理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

2 理不尽極まりない理研改革委提言は破棄されるべきである―支離滅裂な非科学的内容

 
提言書の第二の問題は、その非科学的論法による断罪である。


 上記の第一の問題とも関連してくるが、次に述べるように、STAP細胞・現象自体が捏造だという決めつけが、ここかしこに表れている。その有無を科学的に探究することを促すべきにも関わらず、STAP批判の科学者やマスコミと同レベルで断罪している。
 およそ信じがたいのは、次の記述である。この一文が、この改革委の非科学性を如実に表している。
 
この2月の頃には、共著者として小保方氏の研究不正及び論文の真正性を疑うべき事情が生じているにもかかわらず、笹井氏は、「STAP 現象はリアルフェノメノンである」「STAP現象は有力仮説である」との発言を繰り返し、一般国民、とくに再生医療への応用を期待したパーキンソン病などの難病患者に大きな期待を生ぜしめた。
日本の幹細胞研究の権威者としては軽率で無責任ではないか、とも見えるこの時点での笹井氏の一連の行動の背後には、iPS 細胞研究を凌駕する画期的な成果を無にしたくない、との動機も考えられる。成果主義に走るあまり、真実の解明を最優先として行動する、という科学者として当然に求められる基本を疎かにした笹井氏の行動は、厳しく責任が問われるべきものであると同時に、理研 CDB 成果主義の負の側面を端的に表しているものと評価できよう。」P9
 
 笹井氏は、4月の記者会見でも資料を配布し、それに基づいて、なぜSTAP現象が最も有力な仮説であると考えるのか、具体的に指摘した。
 科学は仮説から出発する。その仮説を裏づける材料を補強しながら、これを科学的真理へと持っていく。
 論文に疑義が出たとしても、それを踏まえてもなお、一連の事象を説明するのには、STAP現象が最も有力仮説であることを説明している。ES細胞、TS細胞ES細胞混合では考えられない点事象を具体的に指摘している。それを科学者として述べることが、なぜ指弾されなければならないのか? そのSTAP現象の有無を確認する必要があると改革委も考えるからこそ、再現実験の実施を提言したのではないのか? 
実際、笹井氏が4月の会見で指摘したSTAP現象が最有力の仮説だと考える理由は、科学的に覆される材料が出てきているのか? 出てきていないではないか。出てきているのは、いずれも陰謀説的な「説明」に過ぎない。
この改革委の審議で、疑義を提示してきた遠藤高帆氏が急遽ヒアリングを受けて、提言にもその「解析結果」が反映された。改革委として、「FI細胞がES細胞とTS細胞とが混ざったものである可能性が高い」と認定しているかのような表現をとり、「捏造を疑わせる重大な疑義」と指摘されている。しかし、この点は、笹井氏は、両細胞を混ぜると塊にならないことを述べているし、丹羽氏も自らの経験を通じて、考えられないことを明確に述べている。この笹井、丹羽両氏の主張に対して、捏造主張派は、どうまともに答えているのか? 遠藤氏その他分子説物学者を含めて、一人としてまともに答えていないではないか。


いわく、
TS細胞とES細胞を混ぜるには、極めて高度な技術が必要だ。そもそも小保方さんは実績がほとんどなかったのに、理研が魅力的な研究内容に飛びついて採用した。それができる実験技術を備えているとは到底思えない。ほかに捏造に関与した人物が、理研内にいるのではないか」(テーミス8月号記事での「ある大学の理学博士」)
 いわく、
「この幹細胞はES細胞9割、TS細胞1割と見られているが、理学博士である竹内薫ES細胞とTS細胞を混ぜ合わせると「別々の塊になるはず」と指摘しつつ、細胞培養に慣れた人ならまとめられるとして、その様な人が協力した可能性を指摘している。」(ウィキペディア


 こういうことでしか説明できないということは、笹井、丹羽両氏の指摘に対して、科学的に反論できていないということである(大隅氏も、この点は事実上認めた上で、「ES細胞なら塊になる」としている)。考えてもみよ。「混合に高度な技術が必要だ」というが実際にそういう事例があるのか? いつ誰がどこでそういう混合に成功したということが報告されているのか? 成功していたら科学界ではニュースではないのか? あるいはアグルチニンによる一時的接着の話か? 混合説を主張するなら、それらの成功事例も含めて説明すべきだろう。できないということは、笹井氏の仮説の材料を崩せていないということである。


 そして、ES細胞説にしても、分子生物学会理事長の大隅典子氏がブログで断片的に述べていることは、「ES細胞が大きいとしても、切り刻めば小さくなる」「大きい細胞でも小さい断面を電子顕微鏡で映せば小さく見える」といった程度のおよそ科学的とは思えない指摘のみであった。遠藤氏による8番染色体のトリソミーにしても、ES細胞で3割の発現率で、STAP細胞ではなぜ10割の発現率なのか? 別の説明も可能ではないのか? 捏造派の議論を聴いていて不思議なのは、「ES細胞の特徴」との比較で種々論じているが、そもそもが「STAP細胞の特徴」はわかっていないのである。類似する可能性もありうるであろう。


 あるいは、若山氏自身が2月のセル誌インタビューでの、自ら一からSTAP細胞を作製したことを踏まえて、ES細胞コンタミ否定材料として述べた点、すなわち、当該系統のES細胞を保有しておらず混入は考えられない点、mRNAの発現データが異なる点、STAP幹細胞の樹立がES細胞に較べて容易である点などは、今の時点でどう否定されうるのか?
そしてまた、胎盤組織の発光の件はどうなのか? 若山氏は血管が光ったのだろうと言うが、丹羽氏は自身の目で見ているというのである。丹羽氏が見た切片を作ったのは小保方氏だから、それを小保方氏がすり替えたのだろうと片瀬氏らは言うが、その切片は検証されたのか? それはこれからの調査の中で検証されるのだろう。


NHKが特ダネ的に述べた「ESと書かれた容器」が、あたかも小保方氏による捏造の決定的要因であるかのような話も、そもそも時期が一致しないではないか。キメラマウス実験が行われたのは、201111月である。当時は小保方氏は若山研にいた。「ESと書かれた容器」が、現在の小保方研の冷凍庫にあることと、一体どういう関係があるのか? だいたいが、NHKスペシャルで初めて実物をみたが、あのような大きなボックスとは思わなかった。あんなに大きなボックスを、女性の小保方氏が「こっそり盗む」ことなどできるわけがないではないか。あんなに大きなボックスならば「これはなんだ?」ということですぐに露見する。これまでの雰囲気では、「容器」という表現から、小さいポケットにでも入るようなものかと思っていたが、あんな容器を多数入れた大きなボックスだったとは想像もしなかった。これでは、小保方氏が「若山研から譲与された」という説明のほうがはるかに自然である(【補足】理研の備品管理の対象にも当然なっているはずであり、NHKは小保方氏を追いかけまわすまでもなく、理研当局に、いつどういう理由でその備品たる容器ボックスが小保方研に移ったのかを確認すれば足りる話である)。こういう時期的にも物理的にも考え難いことを、あえてES細胞捏造説の援用材料とするとは、NHKには明らかに悪意があるとしか思えない。ジャーナリストとは到底思えない。NHKが早い時点から特ダネ的に流してきたことは、若山氏の渡したマウスと一致しないという話と、この「ESと書かれた容器」の話の二本柱だったのである。いずれも崩れているではないか。
 驚いたことに、改革委提言は、このNHKのニュースを援用して、そこで専門家なる人物に語らせた「専門家ならES細胞の混入ではないかと疑うと思う」という指摘を、そのまま「疑念の声が上がっている」として書いているのである。改革委という正式の委員会が、マスコミのニュースを援用して断罪するとは信じ難い。そのような事例があるのだろうか? STAP現象に疑義があることは確かであるし、だからこそ再現実験を含めて全容解明をせよ、というのはよくわかる。しかし、指摘されているその「疑義」にもまた「疑義」があるのである。笹井氏が提示した「STAP現象は最有力の仮説」として述べたいくつかの理由(http://www3.riken.jp/stap/j/s3document1.pdf)に対して、一つとして、何らの科学的反証となる説明や材料は提示されていないのである。TCR再構成がないという件にしても、笹井氏がNHKの取材に対して回答した「TCR再構成だけで万能性を立証しようという話にはなっていない」という趣旨の指摘は、どういうことなのか、NHKは追求しようとしていない。


結局、現時点では、科学的にはミステリー状況なのである。笹井氏が、ネイチャー論文撤回の際に発したコメントには、
 
「今回の撤回により実験的な根拠が失われ、その後新たに判明してきた細胞の遺伝子型などの齟齬などを照らしあわせると、STAP 現象全体の整合性を疑念なく語ることは現在困難であると言えます。」
 
 とあるが、「遺伝子型の齟齬」の材料を提示した若山氏の解析結果は間違っていた。STAP現象の肯定、否定双方の材料はあるが、決定打にはなっていないのである。ネイチャー論文の撤回理由にしても、笹井氏の述べるところと同じである。撤回理由を読むと、驚くほどシンプルである。
ネイチャー誌が独自に調査してきたにしては、独自に認定するところはない。あくまで、著者側が提出した撤回理由を淡々と述べるにとどまる。理研調査委が研究不正と認定した点があることと、いくつかの「過誤」を挙げるのみである。(1)から(5)まであるが、(4)までは単純な「過誤」であるし、残りの(5)の点は、例の若山氏の渡したマウスと異なるという話の残片であり、この解析は間違いだった。そして、撤回理由の結語として、
 
こうした複数の過誤は、本研究の全体としての信頼性を損ねるものである。またSTAP幹細胞に関する現象の真実性を疑いの念無く述べることができない。これらの現象を新たに検証する研究は現在進行中である。しかし、これまでに見いだされた過誤が多岐にわたることから、筆者らは Article Letter の両者を撤回することが妥当であると考える。」
 
 としており、真実性の検証は、「現在進行中」ということであり、事実、改革委提言の612日現在でも、その通りで進行中だったはずである。ところが、改革委は、一方では「第一論文、第二論文ともに全体を検証し、真実の解明に努めよ!」と叫びながら、他方では「真実性を疑うべき事象が生じている」として、遠藤、若山氏の第三者によるスクリーニングを経ていない「解析結果」を援用して、限りなく捏造だとの暗黙の認定の下に、一連の「提言」なるものをおこなっているのである。そして、その暗黙の認定が、提言の結語において、「前代未聞の研究不正」と明示的認定に至り(P29)、記者会見で、岸委員長、市川家國委員が「世界三大不正に数えられる」と断じたのである。
 市川氏の暴走は続く。遠藤氏のESTS細胞混合説をそのまま受け入れて、次のように刑事罰の対象だとまで述べている(さすがにすぐ、弁護士委員の竹岡氏から注意されている)。
 
「市川委員:小保方さんがなかなか「間違っていました」と言いにくいところがあるかなと思う。遠藤先生と若山先生のデータは、何を意味するかというと、ES細胞とTS細胞を混ぜたということだ。小保方さんたちは特許を申請をしている。虚偽のデータをもとに特許を申請すると、刑事罰の対象になる。
 
 いかに非科学的な改革委の姿勢であり、内容であるかは、これらの点から明らかであろう。こういう非科学的代物による笹井氏と小保方氏への集中的断罪が、悲劇を招いた大きな要因のひとつであるといって過言ではない。
 
 
第三の改革委提言の問題点は、「善玉悪玉」論に立った盲信的断罪である。


これは、第二の非科学的論法による断罪のひとつの類型であるが、それがあまりに顕著であるため、あえて特掲して述べる。
言うまでもなく、改革委提言における悪玉は小保方氏と笹井氏、竹市氏ら理研当局であり、善玉は遠藤氏と若山氏である。一読して目に付くのは遠藤、若山両氏への手放しでの称賛だ。
 
「日本を代表する研究機関である理研で起きた前代未聞の研究不正の解明にあたり、理研内で真相と科学的真実の解明のため勇気ある行動をとっている研究者が複数名いることは、理研にとって大きな救いである。本委員会はかかる研究者の勇気に敬意を表すると共に、このような行動により不利益な扱いをされることがないよう、理研に対し、強く求めるものである。」(P29
 
既に述べた通り、現時点では、STAP現象は科学的にはミステリーなのであり、遠藤、若山両氏の解析結果にしても、矛盾なく整合的に一連の事象を説明することはできていないのである。自ら解析して、疑義を提示することはいい。科学的にSTAP細胞捏造仮説を立てて、その材料を提示すること自体は、科学的議論にとどまる限りにおいては何らの問題はない。しかし、捏造仮説では説明できない少なくない事象に対して、説明しようとも試みず、マスコミによるバッシングと一緒になって決めつけをすることは、科学者としておかしいではないか。


若山氏は、「中立的第三者機関」と詐称して、知り合いの個人に対して遺伝子解析を依頼し、そのまま発表したものの、その結果は間違っていた。あれだけ反響を呼んだ解析結果の「若山研からのマウスからは絶対にできない」という中核的メッセージは覆ったにもかかわらず、再度会見なり、せめて発表なりして訂正することもしない。取材のあったマスコミやサイエンスライター、知り合いの科学者に個別に断片的に説明するだけで、会見なり発表という形での訂正はしていない。


「遠藤氏と東大の2つのグループがそれぞれ独自におこなった解析結果」をそのまま援用しているが、それらがそのまま検証なしに正しいという前提で、断じてしまっていいのか? 理研が、遠藤氏の解析結果を発表するに当たっては、理研内の研究者会議での議論を経てからにすべきだとしたとの報道があるが、それは第三者による検証という意味では正しいのではないのか? 実際、遠藤氏の解析に対する疑義もネット上では見られるし、若山氏の解析ミスの二の舞の部分がないととは限らない。まして、ES細胞とトリソミーの発現が似ていると言っても、発現率も大きく異なるし、弱いトリソミーであれば生まれてくるとの指摘もある。

改革委提言では、STAP細胞論文については、次のように述べている。
 
「2本の論文については、調査委員会においても、また CDB 委員会においても、各図版の生データ(写真など)の有無の確認及び内容の精査、各実験手法や試料、生データから図版作成までの過程の妥当性の有無の検証など、いわゆる論文検証が行われていない。」P23
 
STAP論文についてこう指摘するのであれば、3か月かけたという遠藤氏の解析結果や、若山氏の解析結果についても、きちんと論文にして、第三者の検証を経ることが必須ではないのであろうか。それらも含めて、全体の「真実性の解明」ということだと思うが、なぜか、遠藤氏のことは、改革委委員の塩見美喜子氏はこう述べて、無批判的に受け入れてしてしまっている。
 
「――理研の遠藤高帆・上級研究員が発表した解析の結果の件。この結果によって、ES細胞の混入の可能性がかなり高まって、STAP細胞の存在自体を疑うレベルと委員会は評価しているのか?
塩見美喜子委員:評価している。遠藤高帆先生はこの領域では有名な先生で、解析は信頼のおけるものであるということ。それから遠藤先生だけではなくて、東工大のあるグループ、それから東大のあるグループも同じような解析をして、同じような結果が出ているということ。それから裏がとれているということで、信ぴょう性はかなり高いと考えている。
 
――その流れでもう一点、このことによって、STAP細胞の有無についてまで、現時点で、もうすでに評価できるレベルだと委員会として考えているのか?
塩見委員:そのように言えるかと思う。ただ、私たちがいくら言っても仕方ないので、当事者たちが、これに関して、どのようにお考えなのかということを、私たちも聞きたいところだ。」http://www.bengo4.com/topics/1641/
 
そこまでSTAP細胞は無いとまで断じるのであれば、ES細胞説、ES細胞・TS細胞混合説では説明できない一連の事象について全て説明すべきだろう。笹井氏の提示した諸論点、若山氏自身が2月に述べたES細胞との違い等も含めて、逐一科学的に整理して反駁しなくてはならない。そういう科学的検討は何らしないままに、遠藤氏は高名な方だから信頼できる、若山氏の人柄は誠実そうだから信頼できる、ともに真実解明のために勇気ある行動を取った素晴らしい研究者だ、というのでは、マスコミと同列の悪玉・善玉論と同じではないか。

マスコミや学者たち、あるいはネイチャー誌が、「笹井氏、若山氏という著名な科学者たちが著者として名を連ねていたことが、STAP論文をパスさせる要因になった」旨を指摘し批判している構図と全く同じ構図で、遠藤氏、若山氏の主張をそのまま盲信しているのである。それでは説明できない材料があるにも関わらずである。これは、典型的なダブルスタンダードではないか。
 
ダブルスタンダードと言えば、提言書における若山氏の扱いも、極めて奇異な感を抱かせる。
もともと、第二論文は重大な疑義あり、ということで全容解明せよ、と述べている。それはその通りで、しっかりと調査すべきである。しかし、その第二論文のメインの著者は若山氏なのである。全容調査という場合には、若山氏・・・というよりも、若山研究室・・・が調査対象になるわけである。そこでの、一連の経過を、5W1Hを明らかにしながら、どこに問題があったのかを解明することになるはずである。
それ以前に、小保方氏は若山研に在籍し、そこでキメラマウス実験も行ったわけである。笹井氏に指導の責任ありというのであれば、直接の指導責任は若山氏にあったことになる。この点については、提言ではわずか数行述べるのみで(P10)、しかも、2012年4月以降は非常勤になったとして、むしろそういう非常勤の者にGLをさせる理研を批判している。
他方で、前述の通り、解明が勇気ある行動として、遠藤氏とともに称賛の対象となっている。
大の大人の研究者の箸の上げ下ろし的なデータの管理・指導までする必要が本当にあるかについては疑問があるが、それでもそうだとして笹井氏を批判するのであれば、若山氏も同様に批判しなければ、ダブルスタンダードになってしまう。


●ついでにいうと、善玉・悪玉的な非科学的断罪については、分子生物学会の面々も同列である。NHKの要請に応じて初めて論文を検討するとはどういうことか? あれだけ最初から、他人の研究者やマスコミが言うところをそのまま盲信するだけで捏造扱いをしていたのに、分子生物学会の研究者として自らその疑義を分析、整理してもいなかったということが、あの番組でよくわかった。いかに恥ずかしい姿をさらしたかということが、本人たちにはわかっていないのであろう。そして笹井氏を追いこむような、貶めるような発言をした。しっかり我々は記憶している。
そして、大隅理事長は、次のように書いている。
 
「なぜ自らの命を断つという選択をしたのか。このようなことが起きた背景について分析し、問題を取り除く努力を続ける必要があると思います生命科学の商業化・産業化、過当競争、教育の質保証、問題は多岐にわたり交絡しています。犯人探しや責任のなすりあいをするのではなく、どうすればこのような悲劇を防げるのか、科学者コミュニティーの構成員が自分の問題として現実に目を向ける必要があります。
そして、理化学研究所の皆様、とくに神戸の発生・再生科学総合研究センターの皆様、くれぐれも労りあい、気持ちを強く持って良いサイエンスを続けて下さい。世界は応援しています。」http://nosumi.exblog.jp/20984215
 
「笹井氏の自殺」ということについての記述だが、これを「STAP論文の疑義」という言葉に置き換えてみればいい。その疑義について、初めから小保方氏を「犯人」扱いし、小保方、笹井両氏の「責任」を指弾してきたのは、分子生物学会の面々ではないのか? ES細胞混入説に立つとしても、「捏造」ではなく「勘違い」という可能性も多分にあり得るところである。ところが、あくまで「研究不正」=「捏造」と決めつけて、非科学的議論で煽ってきた。税金の無駄遣いという俗耳に入りやすい言葉で、再現実験、検証実験に断固反対した。読売は、夕刊一面トップで大々的に、分子生物学会のこれらの動きを報じて煽った(補足:ちなみに、読売は、笹井氏の家族宛て遺書内容を弁護士が公表した件を、10行程度の小さいベタ記事で報じるのみである)。
 彼らが笹井氏を自殺に追い込んだとはもちろん言わない。しかし、死とまではいかなくとも、精神的ダメージ状態に至ることについて、全く想像だにしていなかったとはまさか言えまい。少なくとも小保方氏は入院し、精神的に参っていることは繰り返し説明されてきたのだから。
そうなる可能性がありうることを認識していた、あるいはそうなってもいいと暗暗裡に認識していたということであれば、「未必の故意」が認定される。つまり、わざと精神的ダメージ状態に至らしめた=精神的な傷害罪である、ということになる。
「そんなつもりは全くなかった」と抗弁するだろう。その通りだと思う。しかし、その論法で「捏造」=「研究不正」認定をされてしまったのが小保方氏なのである、ということがわかっているだろうか? あの調査委の論理は、そういうことだ。「同一パソコンでデータの整理を充分していなかった→画像の配置が間違っても仕方がないと思っていたに違いない→それは未必の故意だ→だから故意による研究不正だ」という、文字通りの牽強付会な飛躍した論理なのである。それによって研究不正の烙印を押されて、以後の大バッシングへと発展した。


科学者の集団であれば、まして分子生物学の科学者であれば、遠藤、若山両氏を盲信するのではなく、科学的視点から、STAP細胞を巡る疑義の論点整理を冷静に行い、再現実験、検証実験を積極的に促進し、その結果やデータや残存試料の分析等も踏まえて、総合的な判断を促すというのが、その責務だったのではないのか? マスコミに同調して批判、いや、非難やバッシングの増幅役をするのではなく、それこそ責任追及ということではなく、予断のない冷静な科学的議論を呼びかけるということこそが、その役割だったはずである。
 責任追及と処分とは、科学的検討の結果、行われる筋合いのものである
 
 もう一点、大隅氏の発言について言うと、CDBとその研究者とを「世界は応援する」と述べているが、それならば、改革委提言の「CDB解体」に関して、抗議とは言わずとも、何か意見書でも出したのか? いまさら応援すると言われても、鼻白む思いがする。
 
 
●本ブログでの、改革委提言が有する問題点の指摘は、まだ続く。


CDBの位置づけ、果たしている役割、周囲の期待等に何ら顧慮しない唐突な「解体」要求。
○本件の一例のみを以て、「構造的欠陥」と断じている根拠のなさ。
○関係ない研究者に連帯責任を負わせるかのような姿勢
○処分における「一事不再理」という基本原則を知らない早期処分要請
○特許申請との関係を全く無視した、俗耳に入りやすい「秘密主義」批判
○海外や過去にいくらでも成功例がある若手登用制度の批判
○箸の上げ下ろしに近い研究者の「管理」的発想
○屋上屋を重ねるおそれのあるいくつかの組織の設置要請

「前代未聞」なのは、改革委とその提言書のほうであろう。こういう代物が公式文書として罷り通り、社会を揺るがす(社会が疑念なく受け入れる)とは信じがたい。
 
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※ 今、ニュース欄を見たら、笹井氏の代理人弁護士が会見し、家族宛ての遺書の内容を説明していた。
 
「笹井氏の妻と兄宛ての遺書に「マスコミなどからの不当なバッシング理研やラボ(研究室)への責任から疲れ切ってしまった」との内容が書かれていたことを明らかにした。
(中略)
中村弁護士は、遺族から聞き取った状況を踏まえ「笹井氏は論文への疑惑が指摘された3月ごろから心労や重圧を感じ、6月の理研改革委員会による(再生研の)解体提言で相当強いショックを受けた」との見方を示した。」