理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

耳を疑う朝日新聞報道―「STAP細胞、若山研究室由来の可能性も」?!

 7月5日、朝日新聞が、耳を疑うような報道を流しています。
 
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◎STAP細胞、若山研究室由来の可能性も―解析に誤りか
朝日新聞 2014750852
 STAP細胞論文をめぐり、主要著者の若山照彦山梨大学教授が発表したSTAP細胞にかかわる試料の解析結果が、誤っていた可能性があることが若山教授側への取材でわかった。「改めて詳細な解析結果を公表する」としている。
 
 STAP細胞は、若山教授がマウスを提供し、理化学研究所小保方晴子ユニットリーダーがそのマウスから作製したとされていた。若山教授は先月、解析結果をもとに「STAP細胞は自身が提供していないマウスからつくられていた」と説明していたが、若山研究室の関係者は、STAP細胞は若山研究室にあったマウスに由来する可能性を認めた。
 
 若山教授は6月16日に会見を開き、自身が保管していた試料について、第三者機関に依頼していた解析結果を発表した。STAP細胞と同じ遺伝情報を持つはずのSTAP幹細胞には、目印となる遺伝子が15番染色体に組み込まれていたと明らかにした。若山研究室では15番染色体にこの遺伝子のあるマウスは飼育したことがないとし、若山研究室が提供したマウスとは別のマウスで作製された疑いを示唆していた。
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 【7月6日補足】 ←この記事の続き部分があったので、そちらもお読みください。 

STAP細胞は若山研究室にあったマウスに由来する可能性を認めた?!
 
 それでは、先日の若山教授の最大のメッセージが崩れてしまいますが・・・??
 
「若山研究室の関係者」が、どういう経過でそういうことを述べたのかわかりませんが、「若山教授側」が「改めて詳細な解析結果を公表する」ということですので、その結果が注視されます。
 ネイチャー誌で論文撤回の理由の一つとして、著者が述べた第5点が間違っていたということになるのでしょうか?
 
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「(5) Article において、1 つのグループの STAP 幹細胞は、gfp遺伝子が 18番染色体に挿入された129/SvB6の遺伝背景を持つマウス(それぞれ若山研究室で維持されていたもの)を交配させた F1 ハイブリッドから作られた STAP 細胞に由来すると記載されていた。それら8株の STAP 幹細胞を解析したところ、129/SvB6の遺伝背景を持つものの、gfp遺伝子の挿入箇所が別の染色体部位であることが判明した。さらに、STAP細胞作製に使われたマウスではgfp 遺伝子がホモであったのに対し、STAP 幹細胞では gfp遺伝子でヘテロであった。これらの挿入された gfp遺伝子の部位は、若山研究室で維持されていたマウス及び ES 細胞のものと一致している。このように、ドナーマウスと報告された STAP 幹細胞では遺伝背景と遺伝子挿入部位に説明のつかない齟齬がある。
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もともとあの若山教授の発表には、妙なところがありました。「第三者機関」に依頼した解析結果とのことでしたが、その第三者機関の名前は明らかにしませんでした。しかし、NHKが、放射線医学総合研究所(放医研)だと報じていました。
 
 若山氏が会見で述べたことは、まことに不思議な内容で、趣旨は、
 
 ①本当は、自分と一緒にこの会見で第三者機関から発表してもらうつもりだったが  、それだと、自分の応援というようにとられるので中止した。
 ②どこの機関かはいうことはできない。
 ③三者機関の公正中立性を担保するために、私からは無報酬でやってもらった  。
 
 三者に検証してもらったのであれば、どこの機関が、どういう方法で検証をしたのかを発表するのが筋ですが、なぜか若山氏が発表することになりました。
 また、「公正中立を担保するために無報酬」というのは変です。この考え方は他の分野でもよく出てくる発想ですが、しっかりした仕事をしてもらう以上は報酬を払うのは当たり前であって、公正中立かどうかは、その検証なり実験なりが、然るべき一般的に確立されている方法で行われたか、バイアスがかかったものではないかが、外部から検証できるものであれば、担保できるものです。
 むしろ、無報酬のほうが、バイアスがかかっている可能性があります。ボランティアで参加するというのは、その活動にシンパシィを感じるからこそであり、若山氏に対して無報酬で協力するということは、逆にその公正中立性を疑わせかねません。だからこそ、どこの誰が、どういう経過、方法によって検証したのかということを明らかにする必要があるということです。
 
 おそらく、若山氏は機関そのものに依頼したのではなく、その機関に所属する研究者に依頼したということではないかと思いました。記者会見に臨む段階で、その機関と研究者との間で、その立場をめぐって調整がつかなかったのではないか?ということが、想像されたところです。
 しかし他方で、6月16日の理研の発表では、
 
山梨大学若山教授は第三者研究機関にSTAP 幹細胞株のDNA解析を依頼した。その情報は理研と共有され、理研 CDB保全されている STAP関連幹細胞株の解析を進めてきた。
 
 と書かれていますので、やはり機関自体に依頼したのだろうか?とも思われますし、合点がいかない部分です。いずれにしても、理研までがこうやって公式発表で述べる以上は、第三者機関の名称、検証者、検証内容・結果等については、その第三者機関の責任において公表されるべきでしょう。
 今回の朝日新聞の報道では、その第三者機関の検証内容が間違っていたらしい、ということなのですから尚更です。
 


●この若山氏の記者会見での発表内容である「小保方氏から渡されたSTAP細胞で作ったSTAP幹細胞の遺伝子の特徴が、小保方氏に渡したマウスのそれと一致しないため、小保方氏が作って若山氏側に渡された細胞は、若山研究室出自のマウスによるものではない」という点は、ネイチャー誌にも撤回理由のひとつとして挙げられたわけですが、このことと、小保方研究室に「ESと書かれた容器」が見つかって、そこにある細胞と、若山氏の手元にあるSTAP幹細胞の特徴が一致したという話を組み合わせた報道は、最初にNHKが流して注目されたものです。その手際のいい捏造を印象付けるストーリーのあるニュースは、注目度抜群でした。
 
 これで、小保方氏によるES細胞捏造説に弾みがついた印象ですが、しかし、そのESと書かれた容器」にある細胞が、実際にES細胞がどうかは誰も検証していませんし、当のNHKの記事でも、
 
「実は、ES細胞とSTAP幹細胞は性質が非常によく似ているため、「ES」と書かれた容器の中の細胞が本当にES細胞かどうかを調べるのは簡単ではありません。
このため理化学研究所では「これだけでSTAP細胞がES細胞だったと結論付けることはできないが、今後さらに詳しく検証を進めていきたい」とコメントしています。
 
 と留保をつけています。
 そして、他の報道で、若山氏の検証結果と「同様の」結果が、理研に保存されていたSTAP幹細胞の検証でも見出された、というものが流されました。
 若山氏のものが8株、理研のものが6株です。しかし、理研の6株についての検証結果は、上記の理研発表に書かれていますが、「同様の結果」ではなかったのではないでしょうか。
 
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 (略)
CDB では、若山氏から、STAP幹細胞の CAG-GFP遺伝子挿入位置の情報提供を受け、上記STAP幹細胞株の CAG-GFP遺伝子挿入部位を検証した。
 STAP幹細胞株AC129-1およびAC129-2は、18番染色体GFPの挿入を持つ若山研 GFP マウスと同じ部位に、1コピーの CAG-GFP遺伝子の挿入を持つことが判明した。かつ、相同染色体の両方に挿入されていることも若山研 GFPマウスと一致した。他方、FLS-3およびFLS-4 に関しては、15番染色体の片方の染色体に GFP遺伝子が挿入されていることが判明した。また、CAG-GFP遺伝子は複数コピーがタンデムに並んだ形で挿入されていた。
 これらの結果は若山研のサンプルの解析結果と一致した。
 
 解析結果に対する見解
1.若山氏が提供されたとされる光るマウス(CAG-GFP遺伝子保持マウス)から小保方氏がSTAP細胞を作成し、それを若山氏が受け取って樹立した STAP 幹細胞株に関して、保管されていたストックの解析から、CAG-GFP遺伝子の挿入状況の違いにより、STAP 幹細胞は2種類の異なる遺伝子型のマウス由来であることがわかった。一方は、若山氏が提供した(CAG-GFPを18番染色体にホモで持つ)もの、もう一方は由来不明(CAG-GFP を15番染色体にヘテロで多コピー持つ)のものであった。
 
2.CAG-GFP を15番染色体にヘテロで持つマウスがどこ由来なのか、そのマウス個体がSTAP細胞からSTAP幹細胞が樹立された時期に若山研(あるいは小保方研)に生存個体として存在していたのかは不明であり、今後、さらなる検証を進める。
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 検証した6株のうち2株は、若山研由来のものだという結果になっています。また、他の4株は、若山研にあったマウス由来のものなのか不明、というニュートラルな見解になっていて、若山氏のように、「若山研究室由来のマウスのものではない」と断定はしていません。
 ですから、マスコミ報道や科学者たちのコメントが、NHKニュースのように二つのファクトをつなぎ合わせて、これで「STAP細胞は、ES細胞の捏造だったのだ!」と断定的に言うには、二つの面でその科学的根拠はまだまだ脆弱と言わざるを得ないでしょう。
 一つは、若山研側がやはり、15番染色体にヘテロで持つマウスを小保方氏側に渡していたのかも知れないという可能性があるという点において。
 もう一つは、「ESと書かれた容器」にある細胞が、実際にES細胞がどうかわからないし、いつどういう経過でその容器が持ち込まれたのか不明だという点において。
 
 理研の発表とNHKへのコメントは、この2点についてはまだ不明であるという留保をつけたものであり、ニュートラルで冷静なものだったと言えるでしょう。
 朝日新聞の報道の具体的内容がどういうものなのかまだわかりませんが、
 
「若山研究室の関係者は、STAP細胞は若山研究室にあったマウスに由来する可能性を認めた。」
 ということは、「15番染色体にヘテロで持つマウスを小保方氏側に渡していたのかも知れない」ということなのかもしれません。
 
 しかし、もしそうだとすると、あの若山氏の記者会見内容と、それと組み合わせた「ESと書かれた容器」報道のインパクトは極めて大きかっただけに(例によって、中山敬一教授が総括コメントで、人為的混入可能性を強調して、ES細胞捏造説形成に一役買っています)、「ごめんなさい」で済む話ではなくなってきます。
 若山氏は、「研究室のマウスから作られた細胞ではない」と断言し、「ポケットにマウスを入れて持ち込まれたら分からない」とまで言って、小保方氏によるすり替え説を強く示唆したわけですから、その根拠が違ってこれば真っ青でしょう。
 
 そうなってくると、若山研究室において何が起きたのか? 一体、若山研究室側と小保方氏側との間でのマウスと細胞のやり取りをいつ誰がどのように行ったのか? 18番染色体に光るマーカー遺伝子を間違いなく挿入して渡した裏付けはあるのか? 誰がいつSTAP幹細胞の形成実験を行い、どうやって保管管理されていたのか? 「ESと書かれた容器」はいつ誰がどういう目的で持ち込んだのか? 中身の細胞は何なのか? といった一連の事実関係について(5WHについて)、詳細に裏付け調査がなされる必要性がますます高まります。


 こんな根幹となるファクトについて、誤って発表してしまうということは、それほど相互の連絡、チェックが行き届かない体制だったということを想像させるものでしょう。


※ この後の7月6日付の補足もご覧ください。