理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

開き直って恥じないNHK―BPOの存在意義を実質的に否定

 
 6月会合の結果は、以下に書かれています。                    
 
 ◎NHK報告 

 ◎BPO意見 
 
 NHK報告は、BPOの決定を、実質的に、組織挙げて否定するものでした。 
 勧告に対する対応報告ではなく、BPOに対する全面的な反駁になっています。 
 いろいろ書いてありますが、流れは以下のようなことです。 
 
「経営委員会、中央放送番組審議会等、内部の各種会合でも、BPOの決定を真摯に受け止めるべきとの指摘もあったが、異論もあった。」というパターンの述べ方で、両論あったかのように書いていますが、経営委員会、中央放送番組審議会での、「きっちり反論せよ」「不当な人権侵害には当たらない」「不当な名誉棄損には当たらないと主張したことは評価したい」等のコメントを紹介しており、実質的にNHKの対応を支持するものであったと述べているものです。 
 その上で、改めて、人権侵害とは考えないという見解を述べ、締め括りとして、「決定は終わりではなく始まりだ」「放送局側も意見を述べ、BPOも間違いを認識している場合にはBPO側が学ばなくてはならないし、BPOが正しいなら放送局の中で定着させてもらはなくてはならない」という指摘を元委員長が述べているとしており、BPOが間違っていることを認めよ、と言わんばかりの結語となっています。 
 
 公共放送で(民放でも同じですが)、ここまでBPOを攻撃するとは驚くばかりです。文字通り、前代未聞です。 
 これに対して、BPO側は、淡々と冷静に反論しています。書いてある通りでしょう。 
 
■いくつかの点をコメントしたいと思います。 
 
1 NHKは初めから勧告に従うつもりはなかったこと。 

 このことは、外形的に明らかです。2月10日決定・勧告が公表され、NHKと小保方氏に通知されましたが、即日(数時間後)に、「人権侵害ではない」というコメントを出し、夜7時の総合テレビやラジオのニュースで流しています。 
 午後1時に通知されて4~5時間の間に決定内容を読み込んで分析し、NHKという組織としてのコメントをまとめることができるはずもなく、初めからコメントを内部で根回しの上、用意していたとみるのが自然です。 
 
2 強気の源泉は、経営委員会の長谷川三千子委員の支持にあると考えられること。 
 
事前に内部で調整の上、コメントを用意するとしても、普通であれば、人権侵害勧告を受けて、これを全否定するコメントを出すことはできるとは考え難いところです。勧告当日のああいう反論コメントをNHKという組織としての見解としてまとめるためには、理事会と経営委員会に事前に当然根回しをしているはずです。 
 その際、おそらく、より上位の経営委員会の長谷川三千子委員の支持を得たのでしょう。長谷川氏の人事は、百田尚樹氏のそれとともに官邸人事ですから、その発言の影響力には大きなものがあると思われます。経営委員長はJR九州の相談役の人であり、NHK会長の上田氏は、経営委員を経て就任した三菱商事の副社長だった人ですから、長谷川氏の意見に抗してどうこう判断するのは難しかったのではないかという気がします。 
 
3 都合のいい「切り取り」が過ぎること。 

 今回のNHKの報告では、各種会合での発言を紹介し、改めて材料を諸々示しながら「人権侵害ではない」と主張していますが、その発言や材料等の引用が、自らに都合よく切り取られています。 

(1)既に、勧告当日に即日発表したコメントでは、2人の少数意見の委員は、「人権侵害とはいえない」としている旨のべていますが、実際には、「人権侵害とまではいえない(が問題はある)」「放送倫理上の問題はある」というものでした。今回の報告の中でも、元BPO放送人権委員長の堀野紀氏の指摘を、「放送局側も意見、見方を示し、委員会側も間違ったと認識したなら学ばねばならない」と引用して紹介していますが、今回のBPOの意見書では、堀野氏は「決定に不満があっても、済んだことだと言って通り過ぎてしまうのでは委員会の存在意義はあまりない」とした上で、上記引用部分の前に「委員会決定に対して、単に真摯に受け止めます以上に、何らかの意見等があるのか、是非知りたい。我々も神様じゃないから~~~」という文言があるのであって、改善策や取り組みなどの対応をしなくてもいいと言っているものではない旨、指摘されています。 
 
(2)また報告では、2月の中央放送番組審議会での指摘概要が紹介されています(下記PDFのシート28以降。委員は、シート18にあります)。 
 これを読むとNHKの今回の報告でまとめた同審議会の指摘概要とは少々印象が異なります。かなりの意見は、勧告当日のNHKのコメントに批判的のように感じられます。しかし、一人の委員が、かなり断定的に「人権侵害にあたらないと主張したことを評価したい。人権侵害とは理解できない」と述べている委員の発言の紹介によって、印象を歪めてしまっているようです。もう一人、「BPOの決定に疑問を持ち、人権侵害とは言いきれないのではないか」と述べている委員がいますが、「番組をみていない」ままに述べているのですから、論外です。 
 
4 「そんなことは書いていない」と言い放って、強烈な印象誘導には頬かむり。
 
 今回改めて、「人権侵害ではない」といろいろ長々と書いていますが、よく読めば、噴飯ものの内容です。そのひとつが、「直接は、書いてもナレーションしてもいないのだから、印象だけで不正入手疑惑を提示したという認定はおかしい」という主張です。 
(1)今回のNHK報告では、BPOの勧告での「摘示事実」の考え方が、最高裁判決のそれを援用していることに言及しつつ、編集上の印象を最大の根拠として人権侵害と判断しているが、印象という個人差のあるものを軸として認定されるのは納得がいかないとしています。 
 NHKが言うのは要するに、最高裁の判決は、 

  【文字やナレーション】 + 【全体から受ける印象】等 

で総合的に判断すべきとしているのに、BPO勧告は、文字やナレーションでは何も述べていないのに、印象だけで「小保方氏が不正入手した疑惑がある」と判断したのはおかしいということです。 
 しかし、ああやって、「小保方氏の元にあるはずがないのに、なぜあるのだ?」という留学生の話を流しておいて、小保方氏の不正入手疑惑を提示していないとは、よくも言えたものです。それこそ、最高裁判決の考え方に即して、総合的に判断したということでしょう。 

(2)このNHKの主張の姑息なやり方は、あの笹井氏と小保方氏のメールの読み上げにおいても行われています。関心のある視聴者は、番組前に週刊誌でさかんに報じられていた両氏の不適切な関係のことが頭にあります。その上で、あの男女の妙な声色のナレーションを読み上げたことは、この不適切な関係の印象を増幅させようとする意図が明白でした。 
 しかし、NHK主張が容認されるのであれば、「両者は不適切な関係にあるとは一言も書いても言ってもいない。単にメールを読み上げただけだ」という言い逃れが正当化されてしまいます。この脚色部分は、坂井委員長から、「何の必要性もなく、一部の視聴者には男女の関係を連想させるもので、品位に欠ける」と強く批判されています。 
 
5 一審制ルールを無視し、議論に応じないのはBPOだと印象付けるやり口 

 BPOは、一審制です。迅速な人権救済の必要があるからこそ、結論に不満はあっても、それを尊重するという取り決めをした上で、参加しているはずです。 
 NHKは、その一審制をあえて無視し、元委員長の「決定は終わりではなく始まりだ」という言も切り取って引用し、あたかもこれから、NHK側の指摘を元に次の議論が始まるかのように(始められるべきかのように)述べたてています。 
 
「判断は表現の自由にも影響が出かねない非常に重いものです。事実関係を充分確認した上での判断をお願いしたいと考えます。そのために、放送局の側も、これまで以上に、資料の追加提出や再度のヒアリングなどにも積極的に協力させていただくべきと考えています。」(P5) 
 
 こうやって、NHKは、原点であるはずの「迅速な人権侵害救済」という本来目的を無視したまま、自らの正当性を、それこそ根拠なく、言い募り続けているという構図です。 
 BPOはもちろんとりあうはずもありません。そもそものBPOの発足経緯、位置づけ、役割等を説明し、NHKが今回、「改善策」も「取組み」も行わないことの不当性を指摘しています。淡々としすぎているようにも感じられ、もどかしい感がありますが、述べられていることはすべて適確で、正論です。 

 BPOはおそらく、これ以上は議論に応じるつもりはないでしょう。新しい材料もないのに議論に応じたら、一審制の下での決定・勧告の自己否定になってしまいます。NHKの非を指摘して、一連の手続きはすべて終了だと思います。これに対してNHKは、BPOと議論したかったが、BPOが応じなかったという説明をすることでしょう。 
 経営委員会の長谷川三千子委員は、「きっちりなすべき反論をすることで、そこから意見交換が展開し、よりよい番組づくりへのつながっていく。これからBPOと実りあるコミュニケーションを続けてほしい」と述べていましたから、NHKの事務方は、BPOが意見交換に応じなかったと報告して、BPOを悪者に仕立てるであろうことは容易に想像できます。そのうち、長谷川氏が、BPO批判を始めるかもしれません。

                            続く