BPOに対して一視聴者として意見を提出しました(3点)
1.NHKの反論について。
貴委員会は、朝日放送の「大阪市長選関連報道への申立て」に関する決定に対する同局広報のコメントを、「(真摯に受け止めるとの)一般的、常套的な用語を用いて本件放送の正当性をなお主張するものとも読み取れます。このため、委員の中には、当該局の本決定の内容と重大性を真摯に受け止める姿勢に疑念を抱くとの意見もありました。」と批判しています。
今回のNHKの反論コメントは、貴委員会の決定を正面から否定するものです。そして、2月14日のNHK経営委員会では、長谷川三千子委員がこの反論姿勢を「お手本」とまで称揚しています。しかし、BPOの設立趣旨は、政府当局からの介入を防ぎ放送界自らが律するというもののはずです。
当局の介入については、放送倫理委員会が、クローズアップ現代のやらせ問題に関する政府からの番組圧力を強く批判する意見書を2015年に公表しています。それならばNHKの今回の決定拒否と経営委員会の支持の姿勢は何なのか?BPOとしてNHKの姿勢を厳しく批判して然るべきと思います。さもなければ、迅速な人権侵害救済も達せられず、BPOの存立意義を決定的に損ないますから、今後の早急な対応を期待するものです。
2.ES細胞の不正入手疑惑について―なぜ、若山研に取材しないことを問題としないのか?
多数意見は、相当の根拠がないとしつつも、取材不足とはしていません。少数意見は、小保方氏が明確な説明をしていないから信じる相当性ありとしています。しかし、決定は、留学生は2012年10月に帰国していることに言及していますから、2013年3月の山梨大移転時には、その作製したES細胞は若山研の管理下にあったことを知っているはずです。それならば、移転後も理研に残されていた事情は、若山研に取材するのが初動対応であるはずです。「引越しの際に残していった不用品を引き取っただけ」との説明は、研究室移転の際にジャンク細胞が残される事は一般常識ですから、不明確な点はないと思います。移転時の直接の管理者だった若山研が、この説明を否定しているのであればまだわかりますが、その取材をしないまま疑惑を摘示しているという基本的問題性を指摘されていない事に大きな違和感を持ちます。この管理の構図が理解されれば、信じる相当性も認められなかったはずです。
3.電子メールの読み上げについて
最高裁の「一般視聴者」基準を適用していることは理解はできます。しかし、決定では、小保方氏が「世間の注目を集めていた」ことは認定していますから、全く何も知らない視聴者を「一般視聴者」として捉えるのではなく、注目していた世間の視聴者(週刊誌報道を読んでいた者)をそれと捉えてもよかったのではないかと思います。
坂井委員長が会見で言及されているように、時候の挨拶程度の意味のないやりとりだと認定し、また週刊誌報道があったことも認めているのであれば、男女の声色を使ってあえて挿入することの意味として、「不適切な関係にあることを示唆する目的があったのではないかと捉えられる可能性がある」という形で、「品位を欠く」という以上に、放送倫理違反の認定があり得たのではないかと感じます。