理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

5 理研調査委の不服申立却下決定の根本的間違い(5)―「実験条件」を箇所によって異なる範囲で使い分け、「捏造」の「故意」認定につなげる不合理さ

調査委の審査書を読んでいて、他にも奇妙に感じた箇所があります。「実験条件」という言葉を記述箇所によって内容を使い分けて、「故意」認定につなげていることです。
 
 まず、P8に次のように、「実験条件」が違う画像が使われている旨を述べています。
 
「(2)上記1、(1)において述べたとおり、捏造の範疇にあるか否かは、当該論文との関係において、当該データが論文に記載されている実験条件下で作成されたものであるか否かにより判断されるものである。
論文1においては、
酸処理の条件で得られたデータであると記載しながら、実際には機械的ストレスの条件下で得られたデータを使用している
 脾臓細胞から作成されたデータであると記載しながら、実際には骨髄細胞から作成されたデータを使用している
 生後1週の新生仔のマウスを使用したデータであると記載しながら、実際には生後3ないし4週齢の離乳後のマウスを使用している
という実験条件に反するデータが使用されている。
 
 ここでは、実験条件は、
 「酸処理か、機械的ストレスか」
 「脾臓細胞か、骨髄細胞か」
 「生後1週の新生マウスか、生後34週間のマウスか」
3点が「実験条件」として、挙げられています。
 
 それをよく念頭において、審査書の次の文章を少々長いですが、読んでみてください。
 
「ア 学位論文の画像データを使ったことを自ら発見し報告していることについて 笹井氏は、2 20日、不服申立て者も同席したヒアリングにおいて、本件画像データは、骨髄由来細胞と脾臓由来細胞による各実験の単なる取り違えである旨、説明した。両氏は連名で、同日及び 3 1 日付けの書面において、いずれも、脾臓由来ではなく骨髄由来の細胞を使ったことはミスである旨、述べていたが、実験条件に違いがあることは全く述べていなかったその後の調査により、本件画像データが、学位論文に由来するものであって、機械的ストレスによる実験で得られたものであることなどが判明した。

不服申立て者が、実験条件が異なるデータを使用したことについて初めて説明したのは、3 23 日のヒアリング時であった。それまでの間の 3 19 日、不服申立て者は、委員に対して対面での説明をしている。この説明は、資料等の確認のため、発生・再生科学総合研究センター(CDB)を訪れた委員に対して、同氏から学位論文について説明したいとの申出があったことにより行われたものである。同氏は、冒頭に学位論文に関して説明をしている。しかし、専ら、今回の画像データの取り違えに関する学位論文の審査者とのやり取りや学位論文の今後の取扱いに関する大学関係者とのやり取りに関するものにとどまり、実験条件が異なる画像データが使用された経緯に関する説明はなかった(なお、委員会では、同月 23日に予定していたヒアリングでデータの取り違えの経緯について説明を求めることとしていたため、19 日には、この点について説明を求めていない。)。不服申立て者は、笹井氏から、学位論文の画像データを使用した経緯について委員会に対して説明するように言われていた。

これらの状況は、2 20 日の説明等に付加して異なる実験条件下で得られた学位論文の画像データを使用したことについて自ら話すつもりがなかったことを示すものである。
この当時、インターネット上等で論文1について疑義があるとの指摘がなされており、早晩、画像データの取り違えについても指摘がなされるであろうことは十分予想されたところである(現に、その後、インターネット上等で指摘がなされている。)。指摘がなされる前に報告をしたことは認められるとしても、不服申立て者は、異なる実験条件下で得られたデータであることを知りながら、もしくは、その可能性があることを認識していたのにこれを明らかにせず、これを単なる取り違えであると説明していたと言わざるを得ない。
 
 要するに、「学位論文に掲載された画像だったことを申告しなかったことは、「酸処理」という実験条件ではなかったことを知っていながら隠す意図があったのだろう」という指摘です。
 ここの記述での「実験条件」とは、明らかに「酸処理か、機械的ストレスか」という1点に絞られています脾臓細胞か、骨髄細胞か」ということもまた実験条件のひとつであることを、調査委自らが前の部分で書きながら、ここでは「脾臓由来ではなく骨髄由来の細胞を使ったことはミスである旨、述べていたが、実験条件に違いがあることは全く述べていなかった。」と書き、由来細胞の点は実験条件には含めていません。これは、明らかな矛盾です。
 脾臓細胞の画像であるべきところを、骨髄細胞を使った画像を掲載してしまったことに気が付き、それを直ちに本来の脾臓細胞由来の画像に差し替え訂正したということは、由来細胞という「実験条件」が異なるものであったことにその時初めて気が付いたということですから、論文投稿時点で、実験条件に差がある誤った画像であることに気が付いていたはずがありません。
 審査書の記述は、実に不思議な論理展開をしています。論理を要約すると、
 
220日に異なる実験条件下で得られた学位論文に掲載されている画像を使ったことについて説明をしなかったことは、異なる実験条件下で得られたデータであることを知りながら、又は可能性を認識していたものである。」
 
 ということになりますが、なぜ学位論文掲載の画像であることを説明しなかったことを以て、異なる実験条件下のデータであることを、論文投稿当初の時点で認識していたということになるのでしょうか? 全く理解不能の論理展開です。
 
小保方氏及び笹井氏は、218日に画像の掲載ミスに気が付き、ヒアリング時の220日に、「骨髄由来細胞と脾臓由来細胞による各実験の単なる取り違えである旨説明」したわけですから、異なる実験条件の誤った画像を間違って掲載してしまったことを、その時点で初めて気が付き、差し替え依頼もし、調査委にも告知をしたということになります。
 
「異なる実験条件下で得られたデータであることを知りながら、もしくは、その可能性があることを認識していたのにこれを明らかにせず、」
 
と書いてありますが、それは事実に反することです。なぜ、機械的ストレスか酸処理かの違いをここで言わなかったことを以て、「異なる実験条件下のデータであることを明らかにせず」ということになるのでしょうか? 実験条件の差の全てを告知する必要は特段なく、ここで告知として必要なことは、「別の実験条件下の別実験による間違った画像だった」ということだったはずです。それは、実験条件の違いの一例として、由来細胞の違いを一つ挙げて告知するだけで、十分に目的を達しています。「酸処理」という点が中核的実験条件であるから、それを言わなかったのはおかしい、というは、牽強付会というものです。
「骨髄由来細胞と脾臓由来細胞による各実験の単なる取り違えである旨説明」を受けながら、その間違って掲載された骨髄由来細胞の画像は、いつの、どの実験のものなのかを確認もしなかったのだとすれば、調査委も随分と間の抜けた話です。
 
学位論文に掲載されていた画像かどうかということを告知することは、ここでの論点とは何らの関係もなく、あくまで、何らかの同一実験条件下のデータではない、掲載すべきでない誤りのものだった旨を告知すれば十分なはずです。それに、実際、直接の画像出所は、ラボミーティング用の資料だったわけであり、学位論文ではありません。原出所は、学生時代に撮影した画像でしたから、なおのこと、学位論文に掲載されていたことを告知する必然性もありませんし、正確でもありません。
 
●一点だけ、小保方氏の行動に違和感を感じたのは、小保方氏が、学位論文にも載っている画像を使ってしまっていたことに218日に気が付いて、笹井氏に相談する前に、早稲田大に、学位論文は公開扱いかどうか、という点を問い合わせたという点です。笹井氏も、相談を受けて、その点を確認した旨を述べています。全く時期も条件も違う実験の画像なのですから、誤った画像であることは明らかであり、早大に確認するまでもないように感じますが、想像するに、その掲載ミスに気が付いた瞬間に頭に浮かんだのは、既に使ったデータの「流用、使い回し」という別途の研究不正の類型に該当してしまうのではないか、との危惧だったのではないかと思われます。そこで、未公開扱いになる旨を確認して安心をしたのではないかと思います。
しかし、学生時代に撮った画像であることに気が付いたのですから、別実験条件下の別実験によるものであることは明らかです。だからこそ、翌日の219日には訂正画像をネイチャー誌に送付し、20日には、調査委のヒアリングで実験条件の異なる画像を掲載してしまっていたこと及びネイチャー誌に訂正画像を送ったことを告知したわけです。
 
3月」19日のヒアリングで、学位論文で使われた掲載画像に関して、早大とのやりとりを説明したということは、原出所は、学生時代に撮った画像であることを説明したということですから、同一実験の同一実験条件下のものではないことは当然の前提だったということです。それを、「同一実験条件下のものではない旨を説明しなかった」「説明するつもりがなかった」と断定しているのですから、それは文字通り、言いがかりというものです。

 
●前にも述べた通り、小保方氏の画像の掲載間違いは、「過失」の要件に該当することは明らかです。
 
「法律用語としての過失とは、ある事実を認識・予見することができたにもかかわらず、注意を怠って認識・予見しなかった心理状態、あるいは結果の回避が可能だったにもかかわらず、回避するための行為を怠ったことをいう。」
重過失とは、結果の予見が極めて容易な場合や、著しい注意義務違反のための結果を予見・回避しなかった場合をいう。重過失と単なる過失(軽過失)の別は一概に定めることはできず、具体的事例、例えば、責任主体の職業・地位、事故の発生状況等に照らして判断する必要がある。」(以上、ウィキペディアより)
 
 審査書における次の記述は、「過失」であることを自ら認めているようなものです。
 

「仮に、本件画像と画像 B が瓜二つであったとしても、前述のとおり、異なる実験で得られた本件画像データ等について、その由来を確認することなく使用することとし、画像取り替えに際してもその由来を確認していなかったこと、本件画像データを含むアセンブリされた画像が学位論文に由来するものである可能性があることを認識しながら、投稿していることに変わりはない。なお、画像 Bは、アセンブリされたものではない。いずれにしても、データの混入の危険性を無視してデータを使用したものであると評価せざるを得ない。」

掲載すべき画像を慎重にチェックしてさえいれば、そのままでは掲載ミスが生じることを認識・予見し、結果を回避することができたにもかかわらず、その注意を怠ったために、誤掲載という結果を招いた、ということであり、それがなぜ、架空のでっち上げの「捏造」などという、とんでもない話に飛躍するのか、理解に苦しみます。「結果の認容」などありえません。
それこそ、何が何でも、「捏造」認定を維持するために、事実認定と規程の解釈、定義設定を恣意的なものとするという害意を含んだ「悪意」によるものと思えます。
当初の調査委メンバーであれば、「結論を維持しないと威信が失墜する」という利害関係を有しますから、上級審的な審査請求的方式で、審査すべきでした。それは制度としての問題です。
 
 
●まとめると、
調査委の審査書は、「実験条件」の内容を、箇所によって異なる範囲で解釈しており、不合理。「酸処理か機械的ストレスか」のみが、実験条件ではなく、由来細胞、マウスの年齢も含むことは、調査委自ら書いている。
218日時点で、自ら掲載ミスに気が付き、(早大にも相談し)直ちに訂正画像を送付し、由来細胞に違いがあった旨を調査委に申告した事実が、何よりの実験条件の違いがあったことを、その時点で気が付いたことの何よりの証左である。由来細胞の違いは、調査委自ら、実験条件の違いとして含めて書いている。
319日に学位論文で使った画像であることを説明したのは、(学位論文画像が、学生時代に行なった別の実験条件下の別実験によるものであることは明らかであるから)実験条件の違いがあったことが大前提であり、「同一実験条件ではない旨を明らかにしなかった」とするのは、言いがかりに等しい。
以上から、別の実験での別の実験条件による画像を、218日の時点で初めて気が付いたことは明らかであり、調査委が述べる、論文投稿時点で、間違った画像であること又はその「可能性を認識」していたとの主張には、根拠がない。「結果の認容」はもちろんあり得ない。
小保方氏の掲載ミスは、「過失」の要件に典型的に当てはまる行為である。