理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

エセ科学とレッテルを貼られていた常温核融合の再評価が加速との記事―STAP細胞の経過と酷似

 
 数日前の新聞に、エセ科学とのレッテルを貼られていた「常温核融合」が再評価されているとの記事があったので、ネットで検索すると、最近再現されつつあって、結構盛り上がっているということを知りました。
 日経新聞が、昨年7月と今年9月に、日経BP系の専門誌の記事の紹介の形で、詳しく報じていました。読み進むうちに、STAP細胞とダブって見えてくるのは、バイアスかかっているからでしょうか・・・?(笑)
 
 まずは記事のご紹介です。
 
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◎米で特許 再現成功で「常温核融合」、再評価が加速(日経2016/9/9 6:30
 
「かつて、凝縮集系核反応は「常温核融合(コールドフュージョン)」と呼ばれた。19893月に米ユタ大学で、二人の研究者がこの現象を発表し、世界的に脚光を浴びた。だが、ユタ大学での報告を受け、各国で一斉に追試が行われた結果、米欧の主要研究機関が1989年末までに否定的な見解を発表、日本でも経済産業省が立ち上げた検証プロジェクトの報告書で、1993年に「過剰熱を実証できない」との見解を示した。
 
しかし、その可能性を信じる一部の研究者たちが地道に研究を続け、徐々にこの現象の再現性が高まってきた。2010年頃から、米国やイタリア、イスラエルなどに、エネルギー利用を目的としたベンチャー企業が次々と生まれている。日本では凝縮集系核反応、米国では「低エネルギー核反応」という呼び名で、再評価する動きが出てきた。」
 
米国特許庁201511月、凝縮集系核反応に関する米研究者からの特許申請を初めて受理し、特許として成立させた。これまでは、現在の物理学では理論的に説明できない現象に関して、特許は認めていなかった。特許が成立した技術名は、「重水素とナノサイズの金属の加圧による過剰エンタルピー」で、ここでもナノ構造の金属加工が技術上のポイントになっている。」
 
米国議会は20165月、凝縮集系核反応の現状を国家安全保障の観点から評価するよう、国防省に対して要請しており、9月には報告書が出る予定だ。この要請に際し、米議会の委員会は、「仮に凝縮集系核反応が実用に移行した場合、革命的なエネルギー生産と蓄エネルギーの技術になる」とし、「現在、日本とイタリアが主導しており、ロシア、中国、イスラエル、インドが開発資源を投入しつつある」との認識を示している。」
 
「「常温核融合」から「凝縮集系核反応」に名前を変えても、依然としてこれらの研究分野を“似非科学”と見る研究者は多い。そうした見方の根底には、現在の物理学で説明できないという弱みがある。特に低温での核融合反応に際し、陽子間に働く反発力(クーロン斥力)をいかに克服しているのか、粒子や放射線を出さない核反応が可能なのか、という問いに応えられる新理論が構築できていないのが実態だ。
 とはいえ、説明できる理論がまったく見えないわけではない。2つの元素間の反応ではなく、複数の元素が同時に関与して起こる「多体反応」による現象であることは、多くの理論研究者の共通認識になっている。」
 
 
◎「試験管内の太陽」 似非科学のレッテル外れ再び熱気(日経2015/7/1 6:30
 
「軽い元素が融合して重い核種に変わる「核融合」は、その際に膨大なエネルギーを放出する。太陽の輝きの源泉だ。それを発電システムに活用する「核融合炉」の実用化を目指し、フランスや日本などは、国際協力の下で「ITER(国際熱核融合実験炉)」の建設を進めている。核融合炉を実現するには、1億℃以上のプラズマ状態の反応場が必要になる。研究の主力は、巨大なコイルによって磁場で閉じ込めておく手法だが、当初の目標に比べ実用化は大幅に遅れている。」
 
常温核融合では、こうした大がかりな施設が不要で、基本的には水の電気分解と同じような簡単な装置で核融合が実現できるとされ、「試験管の中の太陽」とも呼ばれた。
 だが、ユタ大学での報告を受け、各国で一斉に追試が行われた結果、米欧の主要研究機関が1989年末までに否定的な見解を発表、日本でも経済産業省が立ち上げた検証プロジェクトの報告書で、1993年に「過剰熱を実証できない」との見解を示した。何よりも、実験の多くで、ほとんど中性子放射線を出さないことも含め、現在の物理学で説明できないことが、懐疑的な見方の根底にある。
 
こうしたなか、常温核融合似非科学とのレッテルを張られ、ほとんどの研究が打ち切られた。しかし、一部の研究者たちはその可能性を信じ、「固体内核反応」「低エネルギー核反応」、そして「凝集系核反応」などの名称で地道な研究を国内外で続けてきた。その結果、徐々にこの現象の再現性が高まり、2010年頃から、米国やイタリア、イスラエルなどに、エネルギー利用を目的としたベンチャー企業が次々と生まれている。」
 
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ウィキペディアをみると、また面白く、
 
「多くの学会の権威者より全面的に否定されることとなった。」
「ネイチャー、サイエンスなどでは、常温核融合関連の論文掲載を拒否している。」
実施された追試の圧倒的多数では核融合反応や入力以上のエネルギー発生が観測できなかった事、追試に成功したと報告された条件でも現象が再現しない事、理論的にはありえない現象であることなどから、電気分解反応で生じた発熱量の測定を誤ったのではないかと考えられた。アメリカエネルギー省は同年秋に、「現象がおきたという根拠はない」とする常温核融合調査報告書を発表した。また、当時の東京大学学長で原子核物理学者である有馬朗人が「もし常温核融合が真の科学的現象ならば坊主になる」と発言したとされた。」
 
 とあります。
 
■経過パターンがSTAP細胞とよく似ています。
 
・発表当初、世界的に脚光浴びた。
核融合は、巨大なプラントと巨額のコストを要するが、常温核融合は水の電気分
 解と同じように簡単な装置で再現できる(=パラダイムシフト)。
 ・しかし、追試しても再現されず、世界の主要研究機関は否定的見解が大勢となっ
  た。物理学の権威者は全面的に否定した。
 ・物理学で理論的に説明できないため、エセ科学とのレッテルを貼られ、ほとんど
  の研究は打ち切られた。
 ・しかし、その後も可能性を信じる一部の研究者は地道に研究を続け、徐々に再
  現性が高まっていった。
 ・2010年頃から世界各地のベンチャー企業が生まれていった。
 ・201511月、それまで特許を認めてこなかった米国特許庁は、特許を初めて成
  立させた。米国議会も、20165月には国防総省に対して安全保障の観点から
  評価するよう要請した。
 ・ずっと物理学の理論では説明できないといわれて来たが、少しずつ理論も見えて
  きつつある。
 
 少なくとも、「パラダイムシフト的成果として脚光を浴びたが、誰も再現できず、エセ科学とのレッテルを貼られた」というところまでは同じでしょう。
電気分解反応で生じた発熱量の測定を誤ったのではないかと考えられた。」などというところは、「ES細胞を混入させたのだろう、コンタミがあったのだろう」という話とダブって、思わず笑ってしまいました。
 
 あと、「一部の研究者は可能性を信じて研究を続け」というところや、「国防総省が評価」「ベンチャー企業」というところも、多少は重なっています。特許申請が、再現されていないからということで最初の拒絶理由通知を受けたところも、ダブって見えます。
 
STAP細胞も、検証実験において、小保方氏のパートは一定の有意な結果が出ているわけですし、ES細胞では整合的な説明ができない事象であることは依然としてあるわけですし、何より、生物学の培養系の実験では、再現が微妙な環境条件で左右されて難しいことは周知の事実とのことですから、地道に取り組んでいけば、新しい成果も見えてくるものと期待したいところです。
 
「生物学の培養系の実験では、再現が微妙な環境条件で左右されて難しい」ということは、若山氏がインタビューで具体的に述べていたことですし、同様のことを述べる専門家もいました。
 
同様のことを言う人は他にいないのだろうか?と思ってずっと気に掛けていたのですが、他のブログでもしばしば紹介されている和戸川純氏(生物系研究がご専門の由)の「夢と現実のエッセイ評論」というブログにある「小保方晴子が愛するSTAP細胞 」と題する記事で、次のような記述を見つけました(この記事は、素人でもとてもわかりやすく、含蓄のある内容だと感じます)。
 
「実験条件には変数が無数にあるが、(小保方氏は)そのようなことは、気に留めなかったのではないか。
厳密にコントロールしなければ変わってしまう変数には、以下のようなものがある。この小さな変数の一つひとつが、試験管内で、細胞の機能に決定的な影響を与える。
マウスのからだから材料にする細胞を取り出すときの洗浄の条件(遠心機の回転やピペッティング);細胞を処理する弱酸性溶液のpHの微妙な変化(放っておけばpHは変わってしまう);実験室の室温;培養液添加試薬の秤量のぶれ;細胞を孵卵器に入れたときの培養時間のぶれ;などなど。
実験過程の変数が、正確にコントロールされていなかったならば、STAP細胞の作成に200回成功したとしても、すべてに同じ条件を適用しなかったことになってしまう。
Natureの論文には現象を書いたが、最良の作成方法の詳細については今後の論文で書く、と小保方は言った。200回の作成に共通する実験条件が不確かなことが、そのような発言になった、と私は推測する。」
 
「生物進化の様相を考慮すると、細胞がそれまで順応していた環境とは異なる環境に、細胞を置くことによって、細胞を初期化できると思われる。新しい環境に適応した細胞(その集合体は個体)を生み出すために、細胞が万能性を獲得すると考えることに、無理はない。あらゆる物理・化学的な環境変化が、万能性獲得のための細胞へのストレスになり得る。
実験室のスケールで、細胞が進化を通して得た能力の確認をするモデルになるのが、STAP細胞の作成と考えることができる。溶液の酸性化のみならず、溶液のイオン・塩・アミノ酸濃度を生理的な範囲からずらすことによっても、万能細胞を作れるかもしれない。培養温度の上昇または下降や、放射線照射、振動など、いろいろな物理的刺激も有効かもしれない。培養時間の経過と共に、培養液中に細胞の代謝産物が増えるが、それも刺激の一種になって不思議ではない。
 細胞を洗浄するときに、細胞が入った溶液を細いピペットで攪拌する。攪拌のときの手の力の入れ方を、客観的に数字で表現することはできない。
個々の実験者の筋力が異なるだけではなく、一人の研究者の力の入れ方が、毎回完全に同じになることは、あり得ないからだ。バカンティが、細胞を毛細管に通すことを勧めているが、ピペッティングは、まさにそのようなコントロールができない物理的刺激になる。
 このピペッティングの例でも分かるように、あらゆる刺激が万能性誘発の原因になるとすると、実験が極めて難しくなる。STAP細胞作成の最適条件を検討するときに、極端に多様な実験条件を、正確にコントロールしなければならないからだ。酸性化の影響を調べるには、溶液の酸性度以外のすべての条件を、一定に保たなければならない。
 再現性試験の難しいことが、私の上のような推測の正しさを示唆している。
他の研究室で、あらゆる物理・化学的条件を小保方の研究室と同一にすることは、不可能だ。器具の操作には人間ファクターが入るので、そこでも条件を一定にはできない。それを小保方は経験的に知っていて、「コツ」という言い方をしたと思われる。からだで覚えたその「コツ」を、他人に明確に説明するのは困難だ。」
 
理研での生物学の専門家ならば、こういう「周知の事実」を理解しているはずなのに、それを社会に説明しようともせず、あえて小保方氏参加の検証実験を多くの制約ある環境下で強いるという、「こういうのは科学ではない」(相澤氏)やり方で行わせて、再現できなかったから、やっぱりSTAP細胞はないのだ、と断定して既成事実化しようとする科学界の姿勢には、多大な疑問を感じざるを得ません。

ノーベル賞を受賞した大隅良典氏が解明した、細胞が飢餓状態に置かれた場合に生き残るための「オートファジー」現象からは、極限状態におかれた細胞の生き残り現象としてのSTAP現象をどうしても連想してしまいます。
めった切りされても個体として甦るプラナリアやイモリなどの驚異的な再生能力の謎も解明されているわけではないですが、そこには現在の知見では未解明の何かの原理があるはずです。
上記の和戸川純氏は、次のように述べておられます。
 
「私は、STAP細胞のような万能細胞があっても不思議ではない、と考える。
このサイトの進化論関連のエッセイ評論に何度も書いたが、遺伝子は数が少なく(人類で2万2000個、ある種の植物と同じ)、とても安定していて保守的だ。30億対の塩基配列で2本鎖DNAが構築されているが、遺伝子として機能している部分はたった2%に過ぎない。しかも、人とチンパンジーの間のDNA配列の違いは、1~2%だ。
さらに、これも繰り返し書いたことだが、次々と襲いかかる絶滅の危機を生きのびるために、生物は巧妙なメカニズムを作り上げた。環境の激変によって遺伝子がダメージを受けないように、遺伝子を安定化させると同時に、細胞を作り上げるまでの遺伝子発現の過程を、極端に柔軟にした。
この柔軟性によって、超新星爆発によるγ線照射、隕石落下、大噴火などの、瞬間的に発生する絶滅の危機を乗り越えてきた。そればかりか、危機を進化につなげる能力まで獲得した。
 その柔軟性は、DNA鎖の遺伝子以外の部分によって担われている。DNA配列中の97~98%の部分で柔軟性を確保している、と思われる。このDNA鎖の大部分を占める、いわゆるジャンク領域の機能の大部分を、私たちはまだ知らない。
小保方自身が意識しているかどうかはともかく、 小保方の研究の可能性とリスク(困難さ)は、この進化によって培われた遺伝子発現の高度の柔軟性と、直接に関係している。」
 
生命現象には、未知の部分がまだまだ多分にあるということでしょう。「何百年にもわたる細胞生物学の歴史」といっても、大海の中の雨の一滴なのではないでしょうか。だからこそ、生物学の研究者に皆さんも、その研究の世界に魅入られているのでしょう。
 
物理学の理論では説明できないと言われながら、「入力以上のエネルギー発生」という現象が実際に生じていることが確認されつつある常温核融合のように、ネイチャーが当初掲載拒否した際の査読コメントに言う「何百年にもわたる細胞生物学の歴史を愚弄している」(※)という生物学の常識の中で、「刺激による細胞の初期化」という常識外の現象も、少しずつ再現されていき、いずれ認知されるときが来ることを期待したいものです。

※ この査読コメントについて、毎日新聞の須田記者は、スクープ的扱いで、小保方氏の創作であるかのように書いていますが(『捏造の科学者』p305)、小保方氏の会見での発言より以前の時点(20143月)で、若山氏自身が文藝春秋のインタビューで言及しています。メジャーな月刊誌のその記事は当然読んでいるはずであり、若山氏にはその点の確認の取材もせずに、小保方氏が虚偽の査読コメントを述べたかのように書くのはフェアではないでしょう。
 
 
■なお、常温核融合の研究で現在リードしているのは、日本とイタリアだそうです。日本では、東北大と三菱重工業が貢献している由で、もともとの先駆者は、北大の水野忠彦博士と阪大の荒田吉明名誉教授とのことです。
 昨年、特許を世界で初めて取得したのは、米国企業だそうです。STAP細胞が再評価されるとき、全体の研究の構図はどうなっているのでしょうか・・・。


【補足】
 武田徹さんという学者の方が、2014年4月時点で、産経新聞
 という記事を投稿されていたそうです。今、検索していて気が付きました。