理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

理研は初動対応を誤った―STAP細胞再現実験と論文画像加工等の事実解明とを一体として研究不正を判断する枠組みを作るべきだった

理研当局は、初動対応を誤ったと思います。改めて整理すると、
 
 論文の一部の画像を「捏造」「改竄」と認定することによって、研究全体が「捏造」「改竄」であるかの如き印象を対外的に与えてしまったこと。
 文科省ガイドラインは、研究自体の捏造、改竄を問うているものであり、その結論は、再現実験の成否と合わせて判断すべきであったこと。
 再現性は留保したままの論文の捏造、改竄認定というのは、極めてわかりにくく(従来なかったパターン)、丹羽氏らによる再現実験が成功した場合に、対応が難しくなりかねないこと。
 再現実験から小保方氏を排除したことによって(協力は得たいとしているが)、その実施が円滑に進むか不透明となったこと。それにより、本年10月中旬に各国出願移行期限が到来する特許出願が失効するおそれが高くなったこと。
 早々の時点で、論文上の一部ミスを以て、小保方氏への研究者失格的烙印を押したことにより、研究自体の再現性が確認できない段階で、その頭脳流出の可能性を高めたこと。 
6 150日通常かかるところを、わずか3週間程度で最初の報告書をだし、不服申立て後、同様の切り貼り行為をした委員長辞任や他の委員の疑惑がある中で、切り離して結論を早々に出したことにより、早々の幕引きを図ろうとしているという印象を強く与え、組織の信頼性を低下させたこと。  
                              等等

理研当局は、本件を最初に処理するに際しては、次のようなメッセージを発し、その枠組みの下に対応すべきだったと思います。
 
「本件STAP細胞論文について、大別して二つ問題が指摘されている。ひとつは、論文どおりには再現ができないという指摘、もうひとつは論文に掲載されている画像に不適切な加工が加えられているのではないか、記述が無断引用になっているのではないかという論文内容についての問題である。
 STAP細胞については、論文はその作成に関わった各研究者の責任により提出されているものではあるが、別途、理研も出願者の一人になって、国際特許申請をしているところであり、その面では当事者でもある。また、理研としてSTAP細胞の成功会見を主催したという意味での責任もある。
 他方、研究不正の問題については、文科省ガイドラインがあり、理研の研究不正規程もそれに準拠しているが、同ガイドラインの趣旨を踏まえれば、今回指摘されている2つの問題は、研究不正の有無を判断する上で切り離せないと考えている。
 
 再現性の点については、小保方氏がコツがあると主張しているだけでなく、他の論文当事者からも、「STAP現象があることを前提としなければ説明ができない点が少なからずある」旨の陳述や、「三回はSTAP細胞を実際に見た」との発言があったほか、論文発表前に、理研内部の別途の2人の研究者によって、第一段階までの作成には至ったことが確認されている。しかし他方で、第三段階のキメラマウスの製作に携わった論文著者から疑義が出されるなど、第三段階までの最終的な再現性については、現時点では不明な状態になっている。
 そこで、改めて、論文内容に即した再現実験をまず理研として行い、その結果をもとにして第三者機関に委託して追試を依頼することとしたい。再現実験に当たっては、当事者である小保方氏、笹井氏、丹羽氏らの他、論文当事者ではない研究者複数も加え、すべての経過を記録に残し、検証や追試に確実に耐えうるものとする。途中経過については、第三者のチェックを受けることとする。
 まずそのSTAP細胞の有無を再現によって明らかにすることが、その点に最大の関心を有する国民や社会に対する責務であると考えており、特許出願のタイミングとの関係でも急ぐ必要があると考えている。
 
 そして、平行して、もうひとつの問題である論文の画像の加工、記述の引用等の点については、まず、事実関係や経緯を詳細に把握することが大前提となるため、その解明のために、第三者機関としてSTAP論文調査委員会を発足させ、それらの事実関係や経緯(各研究者の分担関係を含む)を明らかにすることとする。
 
 研究不正に関する文科省ガイドラインやそれに準拠する理研規程の主眼は、再現性もないような架空、虚偽の要素がある研究だったのかどうかという点にあり、その点を見極めるためには、論文に即した実際の再現プロセスの確認と、問題指摘されている論文掲載の画像の配置、加工等の局面における故意による架空、虚偽の要素があったのかどうかという点の分析とを総合して検討・判断する必要がある。
 このため、論文に即したプロセスによる再現実験の実施と、指摘されている問題部分を中心とした論文作成に関する事実関係の整理とを、平行して至急行った上で、研究不正委員会において、研究自体が「捏造」、「改竄」と判断されるのか、それともその範疇までには含まれないにしても、不適切な面があったのか等の点について結論を出したいと考えている。」
 


●このような再現実験と論文の問題箇所の事実関係調査とを一体とした上で、研究不正の判断をする枠組みを設定することにより、次のような国民・科学界にとっても、理研にとっても大きな利点をもたらすことができたはずです。
 
1 最大の関心時であるSTAP細胞の有無について、小保方氏らも入れつつ客観性を担保しつつ、確認を速やかに進めることができること。


2 「再現実験に成功したけれど、論文は捏造、改竄があった」という理解できない構図に陥ることを回避することができること(=再現実験を成功させることにより、研究自体の不正認定は回避できること)。


3 特許出願の各国手続き移行を期限内に進めることができ、今後の世界的特許戦略に中心のひとつとして関わることができること。


4 再現実験を順調に進めるためにも小保方氏の協力が必要であり、その成功した暁には今後の大研究成果の展開のために尚更に小保方氏を留めておく必要があるところ、論文の不備のためだけのために捏造、改竄の烙印を押され、石持て追われるように日本から脱出を余儀なくされるというような研究者流出を防げること。
 
●改めて、理研や科学界に問いたいのですが、
 
質問1 もし、再現実験が成功した場合、論文の研究自体は正しかったということになりますが、その場合、今回の捏造・改竄の認定自体をどう評価し、研究者失格の烙印を押した小保方氏に対して、どのように接するつもりでしょうか? 
 
質問2 再現実験が成功したものの、今回の捏造・改竄認定により、研究者生命を断たれ、海外に流出した場合、その頭脳流出に対してどう考えるのでしょうか?
 
質問3 今回の捏造・改竄認定により、日本の社会、科学界から糾弾され、石もて追われるように海外の研究機関に移籍し、STAP細胞研究を結実させた場合、理研、日本の科学界、日本社会は、どうするつもりでしょうか?
 
質問4 小保方氏をはずして、再現実験に1年もかけて、結果的に再現実験に成功しても、国際特許出願の各国手続き移行期間は今年の10月中旬をもって切れます。その責任はどう取るのですか?
 
 
●小保方氏を非難・糾弾するようなことは、再現実験をやらせて失敗した後でもいいのです。今回の画像の加工、画像の取り違えは、研究の全体の流れからいえば、研究の本質とは関係ない矮小な話だと思います。改竄認定部分は、当初の2枚の生画像に差し替えるなり、合成の際のサイズ設定を正確にして、線を入れればすれば済む話であり、捏造認定部分は、20126月に撮影した本来画像に差し替えれば済む話であって、論文全体の研究が架空になったり虚偽になったりする次元のものではないはずです。だからこそ、理研自身も、論文に即して再現実験に取り組んでいるわけです。
 
確かに、小保方氏がやったことはほめられる話ではありませんし、データ管理の杜撰さ等は研究者としての初歩もわきまえていないのでないか、ということはその通りかもしれず、小保方氏としては抗弁できる余地はないでしょう。しかし、だからといって、それにつけこんで、一億総評論家となって(私も含めてですが)、相手が反論できないことをいいことに、人格否定の如き、人身攻撃的行為を好き放題に行なうようなことは、許されることではありません。有名税というには過酷過ぎます。「落ちた犬は叩け」を地で行くような、社会が一色になっての糾弾的行為は、ほとんど病理的にさえ感じられます。いや、これは病理でしょう。


かつてのオウム真理教サリン事件による破壊工作発覚前に発生した松本サリン事件が思い出されます。長野県警は、犯人として被害者の河野さんを逮捕しました。農薬を買って倉庫に貯めていたことから、それで毒ガスを作ったのだろう、というわけです。マスコミや国民は、河野さんが犯人だと思い込み、警察からのリークをもとに、重態となった奥さんとの夫婦仲の話や社会への恨み等々、勝手なストーリーを垂れ流しました。しかし、その後地下鉄サリン事件が発生し、オウム真理教の驚愕すべき破壊工作が明らかになり、松本サリン事件も実はオウムの所業だったということがわかって、河野さんの無実が明らかになりました。
しかし、ちょっと冷静に考えれば、河野さんを犯人にするには無理な材料が少なからずあったはずです。その買った農薬で、奥さんが吸ったガスが生成できるのか? 娘さんがいたのだから夫婦円満だったことはわかるはずであり、動機がないことがわかったのではないか? 直前に目撃された白ずくめの複数の男たち(=実際の犯人)を疑わなかったのか? 等々、怪しい材料がありました。しかし、そういう材料は、いったん、河野さんが犯人だと思い込んでしまうと、頭に入ってこないわけです。
 
●今回のSTAP細胞問題についても、マスコミも社会も、理研や調査委員会の発表を鵜呑みにせず、冷静に考えてもらいたいものです。STAP細胞が再現できないと言われている中、第一段階は再現に成功した理研研究者が2人いることは、小保方氏側の指摘を受けて、理研自身が認めたことです。理研は認めつつも、「第一段階だけであり、第三段階のキメラマウス作成まではやっていないので成功したとはいえない」と過小評価的発言をし、マスコミもそれに乗って小さい扱いにしていました。しかし、難しいのはこの第一段階のはずです。笹井氏が記者会見で資料を配って縷々述べたのも、この第一段階で失敗する要因、難しさでした。


 この点に関して、「死ぬ細胞が発する光を見誤ったのだろう」と否定し、初歩的勘違いであるかのように言う学者もいるようですが、他方で、ベテランの笹井氏のように「死ぬ細胞のものとは異なる」と述べ、丹羽氏にしても「3回は見た」といっていることからすれば、初歩的勘違いで思考停止するのはおかしなことです。理研広報が正式に、第一段階成功者が2人いることを認めている以上、初歩的勘違い説は除外されるはずです。もちろん、それ以外の見方もあるようですから、科学的議論を尽くせばいいわけで、初めから否定ありきの議論は、科学的には思えません。理研研究者2人が第一段階に成功したことを理研が認めたことは、笹井氏の会見での説明内容とともに、もっとニュースバリューがあったはずで、その取材要求も何もしないで放置しておくというのは理解に苦しみます。
 「STAP細胞はインチキだ!」と思い込んでしまったら最後、それに矛盾する情報は、意識的、無意識的に排除し、決して追求しようとしない。否定する材料を探すことによって心理的平衡を保とうとする、というのは、「認知的不協和」というよく知られた社会学の理論です。
 
 小保方氏に対して、「STAP細胞が簡単にできるというなら、とっとと再現して見せてみよ」と当たり前のようにいう人々も、常識を働かせれば、簡単ではないことはすぐわかるはずです。当然のことながら、実験するためには、研究器具がそろった研究室を利用できる環境と、資金とが必要です。理研への出入りを禁じられている小保方氏が、資金もない中で、どうやってそれに応えることができるというのでしょうか? その要求をするのであれば、理研に対して、「小保方氏に対して、第三者立会いの下に再現実験をさせて、その成否を明らかにさせよ」と言うのが筋というものです。
 
●この後の記事でまとまった形で述べようと思いますが、不服申立て却下の審査報告書は、データ管理の杜撰さ、実験ノートの不備、論文投稿に際してのチェック義務の懈怠等を捉えて、捏造認定に持っていっていますが、それはおかしなことです。
 それらの杜撰さ、不備、懈怠等によって、「あってはならない誤りをしてしまう」「注意をしていれば、防げた間違いを犯してしまう」ということは、まさに「過失」の定義に当てはまることです。「過失」は言うまでもなく、「故意」の反対です。
 
 調査委員長の渡部弁護士が中心となって書いたと思われる審査報告書の、法律的に緻密な検証を行なったような印象を強く与える内容に接して、思考停止するのではなく、実際に自分で双方の見解を読み込んでみて、評価をしてほしいものです。法律家が「明らかである」とか「言うまでもない」と言うのは法曹界の業界用語であり、そうやって切って捨てようとする箇所こそ、逆に弱みがある箇所であるということが、往々にしてあります(笑)。どこかの新聞が、今回の審査報告書は、これらの言辞が多用されていて、それほど小保方論文は論外なところが多いかのようなことを書いていましたが、そんな言辞に惑わされてはいけません。単なる業界用語です。前回指摘したように、実際、仙台地裁判決の都合の悪いところには触れていないではありませんか。
 
 もちろん、巷間一部でいわれているような、若山氏に対して、初めから別途のES細胞だとわかった上で、成果を偽装した・・・というのであれば、文字通りの悪質な研究詐欺ですから、罪万死に値する、というになりますが、そんな詐欺を働く動機がそもそもありませんし、まず考えられないでしょう。笹井氏は、ES細胞の混入は明確に否定していましたが、それについても更に科学的議論があるようですから、活発に行ってほしいものです。