理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

「ES細胞捏造説」「ES・TS細胞混合説」ですべて整合的に説明できるのか?―齟齬や憶測が多すぎるのでは?


  先日の記事でも書いたとおり、世の中は、STAP細胞はES細胞だったという認識で固まりつつあるように思います。ES細胞又はTS細胞との混合だった、トリソミー等遺伝子データが矛盾する、生後1週間目のマウスからできるはずがない、死んだ細胞が蛍光したのを誤認したのだろう、電子顕微鏡で動いているように見えたのはマクロファージだ、胎盤が光って見えたのは血液が光っているのを誤認したのだろう、等々の検証や指摘があり、細胞や実験結果をすり替えたのは小保方氏だろう・・・といった具合に、STAP細胞自体の捏造説でほぼ固まっているようです(というか、捏造説で決着させたいと祈念?しているように思えます)。
 
 しかしさりとて、STAP細胞を否定する材料や指摘が、すべて矛盾なく説明がつくのか?といえば、そうでもないように感じます。疑念の指摘をそれぞれの研究者がしていますが、それらを包含して全て整合性のある説明はできていないのではないでしょうか? 最後は、小保方氏がすり替えたのだ、不正に操作したのだ・・・で納得させている印象があります。
  
【「ES細胞単体」説と「ES細胞とTS細胞の混合説」は両立するのか?】
 
STAP細胞を否定する科学者たちの指摘に読んでいて、釈然としない点がいろいろあります。遠藤高帆氏(kaho氏)は、遺伝子解析で、ESTS細胞混合可能性の指摘とともに、ES細胞によくあるという8番トリソミーの発現の指摘とによって、「決定打」を与えたかのように扱われています。
しかし、若山氏その他の人々は、ES細胞単体説を述べているように思うのですが、その両者は両立するのでしょうか?
 
遠藤高帆主任研究員による指摘では、


「インターネットで公開された遺伝子の働き具合を示すデータを遠藤氏が解析したところ、ES細胞と、胎盤になる能力のある幹細胞「TS細胞」が混ざった特徴があった。
「これにより、STAP細胞の大きな特徴である胎盤に分化できる能力がTS細胞に由来していた可能性が浮上。遠藤氏は5月22日、理研に解析結果を報告し「偶然や間違いで起きるとは考えにくく、意図的に混ぜ合わせた可能性がある」などと話したという。」
 
 しかし一方では、上記の記事の末尾に、
「論文共著者の丹羽仁史・プロジェクトリーダーは4月の記者会見で、「ES細胞とTS細胞が均質に混ざり合ったものを作るのは、私の経験上困難だ」と否定していた。」
 とあるように、4月初めの記者会見で、自ら同じ発想で実験を行った結果を紹介して、明確に否定しています。
 
「若山氏は、今でこそ信じる信じないと言っているが、小保方氏から渡された細胞集団は極めて均一な細胞集団で、これをマイクロナイフで刻んで注入したと聞いている。
 自分で実際、ES細胞とTS細胞を混ぜると人工的な胚ができるのではないかと思って実験したことがあるが、残念ながら、わずか数日の間に見事に分離する。接着しながら分離するので、これらの両者で均一な細胞集団を作ることはできない。おそらく発現しているカドヒリンが異なるだろう。増殖因子の要求性が異なるので、それぞれの細胞の分化胞を維持しながら接着することはできないと思う。」
 
 この点は、笹井氏も記者会見時の配布資料でも説明しています。
 
C 胚盤胞の細胞注入実験(キメラマウス実験)の結果
 ES細胞、TS細胞の混ざり物では細胞接着が上手く行かず1つの細胞塊にな らない
 ES細胞と異なり、分散した細胞ではキメラを作らない」
 
 これに対して、分子生物学会理事長の大隅典子氏のブログでは、


「「混ざり物」ではなく、「ES細胞のみ、TS細胞のみ」であれば、細胞接着には問題なく、互いに馴染み合って塊になるのではないかと推測します。」
 
 というのみで、混合した場合には、細胞はくっつかないことを認めています。コメント欄をみると、


「アグルチニンを入れれば一時的にひっつかせるのは可能なのではと思います。どの論文か忘れましたが若山さんの過去の論文でアグルチニンを使用していたと思います。」


 という指摘があるのみですが、それで「極めて均一な細胞集団」ができるのでしょうか? そんなものは小保方氏が使えるわけでもないでしょうし。
 
 その他、大隅氏は、
「細胞の切り方によっては、大きな細胞でも小さな断面を示すことは可能です。」
 と述べて、笹井氏が会見で述べた「ES細胞はSTAP細胞よりずっと大きい」という説明に対して否定的見解を述べています(しかし、電子顕微鏡が自動でムービーを撮影しているのに、常に小さい断面を撮り続けることなど、物理的にできるものでしょうか??)。
 
 若山氏は会見で、ES細胞であることを強く示唆し、


「STAP細胞由来の胎盤のほか、比較のため胚性幹細胞(ES細胞)由来の胎盤を作った。STAP細胞由来の胎盤だけでなく、ES細胞由来の胎盤も光っていた。赤ちゃんの血が胎盤の血管に入るためだ。STAP細胞由来の胎盤では血管以外でも光っている(のでES細胞とは違う)という報告を小保方氏から受けた」
 とし、小保方氏が虚偽の報告をしたような印象付けをしています。
 
 また、
STAP細胞およびFI幹細胞がES細胞やTS細胞の混入であることを否定するすべての実験が、小保方さんによって行われていたことが今回の会見で明らかとなり、これまで引っかかっていた謎が全て解けました。」
 と指摘する研究者のように、やはりES細胞だったものを、小保方氏が実験を意図的に操作しES細胞ではないように捏造したのだ、と推定する向きが多いようです。
 
 サイエンスライターSTAP問題での評論活動で知られる片瀬久美子氏も同様かと思います。
 
 しかし、遠藤氏が、「ES細胞とTS細胞とが9対1で混合しており、意図的に混ぜ合わせたのだろう」と述べるところと、他の研究者が「ES細胞単体だ」と主張するところとは、相容れないのではないか? と、傍から読んでいて思うのですが、どうなのでしょうか? 
 TS細胞が混じっているとする根拠があるのであれば、TS細胞とES細胞とが一緒に塊になることはないことは、(アルギニンで接着云々を言う人以外は)誰もが認めているわけですから、混合を念頭において、あの小さい「極めて均一の細胞集団」は何だったのか?という疑問には、誰も答えていないのではないでしょうか?
 
 
ES細胞説ですべて説明がつくのか??―以前説明がなされた混入否定根拠との関係は?】
 
 次に、「ES細胞とTS細胞とが9対1で混合している」という分析結果は横におき、「あれをES細胞単体だ」という説にしても、整合的な説明には至っていないように感じます。
 
ES細胞説に誘導しようとしている若山氏は、2月末のCell誌のインタビューでは、1回成功したときは、すべて自分で行ったことや、すべてES細胞のコンタミは考えにくいことを述べていますが、そこで述べられている、ES細胞混入否定の根拠は、今現在、失われているとする根拠はあるのでしょうか?
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―以前成功したSTAP細胞はmESCsあるいはマウスのiPSコンタミという可能性はありますか
Y:私はSTAP細胞からSTAP幹細胞の作成にも成功していますし考えにくいです。それに129B6GFPマウスからのSTAP幹細胞作成も出来ています。当時ES細胞は持っていませんでした。STAP幹細胞作成時Oct-4強陽性でした。その条件下ではES細胞より簡易に作成できました。さらにmRNA発現の仕方からSTAP幹細胞がES細胞のコンタミでは無いでしょう。
―あなたのラボでも再現性が低いそうですね
Y:ありうる事です。私自身ラボを移った際今まで出来ていたクローンマウスの作成に半年かかりました。自分の持つ技術でさえそうですから人の技術であれば再現が難しいのは納得できるものです。以前成功した時は小保方氏の指導の下、全て自分で行いました。同じようにPh.Dの生徒もSTAP幹細胞作成に成功していました。実験をはじめた当初はES細胞やiPS細胞は扱っていませんでした。後になってコントロールとしてES細胞を培養していました。
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 大隅氏は、STAP細胞なるものは、ES細胞を小さく切って小さい断面を映して偽装もできるはずだと書いていましたが、若山氏は自分自身ですべて一から作ったのに、そこで作製されたものをES細胞と間違えることはまさかないでしょう。死んだ細胞と間違えたなんてことは、「小保方氏のような未熟な研究者」ではないのですから、間違ってもないでしょう。
 そして、「(STAP幹細胞が)ES細胞より簡単にできた」と言っているのですから、実はSTAP細胞がES細胞だったのであれば、こういう比較差は現れないでしょう。
「さらにmRNA発現の仕方からSTAP幹細胞がES細胞のコンタミでは無い」という部分は、よくわかりませんが、この点を否定する材料がその後現れているのでしょうか?
 
 遠藤氏による8番トリソミーの問題にしても、「ES細胞によくみられる(といっても3割程度)し、その問題があれば死んで生まれてこないはずだ。したがって、1週目のマウスから作ったというのは怪しい」という指摘と、若山氏が自ら一から作製に成功していることや、丹羽氏がプロトコルを記録するために、3度にわたって作製過程を逐一観察しているということと、どう両立するのでしょうか? 二人とも嘘をついているというわけでしょうか?
 
●それと、若山氏は記者会見で、次のように述べています。


「自分の研究室の学生が過去にES細胞を小保方氏に渡していたことが分かっている。ES細胞を普段自由に使える環境だったということは間違いない」 
しかし、これはCell誌へのインタビューで述べた


「実験をはじめた当初はES細胞やiPS細胞は扱っていませんでした。後になってコントロールとしてES細胞を培養していました。」


 という話と、相当のギャップがあるのではないでしょうか?
 
 若山氏が小保方氏の指導を受けて、STAP細胞の作製に成功したときは、まだES細胞はなかったでしょうし、NHKが報じたような、「ESと書かれた容器」などはもちろん当時はなかったでしょう。若山氏自身は、「実験をはじめた当初はES細胞やiPS細胞は扱っていませんでした」と思っていながら、若山研究室内で、実は若山氏の預かり知らぬところで、学生が勝手に小保方氏にES細胞を渡して、小保方氏がそれを保管していたのだとすると、よほど管理・監督が杜撰だったということの証左にもならないでしょうか?
 
ESと書かれた容器」の中身が、ES細胞かどうかは、まだ何ら検証されていないことは、前回書いたとおりです。特ダネ的に報じて注目されたNHKでも、次のようにかなり曖昧です。にもかかわらず、これの中身がES細胞だということがあたかも既定の事実であるかのように、皆論じています。マスコミが先走るのはまだしも、科学者がものを言うのにそんなことでいいのでしょうか・・・?
 
「実は、ES細胞とSTAP幹細胞は性質が非常によく似ているため、「ES」と書かれた容器の中の細胞が本当にES細胞かどうかを調べるのは簡単ではありません。」
「今回の分析結果について理化学研究所は、「小保方研究室で見つかったESと書かれたラベルの細胞とSTAP細胞から作ったという細胞の特徴が一致したのは事実だ。これだけでSTAP細胞がES細胞だったと結論づけることはできないが、今後さらに詳しく検証を進めていきたい」とコメントしています。」
 
 それに、若山氏らは、胎盤が光っているというES細胞では説明できない点を、(TS細胞との混合説ではTS細胞によるものということでしょうが)、血管が光るのを誤認したかのように述べていますが、この点は丹羽リーダーは記者会見で質問に答えています。最も関心のある部分だとして、自分の目で慎重に確認したと答えています(11:25~)
 
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胎盤に分化していることを確認しているのか? 血管が光っているのではなく、細胞が光っていることを。
 自分自身もその点は、実験に参画した上で最も強いモチベーションだったので、・・・GFPの自家蛍光の問題は、免疫染色等で確認すべきだとのご意見があったが、まさにそのような手段を用いて、かつ 胎盤実質細胞で発現するマーカーともキョーセンショクを以って、確かにSTAP細胞由来と思われるGFP陽性細胞が胎盤組織にインテグレートしていることを、切片を顕微鏡で自分の目で確認している。
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 他方、片瀬氏は、この切片を作ったのは小保方氏だったとして、その捏造を示唆しています(最後の部分)。
 
 それであれば、その切片は残っているのでしょうから、よく分析してみれば、白黒つくのではないでしょうか?(それとも、時間の経過で検証不能なのでしょうか?)
 
●こうやってみると、ES細胞捏造説ないしは、ES細胞・TS細胞混合説は
 
 ①それぞれの研究者がそれぞれの指摘をしてはいるものの、それらをすべ   て包含して整合性のある説明ができていないこと。
 ②捏造説を唱える者の過去の説明との齟齬があったり、他の者の説明とも   矛盾すること。
 ③その根拠となる部分は、まだろくに検証もされておらず、「小保方氏のすり  替え、偽装」という憶測が多分に入ったもので、そういうあまりにも材料が不  確定すぎる中で、確定的に断言するのは科学的とは思えないこと。
 
 等々の問題があり、これで、「ES細胞で決まりだ!」「世界三大不正だ!」と平気で言える科学者たちの神経が理解できません。小保方憎しの余り、冷静な思考ができなくなっているように感じます。
 捏造仮説を立てるのはもちろんいいのですが、それであれば仮説の検証のためには、きちんと確定した事実に基づいてひとつひとつ矛盾点を潰していくのが科学というものだと思っていましたが、そのようなことは見受けられないようです。