理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

若山氏のノーコメント状態や、ES細胞混入との「科学的決着」に、冷水をかける可能性がある今後の展開

 
 若山氏のノーコメント状態や、ES細胞混入との「科学的決着」に、冷水をかける可能性がある今後の展開としては、2つの可能性があるのではないかと思います。
 一つはBPOの決定であり、一つは小保方氏側による名誉棄損訴訟です。
 
 第一のBPOの決定ですが、今月19日に開催される会合又は次回会合では、おそらく起草作業入りするのではないかと思います。
 基本的には、小保方氏弁護団側から提起されている論点に即して、その適否について評価がなされることになります。その論点は、以下の通りです。
 
 ただ、BPOは裁判とは異なり、申立人の主張以外にも委員の判断で、関連する倫理上、人権上の問題指摘もあり得ます。
 以前にも書きましたが、申立ての内容は、桂調査委の結論の是非自体には直接触れることはなく(=委員たちが、科学的見解の是非を直接判断することを迫ることなく)、外形的に検証可能な点を中心に人権侵害、放送倫理上の問題点を指摘しているという点で、巧みな持って行き方をしていると思います。
 その中で、「「捏造」ス トーリーからはずれる「都合の悪い材料」には触れないで作られた本件番組」という主張をしています。これは直接的には、若山氏の「僕の研究室にはいなかったマウス」という6月の記者会見での発表が撤回されたことを指しています。しかし、4月の理研会見で、笹井氏によるES細胞では説明できない事象についての詳しい指摘や、丹羽氏のSTAP細胞作製過程の観察についての発言、あるいは2月時点における若山氏のES細胞ではないとのインタビュー発言等についても、NHKの番組構成の上では「都合の悪い材料」であり、これらに全く触れることがなかったということも、外形的に把握できる事実です。それ自体、放送倫理の上で、大きな問題として指摘される可能性は大きいでしょう。
 そのような指摘がなされる場合には、放送倫理の上では、放送内容として、一定のストーリーが初めにあり、それに「都合の悪い材料」を取り上げなかったという点での問題指摘になるわけですが、それは同時に、それと同じ構図で科学コミュニティが「科学的結論」を出して済ましていることに対する問題提起にもなり得ると思います。


STAP現象は整合的に説明できない」「再現ができなかった」「あれが何だったのかはわからない」というところで留まっているならばいいのですが(丹羽氏はそういうスタンスです)、その段階から更に踏み込んで、「あれはES細胞だった」というところまでほぼ断言したわけですから、それは別途の主張として、すべての反証材料と思われる点に対して整合的説明ができなければなりません。容易なはずの、残存試料による再現実験も行っていません(研究「犯罪捜査」であれば、当然行われて然るべきです。)。しかしそれらの整合的説明も再現実験もしないまま、「専門家による科学コミュニティが結論を出したのだから決着済み」という姿勢に対して、非専門家から疑義が呈されているわけです。それがBPOでの決定において、実質的に同様の疑義が呈されることにもなる可能性は多分にあるでしょう。
その時、科学コミュニティはどう説明するのでしょうか? 南シナ海に関する国際仲裁裁判の判決を無視・非難する中国のように、「部外者、素人の言うことは無視する」とでも述べるのでしょうか?
 
しかし、BPOが決定・勧告を出して、それだけで終わるわけではありません。そこから、NHKにおいて第三者委員会が立ち上がります。そこで、なぜ、このような偏向番組が企画され放映されたかという詳しい事実関係の調査と再発防止策の策定がなされます。その第三者委員会は、BPOの放送倫理委員会や放送人権委員会のように、弁護士や識者で構成されると思います。そこで、NHKの取材過程の検証を通じて、科学コミュニティや理研の判断、発信内容が、NHKの取材陣に与えた影響も間接的に検証されることになるでしょう。
 もう少し踏み込んで言えば、科学コミュニティの不十分な「科学的検証・結論」が、小保方氏への人権侵害に影響を与えた、という構図が描かれる可能性もないわけではないと思います。
 
科学コミュニティや理研に説明責任が生じるのと同じく、若山氏にも説明責任が生じることになるでしょう。NHKスペシャルでは、Li氏の細胞の件について、どうやってあのような番組構成になったのかが検証されることになります。
若山氏や若山研に、Li氏やその研究のこれまでの経過と今後の山梨大での予定、山梨大への移転時のLi氏細胞の扱い等を取材したのか? その際、若山氏らは何と答えたのか?といった基本的事実関係について検証されることになるでしょう。取材していなかったら論外ですが、取材していたのであれば、小保方氏の窃盗容疑での告発にも関係する若山氏の取材応答内容が明らかになると思われます。それは大きな注目を集めることになるでしょう。
 


第二の展開可能性は、小保方氏による石川氏に対する名誉棄損訴訟の提起です。
おそらく、提起するとすれば、BPOが決着した後になるのではないかと思います。これは、BPOでの人権侵害、放送倫理違反の決定における事実認定がそのまま名誉棄損の立証の上での証拠に使えるので負担が少なくて済むことと、BPOは裁判での係争中の案件は取り扱わないというルールがあるためです(NHKに対して直接争うわけではなくとも、争点が重複する石川氏への訴訟があると、係争中案件と見做される可能性がないわけではないと思われます)。
石川氏への名誉棄損訴訟では、若山氏だけでなく、若山氏夫人の清香氏も関係してきます。
 石川氏は、山梨大に若山氏及び若山研を訪問して、多くの証言・証拠を得て告発に踏み切ったとしています。告発対象は、Li氏の細胞と若山夫人が作製したという細胞であることは、石川氏自身が明らかにしています。窃盗容疑については、神戸地検が「事件の発生自体疑わしい事案」との異例のコメントを付けて嫌疑不十分で不起訴にしていますから、石川氏には、最初の告発で小保方氏が地位と名誉ほしさにES細胞を盗んで捏造を働いたという告発内容が事実であったこと、又は事実であったと信ずるに足りる相当の理由があったことを証明する挙証責任があります。
 石川氏は、若山研を訪問して、多くの証言・証拠を得たと言っているのですから、それが「事実であったと信ずるに足りる相当の理由」と抗弁することになり、若山夫妻、若山研がどう説明したのかが石川氏の説明の上での焦点になってきます。
 
 また、併せて、小保方氏側からは、兵庫県警の捜査資料が証拠として申請されることになるでしょう。兵庫県警の捜査資料は、1年以上かけた多くの関係者からの事情聴取を含めて事実関係を積み重ねた貴重な一級資料です。民事事件の訴訟で、それに密接に関連する刑事事件の捜査資料の開示は認められていますから、そこで若山夫妻からの事情聴取内容も含めて、明らかになることでしょう。その辺のことは、以下のブログ記事で詳しく書きました。
 
 いずれにしても、BPO決定後の展開や、石川氏への名誉棄損訴訟の提起後の展開によって、若山夫妻が沈黙を保ち、ノーコメントと続けることは許されないでしょうし、番組の検証や訴訟上の証拠によって、若山夫妻が何を語ったのかが明らかにされることになると思われます。
 次の記事で書いたような詳細な事情聴取が、若山夫妻や若山研メンバー等になされていると思います。

 また、名誉棄損訴訟が提起されれば、証人尋問の対象になるのは確実ですから、裁判所から呼び出し状がきて、出頭義務、宣誓義務、証言義務が発生します。

 小保方氏がデータを出さない等で説明責任を果たさないということで非難されますが、石川氏による窃盗容疑での刑事告発に関して、若山夫妻と若山研とがノーコメントで説明をしないということについては、なぜか問題視されません。

 刑事告発は文字通り、刑事事件の被疑者だと小保方氏を名指しする話であり、その証拠は若山研を訪問して詳しく話を聞いて揃えたと石川氏は述べているのですから、もし石川氏の告発理由や事実認識が違うのであれば、直ちにそのことを説明することが社会的責務であり、人としての「道」です。しかも、その窃盗対象が、小保方氏が若山研移転時に(ジャンク細胞として)残されていたと説明するLi氏の細胞であり、若山夫人が作製したという細胞なのですから、若山夫妻は直接の当事者として説明する責任があるのは当然のことです。窃盗は、被害者があって成り立つものであり、石川氏は、若山研や若山夫妻が被害者だとして告発しているということですから、その被害者が何も述べないで済むわけがありません。
 このことは、「一研究者」ブログの管理人さんが、当初から指摘していたことですが、その点は全く同感でした。最終的に、「事件の発生自体疑わしい事案」として不起訴となったわけですから、石川氏及び若山夫妻の説明責任の大きさは、なお大きなものとなっています(若山研で証拠を集めたとしてなされた石川氏の告発に対して、若山夫妻らが沈黙を保っていることは、石川氏と共犯的関係にある=幇助、教唆をしていたのだ、というメッセージと解釈されつつあります)


 こういうことは、社会の一般常識だと思いますが、若山氏の行為であれば、その一般常識に反するものであっても、何も批判されないというのは、STAP細胞事件で一貫する事象であり、まことに不思議な限りです。
 STAP細胞事件において「善玉」と位置付けられた若山氏の言動は、論文撤回理由となった「事実」が実は間違っていたという重大事案についても、非難もされず、記者会見要求もされず済んでしまいました。
 
 「科学コミュニティで専門家が詳細に検証して決着させた話を、部外の非専門家がどうこうコメントすべきではない」といった類いのコメントがしばしばなされるようですが、全体の構図を客観的にみれば、黙れと言う方が無理というものです。これで決着と信じている?科学コミュニティの異様さが際立ってきている感があります。


※ 今、関係の検索をしていたら、たまたま以下の記事がヒットしました。
 小保方氏及びSTAP細胞研究に対して、常に批判的にコメントしてきた東大特任教授の上昌弘氏によるものです。
 神戸地検が「事件の発生自体疑わしい事案」として不起訴としたことについて、どうコメントしているのでしょう・・・?

 ◎「刑事告発でぎりぎり自律を示した理研と科学界」