理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

ネイチャー論文撤回理由修正をめぐる若山教授の不可解な言動

 
 さて、先日の朝日新聞の若山氏の解析に誤りがあったらしい、という報道についてです。その後後追い記事が出るかと待っていたのですが、わずかに産経と毎日が触れるのみで、産経などは、「ネイチャーの修正理由が著者に無断で書きかえられていた」という妙な形での報道になっています。若山氏の言っていることを丸のみするだけで、ちょっと立ち止まれば疑問が出てくるところを一切触れずに、誰かが(理研を連想させる書き方ですが)、若山氏に断りなく都合よく書き変えたという構図で報じています。
 
 しかしそれは本筋の話ではなく、本筋の話は、あくまで朝日新聞が報じたように、若山氏の解析と発表内容が間違っていたらしい、という点にあります。もし、15番染色体にマーカー遺伝子が組み込まれたマウスが若山研究室にあり、それが小保方氏に渡されていたということになれば、全く構図が変わってしまう話ですし、あの若山氏の記者会見は虚偽発表だったということになりかねません。
 若山研究室でのマウスの調達と管理の仕組みはどうなっているのか? 誰がどうやってマーカー遺伝子を組み込み、その正確性をチェックしているのか? 小保方氏に渡したのは誰で、そのマウスが間違いなく18番にマーカー遺伝子が組み込まれたものだということをどう確認したのか? 等の基本的仕組みと事実関係を明らかにしない限り、若山氏の「若山研には、18番のマウスしかいなかったから、小保方から渡されたSTAP細胞から作ったSTAP幹細胞は、そうではない以上、若山研由来のものではありえない」という主張が本当に正しいのか、検証しようがありません。その点は、なぜか若山氏も詳細に説明はしていませんし、マスコミも事実関係の確認を突っ込んでしようとしません。
 
●そういう中で、やっと毎日新聞が、後追い記事を載せました。
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◎STAP論文:ネイチャーの論文撤回理由 若山氏が修正
  毎日新聞 20140711日 0620
 
 STAP細胞論文の不正問題で、責任著者の一人の若山照彦・山梨大教授が、英ネイチャー誌のウェブサイトに7月2日に掲載された論文撤回理由について、掲載直前に内容を修正していたことが分かった。若山教授の研究室に残っていたSTAP幹細胞について「若山研究室になかったマウスに由来する」との記述を削除した。若山教授は6月16日の記者会見で同様のことを述べていた。
 若山教授は毎日新聞の取材に修正を認めた上で、小保方晴子理化学研究所研究ユニットリーダーが作製したSTAP細胞が、若山教授から提供されたマウスとは異なるマウスに由来するものだったとする会見での説明の根幹部分に変更はないとした。一方で、修正内容を公表しなかったことについて「不確かな内容を発表すれば混乱を招くと判断した。詳細な事実が分かり次第、改めて報告する」としている。
 若山教授は先月の会見で、細胞を光らせる遺伝子を挿入した場所について、小保方氏に渡したマウスは18番染色体だったのに、STAP細胞として戻ってきた細胞は15番染色体だったと考えられるとの第三者機関による解析結果を公表。若山教授は「僕の研究室から提供するマウスでは絶対にできない結果」と話していた。
 若山教授によると、その後、別の研究者からの指摘で挿入場所が15番染色体とは限らないことが判明。ネイチャーに依頼し、論文撤回理由の該当箇所を修正したという。また、修正後の理由に「遺伝子を挿入した場所は、若山研究室にあったマウスやES細胞と一致する」との記述があるが、「修正時に意図せずに残ってしまった文章」としている。
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 朝日、産経、毎日の各記事と、以前書いた記事に紹介した、若山氏がサイエンスライターの片瀬久美子氏に対して説明した内容も併せ読むと、若山氏の行動には不可解なものがあります。
 
 不可解なのは、
    若山氏単独での直前での修正依頼
 撤回理由文は、全著者の合意によって決まったはずなのに、セットした内容を、若山氏単独で、ネイチャー誌に修正依頼しているらしいこと。
 通常であれば、全著者に修正箇所と修正理由を通知し、合意を得た上でネイチャー誌に依頼するはずですが、他の著者の誰も知らないままに、若山氏単独で修正依頼がなされたとのことです。
理研関係者によると、若山氏の修正メールは共著者に共有されておらず、小保方氏や理研笹井芳樹副センター長、米ハーバード大の共著者も修正は全く知らなかったという。」
    明らかにされない修正依頼内容
 「僕は15番染色体という番号の修正だけをNatureへ依頼しました。」(片瀬氏への若山氏自身の説明)とあり、ネイチャー誌で公表されたものには、「別の染色体部位」という表現になっています。
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「(5) Articleにおいて、1つのグループのSTAP幹細胞は、gfp遺伝子が18番染色体に挿入された129/SvB6の遺伝背景を持つマウス(それぞれ若山研究室で維持されていたもの)を交配させたF1ハイブリッドから作られたSTAP細胞に由来すると記載されていた。それら8株のSTAP幹細胞を解析したところ、129/SvB6の遺伝背景を持つものの、gfp遺伝子の挿入箇所が別の染色体部位であることが判明した。さらに、STAP細胞作製に使われたマウスではgfp遺伝子がホモであったのに対し、STAP幹細胞ではgfp遺伝子でヘテロであった。これらの挿入されたgfp遺伝子の部位は、若山研究室で維持されていたマウス及びES細胞のものと一致している。このように、ドナーマウスと報告されたSTAP幹細胞では遺伝背景と遺伝子挿入部位に説明のつかない齟齬がある。
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産経新聞の記事によれば、
「このマウスは、自分の研究室では一度も利用したことがないとして、小保方氏の細胞作製に疑問を投げかけた。この発表を受け、共著者は全員の合意で、論文の撤回理由書に「この場所(=15番)に遺伝子を挿入したマウスは若山研究室で維持されたことはない」と記載してネイチャー側に提出していた」(産経)
 とありますので、この部分の「15番」と特定されていた部位の表記が、「18番以外の別の部位」と差し替わったということでしょう。公表された撤回理由中の、問題の
「これらの挿入されたgfp遺伝子の部位は、若山研究室で維持されていたマウス及びES細胞のものと一致している。」
 との記述がなぜそういうことになっているのかわかりませんが、その直後の
「ドナーマウスと報告されたSTAP幹細胞では遺伝背景と遺伝子挿入部位に説明のつかない齟齬がある。」
 との記述と整合がとれませんから、単純ミスで、若山氏のいう「修正時に意図せずに残ってしまった文章」ということなのでしょう。
 
 ただ、若山氏の説明と、報道内容には少し齟齬があります。
 毎日新聞は、
「論文撤回理由について、掲載直前に内容を修正していたことが分かった。若山教授の研究室に残っていたSTAP幹細胞について「若山研究室になかったマウスに由来する」との記述を削除した。」
 というように、若山氏が記者会見でアピールした中核的メッセージに当たる部分を削除したと書いています。これは、若山氏が片瀬氏に説明した、「遺伝子挿入部位が15番だった」の「15番」を「18番以外の部位」に修正依頼しただけ、というものとはギャップがあります。
 最初に朝日新聞が報じたように、
「若山研究室の関係者は、STAP細胞は若山研究室にあったマウスに由来する可能性を認めた。」
 ということで、修正依頼時に、そういうニュアンスも出ていたということはないのでしょうか。またここでは、若山氏側の8株の話しか書かれていませんが、理研側にある6株の検証結果では、そのうちの2株は挿入部位が18番染色体であることが発表されていますから、ドナーマウスと一致しています。それらの事実もあって、上記の問題箇所が不自然な文脈ながら残ったということはないのでしょうか。
 いずれにしても、この混乱は、若山氏による掲載直前の単独での修正依頼メールによって引き起こされた混乱ですから、
「共著者の丹羽仁史理研プロジェクトリーダーは「(修正は)発表を見て気づいた。それ以上のことは何も分からない。若山氏に説明していただくしかない」とコメント。」
とあるように、その修正依頼メールの正確な内容とともに、経過と修正理由とをきちんと明らかする必要があります。
 
    解析ミスを公表しなかった不可解な理由
若山氏は、解析にミスがあり、15番遺伝子ではなかったことを公表しなかった理由として、
「不確かな内容を発表すれば混乱を招くと判断した。」
毎日新聞に語っていますが、それは理由にもならないでしょう。あれだけ大々的に記者会見し、「STAP細胞は、若山研由来のマウスによるものではない」として、小保方氏がポケットに入れて持ち込んだ可能性まで示唆したのですから、その根拠となる部分に間違いがあったら公表し、説明するのが当然の筋のはずです。その上で、「若山研由来ではないという根幹部分は揺るがない」と主張するのであれば、その理由も明確にする必要があります。また、この解析結果をもとにして、論文撤回理由を全著者合意によりセットしたわけですから、その根拠に間違いがあるのであれば、改めて全著者に説明した上で、修正理由も再セットすることが求められていたはずです。
「不確かな内容」と言いますが、ネイチャー誌に修正依頼を送っている以上、「15番ではなかった」ということは確かであり、記者会見内容に間違いがあったことは「確か」なのですから、説明をしてもらわなくてはいけません。それを求めないマスコミもどうかしています。
 
あれだけ中立的イメージを出そうとして、「第三者機関」に依頼した、中立性を担保するために無報酬でやってもらった、と述べていましたが、その実は、放医研に属する研究者個人への依頼であったことが、放医研の広報によって明確に示されています。そうなると、その実態は、
「知り合いに依頼した」
ということであり、「公正中立な第三者機関に依頼した」という言葉から連想されるものとは大きく乖離しています。この点でまず、若山氏の発表の前提には大きな問題がありました(理研まで、この個人を「第三者機関」と表現しているのはお粗末ですが)。そして、今に至るも、その研究者の名前は公表されていません。
そしてその上、その解析が間違っていたということですから、あの記者会見はいったい何だったのだ?ということになります。
 
15番とは限らない」と指摘した別の研究者とは誰なのかということもありますが、
「マーカー遺伝子の解析結果が15番染色体ではなかったならば、何番だったのか? マーカーの種類が複数だというならそれは何なのか? なぜ、マーカーが複数あるということがわからなかったのか?」
 といった重要な点について、早急に再度記者会見して説明する必要があると思います。
 
●そして、このような手元にある細胞の分析さえ、ろくに正確にできないのであれば、なおのこと、
「若山研究室にいたのは、本当に18番染色体のマウスだけか?」
「小保方氏に渡されたものが、本当に18番染色体マウスなのか?」
 という根幹部分も怪しくなってきます。
「若山研由来ではないという根幹部分は揺るがない」と言われても、研究室でのマウス調達の仕組み、保管状況、マーカーが正確かどうかのチェックの仕組み等について何も説明されていない中で、アプリオリに、「若山研にいたのは18番染色体マウスのみだ」と言われても鵜呑みにはできない気がします。
 ES細胞を、若山氏のあずかり知らぬところで、研究室の学生が小保方氏に渡していたとうのも、管理が杜撰な印象を与えます。
 
 だいたい、理研のマウス提供が、注文と大量に間違っていて、研究に大きな支障をきたしているという報道があったばかりです。
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理研、誤ったマウスを提供 41機関、研究に支障も
 朝日新聞 20146220530
「 理化学研究所が国内外の研究機関の注文に応じて実験用マウスを提供している事業で、誤ったマウスが繰り返し提供されていたことがわかった。41機関に注文とは異なる計178匹の遺伝子組み換えマウスが提供され、なかには実験データが使えず、研究に支障が出たケースもあった。
 正しい遺伝子組み換えマウスの提供は、iPS細胞などの再生医療研究を支える基盤となっており、ミスは研究の信頼性を損なう事態につながりかねない。
 誤ったマウスを提供していたのは、理化学研究所バイオリソースセンター(茨城県つくば市)。約6900種類の組み換えマウスを管理・販売する国内最大の実験用マウス提供機関だ。センターは多様な組み換えマウスを開発者から預かって管理。研究機関はセンターが管理するマウスのカタログから実験に適したマウスを選び、繁殖用の種マウスとして数匹購入し、繁殖させて実験に用いる。」
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 研究機関や研究者は、理研のバイオリソースセンターのカタログをみて、発注する仕組みだとのことですが、今回のSTAP細胞実験のドナーマウスは、どこから調達したのでしょうか? 毎日新聞が会計文書を入手してマウスの購入時期と実験時期とのずれについて報じていたところから想像すると、外部からのようですが、それはこの理研のセンターではないのでしょうか? 「18番染色体にマーカー遺伝子を挿入したマウス」の調達の仕組みがよくわかりませんが、上記のような誤納入が頻発していることからすると、それが確実に納入されたのか、という点は、きっちりと検証される必要があると思います。