理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問

小保方論文の「改竄」「捏造」認定の不合理さ、バッシングの理不尽さ

小保方氏の実験ノートと電子メールの公開というNHK及びリーク者の著作権侵害行為


 ところで、今回の小保方氏側からの申立ての中で、実験ノートの公開を著作権侵害だとしている点は、目を惹いたかと思います。


 実験ノートの無断公開の実質は、上記(2)で述べたような、小保方氏や理研の知的財産、営業秘密の侵害だということだと思います。ただ、このハーバード、理研との共同研究契約の中での、小保方氏の実験ノートの帰属がどうなっているのかがよくわかりません。
以前から書いているように、桂調査委員会が調査を始めるにあたって、各種試料の帰属の仕分けがなされています。その中で、共同研究下の実験ノートについては、マウスのホルマリン漬け等とともに、ハーバード側に帰属していると捉えています。小保方氏が記者会見で、「知財と関係してくるため、自分だけの判断では公開できないことを理解してほしい」と述べていたことも、それを裏付けるものだと思っています。
 
 一般に、実験ノートの性格はどういうもので、一義的には誰のものなのか? ということが、私にはよくわかりませんが、なにか一般的相場というのはあるのでしょうか?
 研究発表する場合には、研究者個人の名前で発表するわけですから、その元となる実験ノートの所有権も著作権も、その研究者に帰属するものと思います。他方、特許出願を考えた場合には、まずは発明者個人が研究をし、実験ノートをつけて、その上で、特許を受ける権利の主体となり、それを所属組織に承継し・・・というのが従来の流れでした。そうすると、所属組織に帰属するのは、あくまで「特許を受ける権利」であって、特許出願上も発明者はその研究者名が書かれるわけですから、実験ノートも研究者の所有権、著作権がともにあるのではないか、と想像しています。ただ、委託研究契約、共同研究契約等で、特段の取り決めがある場合には、それらの所有権、著作権とも、委託元や資金負担する研究組織等に移転することがあり得る・・・ということでは?と思っているのですが、実際のところどうなのでしょう・・・。
 
 今回、実験ノートの著作権自体は小保方氏にあるということが明確となりました。その所有権や開示する権利については、理研ハーバード大との契約上の制約があるのかもしれませんが、それを侵害する第三者に対しては権利保護のための行使は当然できるのだろうと思います。
 BPOへの申告は、あくまで個人の人権侵害についてですから、コピーされて頒布、公表されたことに対して著作権侵害を訴えるというのは、有効なカウンター措置だと思います。
これは強力な武器になり得るでしょう。


 著作権侵害の場合には2つあって、ひとつは複製権の侵害、もうひとつは著作人格権としての公表権の侵害です。実験ノートをリーク元がコピーしてNHKに渡した、それが更にコピーされて分子生物学会の研究者たちに渡ったということですから、まず、リーク元とNHKについて複製権の侵害ということになるでしょう。そして実験ノートの一部を放映したことは、公衆送信権の侵害ということになります。
 それから、当然、未公表の研究成果もあるわけですし、公表するしないを自ら決定できる権利が「公表権」ですから、著作権者の意向を無視して、NHKが公表したことはこの公表権の侵害になります。
 以上の通り、NHKとリーク者は、文句なくアウトになるでしょう。
 
●ところで、この著作権侵害の件は、申立てでは実験ノートが対象になっているようですが、当然のことながら、小保方氏のメールの複製、公表についても、同様に侵害を訴えることができるでしょう。
 実験ノートの場合と同様に、公表権という人格権の侵害と、複製権、公衆送信権、口述権、実演権(読み上げて流すのは「口述権」「実演権」の侵害です)といった経済的な著作権の侵害になりますが、今回の場合は、もう一つ加わるのではないかと思います。
 著作権法113条第6項には、次のように規定されています。
 
(侵害とみなす行為)
第百十三条
 著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為は、その著作者人格権を侵害する行為とみなす。
 
これは、「侵害」とは別に、「侵害とみなす行為」として規定されているものですが、NHKが、あのナレーションで流した態様は、小保方氏と笹井氏の「名誉と声望を害する方法」であることは明らかです。
 
このように、著作権を有するということは、強力な防衛手段になりますので、それをフル活用して、NHKとリーク者の責任が追及されることを期待したいと思います。


【補足】2015.8.23
 実験ノートの著作権に関して、誤解のある議論があるように感じますので、一言記しておきたいと思います。
同じ知的財産権であっても、特許、営業秘密の観点と、著作権の観点とでは、評価が異なってきます。特許出願の元となる研究成果、営業秘密では、保護されるためには、非公開性、新規性・有用性が必要となるのに対して、著作権の場合には、それらの要件は不要です。
ですから、既に公開されているかとか、明細書に同じことが書かれているかとか、有用性・新規性があるかなどには関わりなく、未公表であれば公表の可否を、そして、公表、未公表に関わらず、複製頒布、ネット送信等の可否を、自ら決定できる権利が著作権です。


したがって、「中身はもう明細書に書いてある」「役立つものではない」「研究成果として意味がない」「趣旨不明だ」「他人が再現できるように書いていない」等の理由によって、著作物である実験ノートを他人が勝手に公開、頒布していいといことにはならないという点は、議論の上で理解される必要があると思います。この点に関する混同が一部であるように感じます。
なお、著作権保有していたとしても、所属先や資金負担先等との契約上の関係で、その行使について制約が生じることはあり得ると思いますが、それは上記の議論とは別問題です。
また、実験ノートの所有権と著作権の峻別をする必要があることは、言うまでもありません(本を買って持っているという所有権と、その中身の作品の著作権は次元が異なるということは、すぐ理解されると思います)。


実験ノートがそもそも著作権法でいう著作物なのか?という方もいるようです。著作物の定義は、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と規定されていますが、そこからは分かりにくということでしょう。しかし、コンピュータプログラムや回路図なども含めて著作物として捉えられていますから、実験ノートはもちろん著作物として著作権があります。