以上の通り、再現実験の必要性に関する提言趣旨と、会見での複数の委員の発言とが、ベクトルが大きく異なっている。先に述べた、「世界三大不正事件」「教科書に載る」「JAPANとつくと信用されない」等々の発言と相まって、ほとんど、放談会の呈である。個人的意見を全く言うべきでないとはいわないが、提言内容とベクトルが全く異なるのでは、その提言自体の信頼性もなくなる。その提言自体も論旨がどんどん変遷し、全体としてみると支離滅裂の内容になっているので、今更、信頼性も何もあったものではないが、わずかにまともな「再現実験すべし」との提言さえも、これらの複数委員の発言によって揺らいでしまっている構図だ。
 
  
●番外の話で、文系の素人(ではあるが科学には関心を持っている)としての話で恐縮だが、この会見で、塩見氏が「想像だけど、ただ「何かをしたら光ったよ~」ということではないかなと思う。」とか、「今後、何かストレスをかけることで、リプログラミングできるというのを誰かが発見したときには、STAPという名前ではなくて、その人が新しい名前を付けて発表すれば良い。STAPはじきになくなるのではないか、と私は個人的に考えている。」と斜に構えた発言をしていたり、科学者全般が、STAP現象自体を頭から否定していることについて、どうも疑念を感じるのは、おかしいのだろうか?
 我々は、自然界で、プラナリアヒドラのように、切っても切っても、どこからでも何の部位であっても(頭であっても)再生してくることを知っている。イモリのように四肢を切ってもまた生えてくることや、トカゲや山椒魚の尻尾を切っても生えてくることを知っている。「切る」ということは、まさしく物理的刺激ということである。切られるという物理的刺激を受けたことにより、その切断面の細胞が初期化するということではないのか?(それとも、切断部位と同じ部位の細胞が増殖するということなので、初期化ではない??)
 いずれにしても、物理的刺激によって動物の細胞が初期化するなり、再生能力を獲得するという自然界の現象と、物理的刺激によって初期化するというSTAP細胞のコンセプトとは合致するように感じるのは、ピントがずれた連想なのだろうか・・・。私などは、STAP細胞の話を最初に聞いた時には、こういった自然界の不思議な事象を解き明かし再現するとっかかりができたのではないか?!と喜んだものだが、科学者たちは、STAP現象をこき下ろすばかりで、そういう自然界の現象と関連する可能性=より本質的な部分については何も解説してくれない。
 
 亡くなった笹井氏は、4月に毎日新聞のメールでの取材に答えているが、記事には次のように書かれている。
 
毎日新聞は、論文の不正疑惑発覚後も笹井氏に複数回にわたって電子メールで取材した。
 論文については「調査に関わることなので話せない」との内容が多かったが、調査委が最終報告書を発表した翌日の今月2日、マウスのSTAP細胞が存在することを前提に、ヒトのSTAP細胞などの研究を海外の研究室が水面下で行っている可能性を懸念し、「日本の最大の損失」と表現。「論文競争はもちろんだが、知財(知的財産)競争は早くこの状況を抜け出せないと遅れをとるだろう」と記した。
 更に「STAP細胞の再検証と、ヒトへの応用研究などを並行する戦略性がないと、国内で過熱しているバッシングが自分の首を絞めることになる、という意見をネット上で書く人もいる。私も同じ危惧を抱いている」と表明した。」
 
 海外の研究者が、日本国内の騒動を尻目に、より本質的な点に着目してSTAP細胞の研究を進めている可能性があるのではないか? 笹井氏の懸念が現実のものにならないことを祈るばかりである。
 
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理研改革委記者会見(下)(弁護士ドットコム トピックス より)
  
――改革委員会は、結局、STAP細胞がなかったという見方で一致しているのか?
岸輝雄委員長:再現実験をやって「ある」と言った人が諦めるとか、あるいは「STAP現象がある」と言った人がやっぱり何もなかったと言わない限り、決着がつかない。だから、しっかり科学的にやろうという提案だ。
市川家國委員我々は再現実験を提案している。これからいろんな事実が出てくると、小保方さんは、こちらが提供しても断るのではないかという憶測もある。
また、小保方さんがやって、もしできなかったら、彼女はたぶんこういう言い訳をするんだろうという想像もある。たとえば、「部屋の温度が違った」とか、あるいは「研究条件が悪かった」とか。「以前は成功したんだけど、今回はたまたま成功しなかった」という言い訳もありうるかもしれない。
もし本当にできたなら、科学者であれば、そういう言い訳もなきにしもあらず、ということがある。結論は必ずしもきちっと出るものではない。そこだけちょっと、みなさん覚悟してほしい。
塩見委員:ネイチャー論文2本について、著者の方たちが撤回しようという手続きをしている。ネイチャーもそれに同意して、撤回することになると思うが、そうすると、STAPというものはなくなってしまうと、考えていただければいいのではないか。そうなると、再現実験もしなくていい。ないものは再現できないのだから。
今後、何かストレスをかけることで、リプログラミングできるというのを誰かが発見したときには、STAPという名前ではなくて、その人が新しい名前を付けて発表すれば良い。STAPはじきになくなるのではないか、と私は個人的に考えている。
 
――小保方さんは「(実験に)200回成功した」と言った。どう捉えているか?
市川委員:いくつかのタンパク質が表現されることを、彼女は200回だと主張したんだと思う。その程度のことは事実だと思う。STAP細胞を証明するというのは、あくまで多能性というのだから、キメラをつくって、臓器になったというところまでやるとなると、時間的に非常に難しい。
塩見委員:たとえば、テラトーマ(腫瘍)実験をやったことになっているけども、200回もやっていないだろうと考えられる。なぜかというと、たとえば、マウスの飼育室に入った回数だとか、いつ入ったかというのがモニターされていると思うし、マウスの購入記録と照らし合わせればすぐにわかることだから。想像だけど、ただ「何かをしたら光ったよ~」ということではないかなと思う。
 
――STAP細胞の有無について、若山さんや遠藤さんの解析結果はある程度信頼性があって、ES細胞から生まれた可能性が高いという話もあった。そもそも「STAP細胞はなかった」という見解を全体として持っているという認識で良いか?
岸委員長:認識はそうかもしれないが、われわれは「理研がその有無をしっかり証明しろ」と、明記している。ちょっと微妙なところだ、ということをおわかりのうえで質問をされているのだろうけども。
やっぱり、どこかではっきりと、「ないなら、ない」「いやいや、ある」」と言わないと、科学としては成り立たない。それはしっかりとやっていただきたい。本人に何らかのかたちで加わってもらい、ギブアップしないと、「ない」とは言えない。また、出てくるのかもしれない。
ただ、塩見先生が言うように、STAP論文2つを取り下げたら、普通の常識では「ない」ということだ。
 
――論文を取り下げる理由が、そうではないかもしれない。
市川委員:ネイチャーから論文を取り下げたほうが良いとリコメンドされて、実際に取り下げた場合に、「自分たちはSTAPができたと思うが、いろいろ写真の取り違い等があったり不適切であるから、いったん取り下げる」という意味合いで、取り下げているのかもしれない。その辺は、メディアに明らかにしていただきたい。
 
――今の再現実験は「いったん中断しろ」という理解でいいか?
市川委員:中断しろというわけではない。やりたければやってもいいけど、意味がないということだ。そこから出てきた結果は、不正があったかどうかを明確にするものではない。
――ということは、今回提言しているのは、今やっている再現実験と別のラインでやるべきだと?
市川委員:そういうことだ。
 
――市川先生はどのように?
市川委員:小保方さんがなかなか「間違っていました」と言いにくいところがあるかなと思う。遠藤先生と若山先生のデータは、何を意味するかというと、ES細胞とTS細胞を混ぜたということだ。小保方さんたちは特許を申請をしている。虚偽のデータをもとに特許を申請すると、刑事罰の対象になる。
ここから先の話は素人だが、「故意におこなったこと」が条件になっているから、「故意におこなったのではない」ということを言い続けないといけない。彼女のそういう立場もあるんじゃないか、と。彼女はこれだけいろいろ調べる方法があるということを知らなかった。
竹岡委員刑事罰の対象になるかどうかは、市川先生の私見というかたちで、受け取っていただいたほうが良いのではないか。一般的な刑事罰の対象にならない。刑事罰の責任とは、切り離してお考えになったほうが良い。特許の話をするのであれば、特許を出願しただけで、特許化されていない。特許化するにあたって、かなりネガティブな事実が出てきたと受け止めるべきと思う。それは理研が判断することだ。
 
――アメリカの法律だと刑事罰にあたるのでは、という意見もあるように聞いているが、その辺は委員の中でどういう認識か?
市川委員:僕としては、アメリカのバカンティ教授にメッセージを送りたかった。
竹岡委員:この点については、委員会の中では見解が分かれていると理解していただきたい。
 
――具体的には?
竹岡委員アメリカ法の刑事罰にあたる行為かどうかということに関して、認識の差がある。提言には踏み込んで書いていない。
 
(了)