理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

「コピペの小保方」の先入観を覆すバカンティ研留学時の手記の記述


 小保方氏の手記を評して、情緒的で自己陶酔のような文章だとか、自慢ばかり書いて辟易するとかの類いのものも少なくありませんが、そういう浅薄な感想に留まるようでは、本手記の価値が分からないでしょう。
小保方氏の手記により同氏の主張が示された現在、STAP細胞問題に対する言及内容は、その評論家、コメンテーターのレベルを測るバロメーターにもなりつつあります。一般の人であればともかく、マスコミや科学者が、この手記によっても全体構図を理解しようとせずに、従来の台詞から一歩も出ない発言を続けるようでは、特定の意図を持っての発言と考えざるをえません。
 
 この手記は、いろいろな主張、反駁、メッセージを発していますが、知らない人にとっては自慢話にしか見えない部分でも、これまでの小保方氏へ先入観(誤解、思い込み)を覆している箇所も少なくありません。
 その先入観の一つに、「コピペの小保方」というものがあるでしょう。学位論文という大事なものの序論で、大量に米国の政府機関のHPから切り貼りをしたとして非難し、「序論というのは、それまでの科学界の研究の蓄積を理解していることを示すものであり、その上に立って、自らの研究の意義を述べる重要なパートである。そのほとんどをコピペで済ませるなどあり得ない。こういうことをやる奴の論文など信用できるか!」「盗用だ、捏造だ!」という具合に言う人々です。
 これよって、「小保方氏には学識などろくにない」「研究自体も捏造だ」と発展し、小保方氏を罵倒したわけです。
 
 しかし、そういう程度の研究者であれば、あの手記に書かれたような考察や実験ができるだろうか? というのが、先入観を持たない人間の素直な印象でしょう。
 次に示す「第三章 スフェア細胞」からの抜粋を読むと、「これまでの研究の蓄積を理解できず、コピペで済ませる学識のなさ」という先入観とは両立し得ないでしょう。
 
 以下に書かれていることは、
 
 ①留学3か月目にバカンティ教授から宿題を出されたこと。
 ②バカンティ教授の宿題の趣旨、意図を直ちに理解したこと。
 ③それに関連する文献を「1日に20報以上」(!)読み込み、先人達の知見
  の蓄積、発展の流れを理解したこと。
 ④そこから、更に着想を得、自らの仮説を立て、実験に取り組んだこと。
 ⑤そして、バカンティ研究室での研究で得られている現象を分析し、今後
  の検証の方向性を示したこと。
 ⑥それによって、バカンティ教授から激賞され、同教授の学費負担による
  留学延長が決まったこと。
 ⑦以降、バカンティ研総出で、小保方氏の仮説に基づく研究、実験が行わ
  れるようになったこと。
 ⑧この間、宿題が出されてから、わずか2週間(!)だったこと。
 
 ここに示されていることは、事実でしょう。ここで嘘を書いても、裏を取れば一発でばれますし、何より、バカンティ教授が小保方氏への高い信頼と評価を示していたことからも、事実だったのだろうと推測できます。
 ここには、「学識などないコピペの小保方」の先入観と相容れるものは全くありません。
 
 以下、抜粋します(p43~)。
 
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「ヒツジの鼻腔粘膜上皮細胞培養の実験が一段落したのは、ボストンに来てからすでに3ヵ月以上がたった頃だった。ある日の研究ディスカッションの終わりに、バカンティ先生から“Haruko! Homework!!”と言われ、2つの宿題が出された。1つ目は、C‐Kit陽性細胞の性質について調べること。2つ目は間葉系幹細胞について調べることだった。ともに次回の研究ディスカッションの時に発表するように指示された。
C‐Kitとは細胞の細胞膜表面に現れるタンパク質の一種で、C‐Kitが細胞に発現していると「C‐Kit陽性」、逆に発現していないと「C‐Kit陰性」と表現される。興味深いことに、血液に含まれる多種の血球を作る造血幹細胞や、骨、軟骨、脂肪を作る間葉系幹細胞もC‐Kit陽性であることが知られていて、その他の心筋や肺にもC‐Kit陽性細胞が存在し幹細胞として機能しているという研究成果が報告されていた。そのため、C‐Kitが多種の成体幹細胞に共通して発現していることは認知されつつあり、C‐Kitがすべての成体幹細胞の共通のマーカータンパク質なのではないかと提唱する論文も発表されていた。もう一つの宿題の間葉系幹細胞は、もともと骨髄の中から発見された幹細胞で、骨、軟骨、脂肪などさまざまな細胞に分化できることが知られている。近年では骨髄以外のさまざまな間葉系組織からでも採取できることが報告されており、幹細胞生物学の中でも古くから活発に研究がされてきた幹細胞である。
 
バカンティ先生は「C‐Kit陽性細胞は隣の研究室のピエロ・アンバーサ先生が詳しく研究しているし、間葉系幹細胞の発見者であるアーノルド・カプラン先生と最近友達になったから詳しく知りたい」と無邪気な笑顔で言われたが、これまで話を聞いていて、この宿題はバカンティ先生が提唱しているスポァライクステムセルの概念と、これらの幹細胞との関連性を知りたいとの意図だと察した。そしてもちろん、私の能力を測るための宿題でもある。「これまで指導した中でもベスト3に入る学生」と私を評し、バカンティ先生にメールを送ってくれて第いた大和先生の顔が頭に浮かび、「日本の先生たちに恥をかかすわけにはいかない」と思った。この宿題に全力を尽くす以外の選択肢はなかった。
とにかく論文を読んだ。2008年から幹細胞生物学の歴史を遡っていくと、100年近く前の、幹細胞の概念が確立されていなかった頃の発生学の論文にまでたどり着いた。まだ近代的な解析技術が確立されていない時代の「現象の観察」のゑから書かれた論文は、研究者の自由な発想がそのまま記述されていて、その洞察の深さに強く感化された。観察された現象の不思議さと自然の法則とのつながりを広い視野でとらえた数多くの論文に触れることができ、古い文献を読象込むうちに、凝り固まっていた自分の思考が解放されていくのを感じた。自分なら同じ現象を観察してどんな意見を持つだろうかと空想し、まるで初めて宇宙を見たような、そんな感覚に包まれていた。解析技術の発展とともに多くの生命現象が細かく正確に理解されるようになっていく過程を感じ取るのも興味深かった。
2008年までの間、どんな考えが発表され、学術界で流行の潮流を作っていったのか、その間どのような学説が間引かれていったのか、一日に20報以上の論文を読み、新しい知識を入れ、自分なりの考えをまとめる作業は楽しく、時間を忘れるほどだった。なにより、科学の根本にある自然の法則にもとづく研究者の発想の自由さ深遠さに触れることができたことは貴重な体験だった。
自分なりの学説を述べるためには、その考えを補佐する実験データも提示したい。スフェアの培養法は浮遊培養と呼ばれ、培養されている細胞は培養皿の底面に接着していない。浮遊と名前がついているが、実際には重力が働いているので、培地で満たされた培養皿の表面に球形の細胞塊がコロコロと転がっているように見える。初めてスフェァを見た時は、なぜだかこうしていないと(球形にならないと)生きられないのよ、と細胞が訴えているような、生体内で起こる現象とは異質なもののように思えた。直径が50マイクロメートルほどのものもあれば、150マイクロメートルを超えるものもあり、球形の細胞塊の表面も滑らかに見えるものから、ぽこぽことした表面の細胞塊までさまざまだった。このように骨髄細胞からできたスフェァは一つひとつ大きさや形状が異なっていたので、それぞれが異なる性質を持つ可能性が考えられた。たとえスポアライクステムセル由来のスフェアがあったとしても、どれが正解かわからなかつた。そこで、スフェアを1個ずつ、それぞれの遣伝子の発現を調べることにした。
    (中略)
数日間、1個のスフェァから正確なRT‐PCRの結果を得るための試行錯誤を繰り返した。(中略)
当たりが出るかどうか保証がまるでない実験だったにもかかわらず、不思議と実験する手が止まらなかった。数多くのスフェァを解析し、最初にスフェァからOCt4の遺伝子発現を確認したのは夜中の2時をまわった頃だった。心臓が高鳴った。しかし、それは予想通りの結果が出たことへの喜びではなく、細胞のふるまいの自由さに魅了されてのことだったように思う。丁寧に写真を撮り、ゲルは普段ならすぐに捨ててしまうのに、今回は捨てられず、ラップに包承冷蔵庫にしまった。
  (中略)
次の日からは興奮する気持ちを抑えながら腰を据えてRT‐PCRに取り組んだ。ときどき現れるOCt4陽性を示すバンドを見るたび、いろいろなことを思い浮かべた。この現象はなんだろう。どんな生物学的意義があるのだろう。どうしたら論文にまとめられるだろう。このスフェァ細胞が、これまで報告がある成体幹細胞よりも幼弱であるなら、これまで報告がある幹細胞の分化能を凌駕しているはずだ。代表的な成体幹細胞である間葉系幹細胞と神経幹細胞が分化可能な細胞のすべてに分化できる能力を、このスフェア細胞から示すことができれば、代表的な成体幹細胞より幼弱であることを示すことができるのではないかと考えた。
宿題を発表する日がやってきた。英語のプレゼンテーションを作成し、発表直前までセレナとヴァネッサが英語の添削と、重要な専門用語の発音の指導をしてくれた。文献からまとめたこれまでの幹細胞生物学研究の歴史から始まり、C‐Kit陽性細胞研究と間葉系幹細胞研究の概要をまとめ、最後には現在研究室で観察されているスフェアがスポアライクステムセルに由来している可能性に触れた。その上でスポァライクステムセルが全身に共通する成体幹細胞であるという概念を提唱するためには、「スポァライクステムセルはさまざまな組織から採取可能であり、かつ各組織に特異的な細胞になる前の幼弱な性質を保持しているのではないか」また「スポァライクステムセルは現在存在が確認されている成体幹細胞の分化能を凌駕する分化能を有しているのではないか」ということを示していく必要がある、と自分なりの考えを発表した。
発表を終えると、バカンティ先生は目をつむりながら両手で固くこぶしを作った後、目を見開き、「過去15年間で最高のプレゼンテーションだった」と満面の笑顔で大げさに褒めてくださった。私が早稲田大学から提示されていた半年の留学期間は終わろうとしていることを告げると、バカンティ先生は「留学期間を延長できるように早稲田の先生たちにレターを出す」と言ってくださり、最後に「これから先の留学にかかる生活費、渡航費は僕が援助する」と皆の前で宣言し、私に向けてニコリと、がんばれという合図のような笑顔を向けた。
 (中略)
その後、研究室のメンバー総出での、私が発表したプレゼンテーションの内容に沿ったスフェア研究のための実験が始まった。「スポァライクステムセルはさまざまな組織から採取可能であり、かつ各組織に特異的な細胞になる前の幼弱な性質を保持しているのではないか」という仮説を示すため、研究室のメンバーで分担して、骨髄の他にも脊椎(外胚葉由来)、筋肉(中胚葉由来)、肺(内胚葉由来)の組織からスフェァを作製し、個々のスフェァの遺伝子発現を解析した。(以下略)」
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 先入観があった人でも、そのイメージを一掃する記述だと思います。これを読んで、「自分が優秀だというのをひけらかして、自慢ばかりしやがる」「辟易する。吐き気がする」といった感想がしか出ないとすれば、それはあまりに低次元というものでしょう。
 
この早稲田の博士論文の件は、さんざん書きましたが、


①序論の部分のコピペは、草稿段階のもの=形の上で博士論文として審査会を通り、製本して国会図書館に納本されたもの、では、参考文献掲載はされていないが、公聴会審査を経て本来提出する予定だったものには、参考文献として書かれていること。
②米国の政府機関のサイトの解説は、米国では著作権の対象となっていないパブリックドメインであり、それをそのまま使用することは、米国法上は問題にならないこと。
③博士論文提出時期は、笹井氏による大幅な論文構成の書き換えなど、ネイチャー論文提出に向けた詰めの時期で多忙を極めていたこと(特許出願関連作業もあった?)
④母親の看病しながら、論文の仕上げをしていたこと。
⑤母論文であるTissue誌では、問題なく受理されており、訂正された部分もハーバード研究室でのミスであることが明らかになっていること。
 
 という状況であり、このコピペや草稿との取り違えを以て、小保方氏を、盗用、捏造をやりかねない研究者だとことさらに印象付けようとするのは、適当ではありません。
 大隅分子生物学会元理事長のように、博士課程での研究生活の集大成であり、博士号を得るための博士論文をそんないい加減に扱うなど言語道断、とばかりにバッシングするのは、(それは建前上反論できない正論ですが)、発表早々に理研に警告してきたことと、同根の動機があるように感じられます。