理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

【記事に一部誤りあり】論文撤回の決定的要因は自己点検委資料の若山氏へのリーク・保有だった?!―米国側著者がむしろ撤回を急いだ

【注:一部記事取消】
下記記事にコメントありがとうございます。「(米国側著者に)言ってきた」のは「若山氏」、という趣旨のところを、私が勘違いしたようです。たしかに、米国側著者と撤回交渉を頭越しにしていたのは若山氏だと、別の箇所で書いてありますので、その中のやりとりなのでしょうね。
しかしそれにしても、若山氏が、自分が自己点検委の資料を持っている旨を伝えて、それを撤回を急ぐ理由にするというのは、妙な話ですね。若山氏が点検委資料を持つべき立場に本来はないわけですし、(ネイチャーとの関係での)守秘義務違反の恐れがあることを自認しているという構図になりますから、それでもそれを理由にするということに、「何としても撤回する!」という若山氏の意思が浮き彫りになっています。
以下、勘違いによる部分を斜線と取消線にしておきます。失礼しました。

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自己点検委員会の問題が、小保方氏の手記によって改めて浮上してきた感があります。
改革委の蔭に隠れて、実務的な印象があって、改革委とその報告書ほどには注目してこなかったのですが、よくよくいろいろな疑問に感じた材料を思い起こし、その上で小保方氏の手記を読むと、自己点検委とその報告書もまた、改革委報告書に勝るとも劣らない問題性をはらんでいる・・・と思い至りました。
 
そのことを整理して別途書きたいと思いますが、その前に一点だけ。
ネイチャー論文撤回に、小保方氏、米国側の共著者を含めて最終的に同意した理由として、
 
①若山氏による「自分の研究室にはいないマウスから作成された」という
 誤った分析。
②STAP幹細胞のデータの一部が、ネイチャー誌側の指示により、レターか
 らアーティクルに移されていたことにより、アーティクルにSTAP幹細胞
 のデータが入ってしまっていたこと。
 
 の2点だと理解していましたが、小保方氏の手記をよくよく読むと、それだけではなかったのであり、より決定的理由があったということが示されています。それは、自己点検委員会資料の若山氏への漏洩だとのことです。わずか2~3行の記述ですが、すぐその後の、「同じ調査をされる立場の著者の中でも、調査する側の情報を持っている人がいるという異常な状態が作り上げられていることを知った。」という箇所に気を取られて読み流してしまっていました。
 p181~に、次のように書かれています。
 
5月中旬から早稲田大学の調査の対応にも追われた。資料提出のほかにヒアリングの対応もあり、ヒアリングは弁護士事務所で行われた。マスコミ対策のために移動できる範囲はかなり狭まっていた。理研の調査委員会のような高圧的で一方的な決めつけはなく、丁寧な印象を受けたが、すでに3年以上を経過しており細かなところはよく覚えていなかった。一つひとつの確認作業を、時聞をかけて行ってくれたが、もう気力を保てる日は少なくなっていた。
そんな時にアメリカの先生から電話があり、「若山先生が、著者は持っていないはずの自己点検委員会の資料を所持しているようで、それが著者以外から通報されると今後ネイチャーに投稿できなくなるかもしれないので論文の撤回を急ぎたいと言ってきた」という話を聞いた。同じ調査をされる立場の著者の中でも、調査する側の情報を持っている人がいるという異常な状態が作り上げられていることを知った。」p181182
 
この米国側の著者が懸念しているのは、「ある研究者の論文の不正調査の資料をその研究者自身が入手・閲読等していること自体が別途の意味で不正だ」ということでしょうか?たしかに通常ではあり得ないことだと思いますが、それが露見すると、論文の投稿が今後できなくなるというのは、研究不正と同等かそれ以上のペナルティだと感じます。
 
自己点検委は、不正調査委そのものではありませんが、それに準じた受け止め方をされていたということなのでしょう。
理研は、石井不正調査委、自己点検委、改革委と一貫して、若山氏を調査側の人間として扱うという、あり得ない対応をとりましたが、それが、論文撤回を、むしろ米国側の著者が急ぐこととなった大きな要因だったとは、初めて聞く話ではないでしょうか。
 
 手記の他の箇所では、論文撤回すると、米国側の共著者たちが職を失うというので、居力に反対していたという説明でしたから、若山氏の「第三者機関」委託による「自分の研究室にはいないマウスから作成された」という分析結果によって反論する術もなく、また、STAP幹細胞の研究の中心だった若山氏自身が誤りだとして撤回を主張する以上、その研究成果が反映されているアーティクルも含めて撤回の同意のやむなきに至ったというのが、手記をざっと読んでの印象だったかと思います。
 
 職を失ってもまだ研究者として挽回できる余地はあるのかもしれませんが、論文の投稿ができなくなるというのでは、研究者として致命的という判断が働き、むしろ米国側著者のほうから撤回を急いだということのようであり、その理由が若山氏による自己点検委の資料保有(=若山氏へのリーク)との情報だったとは、意外でした。
 
 
 手記のp227の第14章の冒頭部分に、理研上層部が、若山氏を信じて調査報告書等を渡していたこと、途中から若山氏に不信を持ち始めたことが、川合理事の口から語られる場面が出てきます。
 
第十四章 戦えなかった。戦う術もなかった
出勤再聞から数日後、川合理事から第二次調査委員会設置についての説明があった。出勤しても、意識を保っていられる時間は短くなっていて、すでに人との会話が成り立ちにくくなっていた。机に向かい合って座ったが、川合理事のお顔は震の向こうに浮かんでいるように見えた。調査についての説明がされたあと、「何か話があれば聞きます」と言ってくださった川合理事に、私は虚ろな意識の中でぽつりぽつりと話をはじめた。
研究室主宰者ですべてのマウス・細胞の管理をしていた若山先生と、いちポスドクで実験を行っていた私では持っている情報量が違いすぎるので、たとえばマウスの系統が違っていると若山先生が発表した際に、こちらの正当性を証明する手段がない。そのうえ、上司としての特権を持ち、長いキャリアに裏打ちきれた人脈にも大きな違いがあり、公平に判断されていないことを訴えた。
川合理事は真剣な面持ちで私の話を聞いたあと、理研上層部としても、若山さんが自分に有利な情報しか渡してこないことに気がついている。途中までは若山さんのことを信じていたみたいで、調査報告書などの情報が渡っていたようだつた。でもこんなやり方は正義じゃないと感じている。今回は情報が外に漏れないように細心の注意を払うし、情報量の違いを考慮します」と、ゆっくりとした口調で述べると、椅子に座る体勢を保つことも難しくなっていた私を見て、「こんなの正義じゃないよ」と語気を強めて言った。
 そして、「とにかく今のあなたに調査は無理ね」とまた落ち着いた口調で言い、川合理事は席を立ち部屋を出ていった。」p227228
 
 この米国側著者からの連絡は、裏を取ろうと思えば比較的容易に取れるでしょう。「~という話を聞いた」とありますので、米国側著者から直接聞いたのは、おそらく笹井氏なのでしょう。しかし米国側著者は限られています。
 自己点検委の問題が、こういうところにまで影響していたとは夢にも思いませんでした。この点も含めて、全体整理して別途書きたいと思います。


 
毎日新聞に報告書案をリークしたのは、ある「理研幹部」か若山研か?


 しかし、別途の話ですが、例の毎日新聞の須田記者を呼び出して、自己点検委報告書案を見せてリークした者のことですが、今まで、事務局か委員だと思っていました。しかし、上記のように、若山氏に自己点検委の資料や報告書案が理研から渡っていたとすれば、もう一つの選択肢として、若山研関係者という可能性も加わるということになるようです。
 
 手記のp182~183に自己点検委の報告書の内容の毎日新聞へのリークの話が書いてあって、個人攻撃的リークについてあまりにひどいと事務方の幹部に告げたところ、
 
「幹部の中にも秘匿情報をマスコミと山梨に流出させている人がいることは認識していて、その人の目星はついている。実はその人を呼び出して口頭では注意したけれど、効き目はなかった。本人は正義のつもりでやっているから、困ったものだね」
「山梨に行った情報はすべて毎日新聞NHKに流出するんだけど、止まらない。若山先生には理研広報からも注意を呼び掛けている」
 
 と他人事のように聞かされた、との記述が正しいとすれば、自己点検委報告書案の毎日新聞須田記者へのリークは、その「理研幹部」か「山梨」かのいずれかの可能性が高いということになりそうです。
 
 小保方氏の手記は、23度と読むたびに、新たな発見があり、なかなか中身が濃い一書です。それにしても、小保方氏は、こういう大事な話を2~3行でさらっと書き流してはダメです(苦笑)。
 不正調査等情報の被調査者へのリーク・共有と、論文撤回の決定的要因という二重の意味で重大な話のですから、もっと強調して書かなければなりません。
 
※ なお、小保方氏に撤回を急ぎたいといってきた米国側著者の著者が述べるところの、「持っていないはずの自己点検委員会の資料を所持しているようで、それが著者以外から通報されると今後ネイチャーに投稿できなくなるかもしれない」という点に関してのルールがどこかに決まっているのか、どなたかご存じであればご教示いただければ幸いです。