理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

若山氏、理研のSTAP幹細胞分析結果の「訂正」について―会見なしの「訂正」で済む話か?

 
 7月22日、若山氏と理研とが、保管されていたSTAP幹細胞の分析結果を訂正しました。「マーカー遺伝子の場所が異なるから、STAP細胞は自分の研究室に存在しないマウスからつくられていた」との主張の根拠が崩れたことになり(それこそ、「白紙に戻った」)、その信用性に大きな疑問符がついたことになります。小保方氏がポケットに入れて持ち込んだ可能性さえ示唆していましたから、その責任は本来重大で、HPでの発表ではなく、記者会見を開いて説明するのが筋でしょう(解析が全て終わったら開くようではありますが)。
 結局、最初に報じた朝日新聞と続報の毎日新聞の報道が、正しかったことになります。
 
 若山氏の記者会見内容や一連の言動についての疑問は、当ブログで指摘してきましたが、当たっていたものも少なくないようです。
 ○若山氏記者会見等に関する疑問
 ○ネイチャー論文撤回理由の訂正をめぐる疑問
 
●さて、まず今回の新聞報道を概観します。
 
◎STAP細胞解析結果は誤り 若山氏、会見内容を訂正
朝日新聞 20147230022
「 STAP細胞問題をめぐり、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB)は22日、若山照彦山梨大教授がつくりCDBに保管されていたSTAP幹細胞とされる細胞の遺伝子解析結果を訂正すると発表した。若山氏が6月の会見で述べた解析結果は誤りで、「STAP細胞は自分の研究室に存在しないマウスからつくられていた」との主張が成り立たなくなった。
 若山氏も同日、同様の訂正文書を研究室のホームページに掲載した。
 STAP幹細胞は、若山氏が提供したマウスを元に理研小保方晴子氏が作製したSTAP細胞を、若山氏が改変したもの。若山研究室とCDBに保管されていた。若山氏とCDBは6月16日、残っていた幹細胞は目印になる遺伝子が15番染色体にあったと発表した。若山氏は「若山研究室では15番染色体に目印があるマウスは飼育したことがない」と説明し、STAP細胞は若山研究室が提供したマウス由来ではないと主張していた。
 その後、CDBは解析結果の分析を進め、「幹細胞の目印が15番染色体にあったというのは、解釈の誤りだった」と訂正した。実際の目印の位置は調査中だが、若山研究室で飼育されていた別のマウスと遺伝子の目印の特徴が似ていることが分かった。」
 
「・・・共著者の若山照彦山梨大教授が提供したマウスから作製されたものではないとした6月の発表は誤りで、若山研究室のマウス由来だった可能性も否定できないとしている。
 若山氏が目印となる遺伝子を18番染色体に挿入したマウスを作製し、これを受け取った小保方氏がSTAP細胞を作り、若山氏が培養して幹細胞を作った。
 この幹細胞について理研は当初、遺伝子は15番染色体に挿入されており、若山氏が提供したマウス由来ではないと発表。だが詳しい調査の結果、この細胞には別の遺伝子も挿入されており、染色体の挿入場所は分からなくなったという。同じ遺伝子の特徴を持つマウスは大阪大が作製し、若山研究室で飼育されていた。
 
若山氏は6月、第三者機関での解析結果から「若山研究室のマウスから作られたものではない」などと発表していた。その根拠としていた細胞を光らせる遺伝子の挿入位置が発表した場所と限らないという点のほか、別のSTAP幹細胞13株がメスの細胞だったとの発表内容をオスに訂正した。
 遺伝子の挿入位置の訂正については、挿入した遺伝子が一つと想定して分析していたが、実は二つの遺伝子が挿入されていたことが原因と説明している。若山研は当時、二つの遺伝子を挿入したマウスを飼育しており、このマウスと幹細胞で挿入位置が一致するかを調べている。
 
NHK
「・・・ただ、若山教授がSTAP細胞作製のために小保方リーダーに渡したマウスと、そのマウスから作ったSTAP細胞だとして小保方リーダーから渡された細胞が異なるものだという点は変わっていないということで、理化学研究所や若山教授の研究室でさらに詳しく調べています。」
 
NHKだけは、「小保方氏から渡されたものとは違う」という若山氏の主張を紹介していますが、なぜそういう主張が成り立つのかはよくわかりません。
 
●さて、それで、理研と山梨大若山研究室の発表内容を見てみました。素人には難しい内容ですが、新聞報道の補完的情報がいくつかわかります。
 
理研STAP関連サイト
CDB保全されているSTAP関連細胞株に関する検証について」(616日)の訂正(2014722日訂正版)
 
○山梨大若山研究室サイト
2014722 616日に発表したSTAP論文に関する検証結果の一部訂正と撤回理由書の修正理由について」
 
●まとめると、次のようなことかと思います。
 
【分析結果の誤り】
①当初発表では、若山研で維持し、小保方氏に渡したドナーマウスは、1種類のマー
 カー遺伝子で18番染色体に組み込んだものだったが、小保方氏から返ってきたSTAP細胞から作ったSTAP幹細胞の株を分析したところ、
理研6株では、2株は18番で一致(=若山研由来)。4株が15番で不一致。
・若山氏が持つ8株は、すべて15番で不一致。すべてメスと判定。
しかし、遠藤高帆氏の指摘で、マーカー遺伝子は実は2種類あることがわかり、どの染色体に組み込まれていたかわからなくなったので、追加解析中である。
その2種類の遺伝子を組み込んだマウスは、大阪大の岡部研究室から譲渡され、若山研に存在していたことが判明した。この岡部研由来マウスと、マーカー遺伝子の場所が一致するかどうか引き続き解析する。
細胞株のオス、メスの判定を全部間違っていた(逆だった)。
 
 「中立的な第三者機関」(実は、単なる知り合いにすぎないことが判明しています)による解析は、全面的間違いだったということになります。
 
【ネイチャー論文撤回理由訂正の経過】
紙版とオンライン版とで、理由書が異なってしまった。上記分析の誤りが判明したのが、締切後だったので、紙版はそのままになった。ただ、紙版は編集部側から一部削除の要請があったので、削除したが、それで文脈が混乱してしまった。
②オンライン版では、「遠藤氏の指摘により不確実となった15番染色体について削除をお願いし、さらに、染色体番号が不明となったことから、若山研では飼育されていない、と断定することも出来なくなり、最後の文章の削除をお願いしました(The origin of the cag-gfp insertion line in chromosome 15 was not fromthe mi
 ce at the Wakayama laboratory, as it was never maintained there.)。その結果、削除し損ねた文章(TheGFP・・・)の主語がよりわからなくなってしまった」。
 
 撤回理由訂正の混乱が報道された際、若山氏は、「15番染色体」の部分の訂正を依頼しただけである旨述べていましたが、その後の追加で、「15番のものは、若山研では飼育されていなかったから、その由来のマウスによるものではない」との中核的部分を削除していたわけです。この点は、毎日新聞の報道が当たっていました。
 しかしそうすると、若山氏がNHK等に依然として述べている「若山研由来のものではないという根幹部分はゆるがない」という主張は、どういう根拠によるものなのでしょうか?大事な点ですから、そこは合わせて説明がなされる必要がありますし、取材もしてもらわないといけません。系統の差の話でしょうか・・・。
 
【補足】STAP問題をフォローしているサイエンスライターの片瀬久美子氏のブログに、補足解説記事が載っています。


また、こうなってくると、例のNHKが報じた、小保方研究室で「発見」された「ESと書かれた容器」の中の細胞の「疑惑」も、連動して怪しくなってきました。NHKは、次のように報じていました。
 
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◎STAP問題 冷凍庫に「ES」容器
   20140616 () 
理化学研究所小保方晴子研究ユニットリーダーらが使っていた研究所内の冷凍庫から「ES」と書かれたラベルを貼った容器が見つかり、中の細胞を分析したところ、共同研究者の若山教授の研究室で保存されていたSTAP細胞を培養したものだとする細胞と遺伝子の特徴が一致したとする分析結果がまとまっていたことが分かりました。
  理化学研究所の関係者によりますと、分析結果をまとめたのは、小保方リーダーが所属する神戸市の理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの研究者らのグループです。
それによりますと、センター内にある小保方リーダーらが使っていた冷凍庫の中から「ES」と書かれたラベルを貼った容器が見つかり、中にあった細胞の遺伝子を詳しく分析しました。
その結果、この細胞には15番目の染色体に緑色の光を出す遺伝子が入っている特徴のあることが分かったということです。
 共同研究者の若山照彦山梨大学教授は16日記者会見を行い、小保方リーダーが作製したSTAP細胞を培養したものだとする細胞を分析した結果、緑色の光を出す遺伝子が、15番染色体に組み込まれていて、これまで若山教授の研究室で小保方リーダーがSTAP細胞の作製に使っていたマウスの細胞とは特徴が異なることが分かったと発表しています。
 今回の分析結果について理化学研究所は、「小保方研究室で見つかったESと書かれたラベルの細胞とSTAP細胞から作ったという細胞の特徴が一致したのは事実だ。これだけでSTAP細胞がES細胞だったと結論づけることはできないが、今後さらに詳しく検証を進めていきたい」とコメントしています。
 
弁護士「コメントできない」
 
 理化学研究所小保方晴子研究ユニットリーダーの代理人を務める三木秀夫弁護士は、山梨大学の若山教授が行った記者会見について、「内容を把握していないので何もコメントできない」としています。
また、理化学研究所による分析で新たな事実が分かったことについても「私も小保方さんも理化学研究所から何も聞いておらず、詳しいことも分からないのでコメントできない」としています。
 
専門家「本人みずから説明を」
 
これについて日本分子生物学会の副理事長で九州大学の中山敬一教授は、「これまではSTAP細胞はあるという前提で話が進んでいたが、今回の分析結果は実際にはES細胞だった可能性を強く示している。こうしたデータが明らかになった以上、ミスでは説明がつかず、人為的な混入も考えられるので、小保方さんや笹井さんがみずから会見し、説明するのが科学者としての義務だ」と指摘しています。
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 ここで15番としているのは、今回理研と若山氏とが解析ミスをした理由と同じで、おそらく間違いでしょう。
そうすると、「ES細胞捏造疑惑」の「根拠」となった2つが宙に浮いてしまいました。あとは、「(ES細胞で3割程度に見られる)トリソミーの発現」でしょうか。ES細胞で全部に発現するならまだわかりますが、3割発現するだけでSTAP細胞はES細胞だと断定できるのか、ESでは30%の発現なのにSTAPは100%発現しているのはどうしてか等、素人にはよくわかりません。また、「トリソミーが発現したら、死んでしまうので生まれてこないはずだ。生後1週間目のマウスを使ったのは嘘ではないか」という「疑惑」の提起もありましたが、ネット上では遠藤氏の分析に批判もあるようです(DNAではなく、mRNAによる分析の是非については、他でも指摘があるようですが・・・。その当否は私には全くわかりませんが・・・。)。
 
それに、前に書いたように、「ES細胞説」と「ES細胞・TS細胞混合説」とは両立しないはずなので(丹羽氏が、「混合されると均一な細胞集団にならず、分離してしまう」旨発言)、遠藤氏による「ESTS混合説」が正しいのであれば、「ES細胞説」は成り立たないのではないでしょうか。
 
 ちなみに、小保方氏バッシングコメントの常連の中山教授は、たまには、若山氏に「きちんと説明せよ」とは言わないのでしょうか?
 
●いずれにしても、まだ追加解析の途中のようですから、最終解析結果を待つということでしょうが、しかし、あの616日の若山氏の記者会見のインパクトは大きかっただけに、その解析間違いのインパクトもまた大きなものがあります。
 あの会見は、遠藤高帆氏の「ES細胞とTS細胞混合の特徴」「ES細胞に特徴的なトリソミー」の解析とともに、小保方氏の「捏造」疑惑を世間に強く印象付けたものでした。
 科学者もマスコミも、「それ見たことか、やっぱりインチキだ」とばかり、小保方氏へのバッシングを更に強めました。
 しかし、若山氏の記者会見と解析とは、マウスの管理、手交、細胞の受渡し、保管、幹細胞実験、保管の一連の基本的事実関係(5W1H)が何も明らかにされないままに、また、「公正中立なる第三者機関」なるものが誰なのか?も明らかにされないままに、若山氏だけのアプリオリな断定で説明がなされ、「私が不正を行ったことは断じてありません」という言葉をそのまま聞き置くだけのもので、客観的とは言い難いものでした。
 実際、その疑問は、今回の解析発表の「訂正」騒動で、一段と問題となってきました。
 ・いったい、若山研でのマウスの保管状況はどうだったのか?   阪大岡部研由来マウスの存在を若山氏が知らなかったというこ  とがなぜ生じるのか?
 ・小保方氏に、ドナーマウスを手交したのは具体的に誰で、いつ  どのような形で手交したのか?
 ・小保方氏からSTAP細胞を受領したのは誰で、どのように保管   されていたのか?
 これらの一連のファクトが明らかにされる必要があります。

 それとミステリアスになってきたのが、NHKが特ダネ的に報じた上記の「ESと書いた容器」の存在です。なぜ唐突に「発見」されたのでしょうか?
 そもそも、なぜ、理研当局によって封鎖されているはずの小保方研究室に、センターの研究者らのグループが出入りし、冷凍庫の中を探索できたのでしょうか?理研当局によって承認された行動なのでしょうか? 勝手に出入りすることが許されるなら、それこそ「逆捏造」の余地も生まれてきます。もし、今回の理研保存株の分析をしているチームによるもので、理研当局の承認によるものあれば、その解析結果が、バイアスのかかった中途半端な形で垂れ流されるのは不公正です。

 ※(補足)片瀬久美子氏のブログ記事のコメント欄における片瀬氏の書き込みを読んで気になったところがあります。そこには、
 「付け加えると、解析に加わっている若山さんの協力者(信頼できる人物です)がいることにより、理研が都合良く隠蔽するなどの恐れはないと考えています。」
 とありました。ということは、本来調査対象であるはずの若山氏との関係で、中立性に疑念が生じる余地があるチームだということです。

 今回、遠藤高帆氏の指摘により、解析の誤りが分かったとのことですが、それがなかったら、若山氏、理研チームによる同時発表の内容は既成事実化してしまい、小保方氏に貼られたレッテルをはがすことは難しかったかもしれません。
 それにしても、マスコミも今回の解析訂正の記事の扱いは地味で、べた記事を少し大きくしたくらいです。読売新聞などは、早稲田大の報告書を1面丸ごと使って批判しているのに対して、解析訂正の記事は、ずっと中の方に2段程度で報じるだけです。
 
●しかし、こうやって見てくると、研究不正調査の上で、重要な証拠物件になるはずの若山氏保管の8株のSTAP幹細胞を、調査対象当事者の一人である若山氏に委ねたままにしておき、若山氏が自ら依頼した知り合いの研究者に分析させたり、遠藤高帆氏が分析に入ったりと、理研の不正調査チーム(誰がなったのかわかりませんが)の保全下にないままに勝手に扱われているということは、実におかしな事態です。理研は、山梨大に依頼して、若山氏保管の細胞株の保全を図るべきです。
  
●なお、NHKの報道には、今回の報道ぶりからもわかるように、バイアスがかかっている感が強くします。もともと3月以来、若山氏をニュースソースとしていると思われるニュースを流し続けてきました。
 3月には、マウスの系統が違うという報道、
そして、例の若山氏の記者発表内容の事前取材と「ESと書かれた容器」の存在とを組み合わせることによって、「小保方氏がすり替えた」というニュアンスを強く打ち出していました。特ダネ的扱いだったかと思います。以下は、もう消えてしまった記事ですが、NHK保全しておくべきだと思います。記事が消されたのは比較的最近ですから(少なくとも77日まではありました)、単に時間が経過したからということだけではなく、若山氏の記者会見内容が間違いだったらしいということが露見したがために消したのでは?というのは穿ち過ぎでしょうか?
 
 そして、今度の日曜日(727日)に、NHKスペシャルで、
○調査報告 STAP細胞 不正の深層(仮)
との番組が組まれるそうです。その説明を読むと、驚いたことに、「空前の捏造」と決めつけてしまっています。当初から一貫して、よほど捏造にしたいようです。出演する「専門家」が誰なのか? どういう素材、角度で構成するのか? 興味深いものがあります。もし、遠藤高帆氏が出演するならば、今回の若山氏の解析ミスの件と、丹羽氏の「ES細胞とTS細胞とが均一に混じることは経験上あり得ない」という主張とについて、コメントを求めてもらいたいところです。
 
「日本を代表する研究機関である理化学研究所で起きた史上空前と言われる論文の捏造。改革委員会は、熾烈な研究費獲得競争の中で、理研が“スター科学者”を早急に生み出すために論文をほとんどチェックせずに世に送り出した実態や、問題が発覚した後も幕引きを図ろうとする理研の隠蔽体質を断罪。STAP細胞の存在そのものが“捏造”された可能性について、更に検証を進めるべきだと提言した。しかし執筆者の小保方晴子研究ユニットリーダーは徹底抗戦。真相は何か、背景に何があるのか、全容の解明には至っていない。番組では、独自に入手した資料を専門家と共に分析。関係者への徹底取材を通して論文の不正の実態に迫る。更に、多くの疑義が指摘された論文がなぜ世に出されることになったのか、その背景を探っていく。」
 
 今頃は、おそらく、今回の若山氏側と理研の解析ミスの発表を受けて、番組構成の差し替えで大変なのではないでしょうか?
 それと、7月下旬には、丹羽氏らによる理研の検証チームによる中間発表があるはずですから、もう間もなくです。そこではまだ進展はなさそうですが、何か新しい材料が出てきたら、下手をするとピントのずれた番組になってしまう恐れもあります。ずいぶんリスクのあるタイミングを選んだものです。

【補足】(7/24) NHKの強引取材―パパラッチに堕した「公共放送」
  27日のNHKスペシャルに向けて、よほど焦っていたのでしょう。
 ここまでのパパラッチ並みの取材をNHKがするとは、信じがたい話です。
 断固として刑事告訴すべきでしょう。
  バイアス全開の番組内容であろうことは、容易に想像できます。

 ※ 東スポ